「麻薬撲滅」掲げた超法規的殺害 国家警察が記録の一部を開示

【写真】超法規的殺害の対象になった人権アクティビストや弁護士らの名前と写真を墓標にみたててた抗議活動/via Facebook of Karapatan

【27日=東京】フィリピン国家警察は27日までに、いわゆる「違法薬物撲滅戦争」の捜査の過程で警察官が容疑者を殺害したケースのうち、法的な捜査手順に違反した疑いのある61件の調査記録を司法省に開示した。ドゥテルテ政権が発足した2016年以降、7884人が法的な手続きを経ない超法規的殺害の対象になっている。司法省は開示を「画期的」と称賛するが、開示された記録は全体の1%にも満たないため、人権擁護団体などからは「見せかけの対応」との批判が出ている。

─ 内部調査の61件

 独立メディア・ラプラーは、関係者の話として、この61件の内部調査は、国家警察の内部監査室が行い、明確な責任が立証されたケースだという。内部監査室の調査にとどまっており、 司法省の国家検察局から刑事訴追されることはない。国連人権理事会は、抵抗したから射殺したとされる事件5655件について検討し、「半分以上が捜査手順書に従っていなかった」という報告書を提出した。今回の61件はこの国連人権理事会の報告書から約3ヶ月後のことだった。

─「実効性を担保できるか疑わしい」

 民衆のための法律家協会は26日に「国家警察が麻薬戦争キャンペーンに根本的な誤りがあるとの認識を出発点にしなければ、国家警察の権力の濫用に対するアカウンタビリティを確実にする強力な実効性を担保できるか疑わしい」との声明を出した。その上で、すべての記録の開示を求めた。

〈解説〉傍観は超法規的殺害の「沈黙の承認」

 超法規的殺害の対象になった7884人という数字は国軍や国家警察が「私たちが殺害しました」と自ら認め、公表した数字だ。国内外の人権団体によれば3万人近くが殺害されている。いわゆる「違法薬物撲滅戦争」と言われる捜査過程での数字である。

 しかし超法規殺害はそれだけではない。農民や人権アクティビスト、ジャーナリスト、弁護士らもターゲットになっている。いずれも政権に異を唱える人たちだ。もちろん国軍や国家警察が「私たちが殺害しました」などと認めるわけはないが、殺害前に政府当局から「アカ(共産主義者)」のレッテル貼りをされた人たちが多いことからも、政府当局の意向を受けた者たちによる殺害であると人権擁護団体は考えている。その数は、人権NGOカラパタンの調べでは、ドゥテルテ政権発足以降だけで376人にのぼる(2020年12月末現在)。

 こうした超法規的殺害は何もドゥテルテ政権になって突然始まったことではない。エスカレートする超法規的殺害に対して、国連人権理事会などの国際機関やカナダ下院からも批判や憂慮の声が上がる。今回の61件の司法省への開示も国連人権理事会の動静に敏感に反応したためだろう。「外からの目」「外からの声」が超法規的殺害の抑止に資するはずだ。

 フィリピンと関係の深い日本からの発信は強いメッセージ性を帯びるに違いない。傍観は超法規的殺害の「沈黙の承認」に他ならない。

〈Source〉
Fact check: Reported increase in ‘drug war’ deaths amid pandemic is backed by gov’t data, Philstar, September 22, 2020.
Of 7,000 killed by cops in drug war, PNP opens to DOJ records of 61, May 24, 2021,
Rappler.Press Statement, National Union of Peoples’ Lawyers, May 26, 2021.

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