人権議連が人権侵害の実態をヒアリング 「外交姿勢、検証したい」

【写真】人権外交」を推進する議員連盟がフィリピンで発生する人権侵害の実態を人権アクティビストらからヒアリング=2021年6月2日、東京・永田町の衆議院第一議員会館

【2日=東京】「人権外交」を推進する議員連盟(会長=中川正春衆議院議員)は2日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で「議員との対話(ダイアローグ) ──フィリピン『3万人』殺害の衝撃と『1兆円』の投融資(ジャパン・マネー) 外交に人権を!」と題した議連勉強会を開き、フィリピンで発生する人権侵害の実態を人権アクティビストらからヒアリングした。

 衆参両院の議員16人が参加。国際人権監視NGOストップ・ザ・アタックス・キャンペーン(SAC)が協力した。

─ 殺害対象リストが作成

 フィリピンの人権擁護NGOカラパタン・ネグロス支部代表のクラリッサ・シングソン氏はオンラインで参加し、人権アクティビストをターゲットにした超法規的殺害がネグロスだけではなく、フィリピン全土で発生していることを指摘した。特にネグロスでは2018年からサトウキビ農園で働く農民や労組幹部を狙った殺害が多発しており、国軍と国家警察との合同部隊が家宅捜査を名目にした殺害が実行されていると批判した。ドゥテルテ政権の「殺して、殺し尽くす(Kill, Kill, Kill)」という方針のもと、殺害対象リストが作成され、シングソン氏自身も殺害予告を受けているという。

 シングソン氏は「政府に批判的な勢力を黙らせるという政策だ。国際的な連帯、みなさんの支援がよりいっそう求められる」と訴えた。

─ 義理の弟が殺害

 また、在日フィリピン人女性の人権擁護に取り組むNGOカフィン代表で、フィリピン英雄賞(アジア太平洋地域)の受賞者でもあるアガリン・長瀬氏は来場し、昨年、義理の弟が殺害された体験を訴えた。義弟はミンダナオ島南部の沿岸地域、サランガニ州アラベル町カワス村の村長を務めていた。国家警察の違法薬物捜査のあと、バイクで自宅に向かう途中、何者かに銃撃を受け、殺害されたという。義弟が殺されたのは、彼が国家警察の供述書への署名を拒否したあとだった。供述書には、違法薬物捜査の中で殺された村人が覚せい剤と銃を持っていた、抵抗したから撃ったと書かれていた。しかし、それは嘘だということを義弟は知っていたので、供述調書に署名することを断ったという。そして、義弟は殺された。

 長瀬氏は参加した国会議員に、「違法薬物撲滅戦争」の名の下で横行する人権侵害についての懸念をフィリピン政府に対して表明することなどを求めた。

─「農村における弾圧は止まることなく続いている」

 参加した議員との対話では、全国砂糖労働者同盟のジョン・ミルトン・ロサンデ氏も発言。ドゥテルテ政権になり、サトウキビ農園で働く小作農や労組幹部への人権をめぐる状況が悪化していることを説明した。全国砂糖労働者同盟では、ネグロス地域で16人のリーダーたちが殺害されたという。ロサンデ氏は「農村における弾圧は止まることなく続いている。仲間が殺され、逮捕されている状況を止めるためにも、日本の国会議員のみなさんの支援を訴えたい」と語った。

─ 国会での取り扱いを拍手で確認

 司会を務めた衆院外務委員会の筆頭理事、阿久津幸彦衆議院議員は「私たちはミャンマーの人権問題を取り扱っている。フィリピンのことはミャンマーの問題と重なることが多い。しかし、フィリピンの状況はあまり知られていない。参加いただいた国会議員と秘書におかれましては、フィリピンの人権侵害も現在進行形で起こっていることを一緒に取り扱っていかなければいけない。そのことを、今日ここで共有させていただきたい」と話し、拍手で確認した。

 終了後、中川会長は取材に対して「今日の会合をきっかけに日本の外交姿勢について検証していきたい」と語った。

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