フィリピン政府と国連、人権擁護の促進目指す共同プログラムをスタート

【写真】協定の調印式に出席したグスタボ・ゴンザレス国連フィリピン常駐調整官、メナルド・ゲバラ司法長官、テオドロ・L・ロックシン・ジュニア外務長官(左から)=2021年7月22日、マニラ首都圏パサイ市の外務省/フィリピン外務省のホームページから

【26日=東京】フィリピン政府と国連が22日、人権擁護に関する国連人権共同プログラムの協定を締結した。フィリピンの人権問題に国際機関が関与するプログラムが動き出した。

 現地の報道によると、テオドロ・ロクシン・ジュニア外務大臣、メナルド・ゲバラ法務大臣、グスタボ・ゴンザレス国連フィリピン常駐調整官が外務省で調印した。

 共同プログラムは人権擁護に向けた継続的な履行義務を支援することを目的とするもので、国連人権理事会が2020年10月に「違法薬物撲滅戦争(ドラッグ・ウォー)」のもとで多数の殺害事件が起きているフィリピンの人権保護・促進をめざす決議を受けてのもの。フィリピンとアイスランドが共同で提案し、採択された。期間は2024年まで。

 協定にはそのための戦略や目標、指標、ガバナンスのメカニズムの概要が示されたという。この共同プログラムは、政府による「テロ対策」への人権への配慮、人権侵害に関する調査の実施と適切な行政・刑事上の告発の強化、違法薬物の使用者に対する治療やケアサービスの提供、人権問題に対処するため手続きの確立などが進められる。

 ゲバラ法務大臣は現地のメディアに「歴史的な出来事であり、フィリピンでは初の試みだ。フィリピン政府がこの共同プログラムに誠実に偽りのなく関与ることで、法の執行や捜査に人権という側面を取り入れることができる」との談話を外務省のホームページに出した。

〈解説〉そもそも国連決議への評価とは?

 この国連人権共同プログラム共同プログラムのもとになった2020年10月の国連人権理事会決議は日本政府も共同提案国になった。外務省はSACに対してこの決議を「支援していく」と回答している。

 しかし、この決議については人権擁護団体からは批判が出ている。

 人権監視NGOカラパタン法律顧問のマリア・ソル・タウレ弁護士は「決議にもかかわらず、今日に至るまで人権アクティビストたちへの攻撃は止むことはない。現実にはその攻撃はさらにおぞましく大胆なものとなっています。各国がフィリピンの人権状況の悪化を非難し、攻撃の基本的な資金源となっている軍事支援を停止しなれば、この国連決議へのいかなる形の賛同も偽善としか思えない」と批判する。

 また、日本が決議の支援を表明したことについて、全国砂糖労働者同盟代表のジョン・ミルトン氏は「外務省の回答は『二枚舌』だ。なぜなら、日本政府は超法規的殺害を実行するドゥテルテ政権を支援しているからだ。外務省はフィリピンで起こっている事態の何が問題なのかをよく知っているはずだ。病であることを知っていながら、効き目もなく、かえって病を悪化させる薬を投薬している」としている。

〈Source〉
Philippines, United Nations Officially Launch the Joint Program on Human Rights, Department of Foreign Affaires, July 23, 2021.
PH, UN launch joint human rights program, The Manila Times, July 25, 2021.
PH, UN forge pact on human rights protection, ManiLa Bulletin, July 24, 2021.
【お知らせ】外務省回答、超法規的殺害に「懸念」の認識示す, SAC, 2021年4月12日.

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