【お知らせ】外務省回答、超法規的殺害に「懸念」の認識示す

【写真】ネグロス島のサトウキビ農園で働く人たち=2020年2月

▶︎外務省の回答の主なポイント
▶︎Stop the Attacks Campaign の声明
▶︎現地からの声:マリア・ソル・タウレ氏(弁護士、人権NGOカラパタン法律顧問)/ジョン・ミルトン氏(全国砂糖労働者同盟代表)/クラリッサ・シングソン氏(人権NGOカラパタン・ネグロス支部代表)

― これまでの経緯

 私たちが超法規的殺害の停止をフィリピン政府に要請するよう求めた、茂木敏充外相あての緊急申入書に対し、外務省は電話で回答しました。

 回答は9日。外務省南東アジア第二課の担当者は「フィリピンの関係国が抱いている懸念に対してなされた決議(2020年10月第45回国連人権理事会決議=人権の促進・保護のための技術協力と能力開発決議 Technical cooperation and capacity-building for the promotion and protection of human rights in the Philippines) (*1)を日本も支援していく」と述べました。支援の中身には言及せず。

 外務省はこの間、ドゥテルテ政権下で加速するフィリピンの超法規的殺害について「フィリピン政府に説明責任を求めている」などと述べ、超法規的殺害についての評価や認識を明確にしてきませんでした。

 しかし今回、外務省は、「懸念に対してなされた決議」を「日本も支援」という言葉を使用し、フィリピンの人権侵害に対して「懸念」の認識を明らかにしました。  一方で、日本政府は防衛装備移転を後押ししたり(*2)、超法規的殺害を実行するフィリピン国軍や国家警察といった治安部門に支援をしたりしてきています。

 外務省の担当者は回答で、治安部隊への支援の中止を明言しませんでした。

 私たちは、外務省の回答を「言行不一致」であると言わざるを得ません。

 そもそも、その第45回国連人権理事会決議自体に対して、フィリピンの人権団体からは「真綿で首を締めるようなものだ」との批判が上がっています(*3)。決議が、圧倒的な軍事力で市民を殺害しているフィリピン政府自身に、その殺害の調査や加害者訴追機能を向上させるよう期待しているからです。

 今回の日本政府の回答に対して、現地の弁護士や人権団体のリーダーからは「二枚舌外交だ」「偽善だ」との非難が出ています。

 フィリピン政府や国軍、国家警察が、異論者封じ込めのために、現政権に批判的労働組合や農民組織などの団体を不当逮捕、殺害したりしていることは明らかです。さらに、それらをテロリストであると公言し、自らの罪や責任を不問に付してきました。超法規的殺害に沈黙を続け、また、その政府や治安部隊を経済的・人的に援助する日本政府の対応は、市民の弾圧や超法規的殺害に加担していることと同義だと言えるでしょう。

 日本政府によるフィリピン国軍や国家警察への防衛装備・技術移転は、防衛装備移転三原則に反する以上、即刻中止すべきです。また、ODAについても、その目的である「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値の共有や平和で安定し、安全な社会の実現」に資するものになり得ない以上、同様に、中止すべきです。

 私たち Stop the Attacks Campaignは、民主的な政治、一人ひとりの人権や尊厳が守られる社会を目指して闘うフィリピンの人びととともに、これからも、同国内における人権侵害について発信し、日本政府に対しても働きかけを続けます。

― 外務省の回答の主なポイント(2021年4月9日午後6時30分、電話で回答)

・第41回国連人権理事会などにおいて、フィリピンにおける違法薬物対策について同国のアカウンタビリティが確保されることを期待すると言及した。

・第45回国連人権理事会において、日本政府は、フィリピンの人権状況への懸念に対して出された「フィリピンにおける人権の促進・保護のための技術協力と能力開発」決議案の共同提案国となった。フィリピン政府は、第48回国連人権理事会において進捗状況を口頭で報告、第51回人権理事会では報告書を提出することになっている。

・日本政府は、同決議に従いフィリピン政府が人権侵害に対してアカウンタビリティを発揮していくよう支援していく。支援の内容には言及せず。

・日本政府はフィリピンの人権状況に対する懸念をもちながら、なぜ開発援助と防衛装備品移転を継続しているのかとのStop the Attacks Campaignの質問に対して、外務省担当者は沈黙だった。

・フィリピン国軍や国家警察による殺害事件が発生していると把握しているにもかかわらず、いまでも開発協力が民主主義や基本的人権の尊重に寄与していると考えているのかとのStop the Attacks Campaign の質問には、「日本はそれに対してコメントする立場にない」と回答した。

― Stop the Attacks Campaign の声明

 外務省は回答で、第45回国連人権理事会にてフィリピンとアイスランドが出した「フィリピンにおける人権の促進・保護のための技術協力と能力開発決議(Technical cooperation and capacity-building for the promotion and protection of human rights in the Philippines)」 の共同提案国となった事実を挙げ、これを支援していくと述べました。他方で、開発援助や防衛装備品移転の中止には言及しませんでした。

 つまり日本政府は、フィリピンの違法薬物捜査などにおける殺害に懸念をもちながら、防衛装備・技術移転や防衛装備品輸出といった、超法規的殺害の実行者である国軍や国家警察への支援を継続していると認めたことになります。

 明らかに言行不一致のダブルスタンダード外交と言わざるを得ない。もし、その「懸念」の認識が真実であるならば、超法規的殺害を実行する国軍や国家警察への経済的・人的援助や支援をただちに中止するべきです。

― 現地からの声

マリア・ソル・タウレ氏(弁護士、人権NGOカラパタン法律顧問)

 フィリピンでの人権侵害に言及した第45回国連人権決議にもかかわらず、今日に至るまで人権アクティビストたちへの攻撃は止むことはありません。現実にはその攻撃はさらにおぞましく大胆なものとなっています。各国がフィリピンの人権状況の悪化を非難し、攻撃の基本的な資金源となっている軍事支援を停止しなれば、この国連決議へのいかなる形の賛同も偽善としか思えません。

ジョン・ミルトン氏(全国砂糖労働者同盟代表)

 外務省の回答は「二枚舌」です。なぜなら、日本政府は超法規的殺害を実行するドゥテルテ政権を支援しているからです。外務省はフィリピンで起こっている事態の何が問題なのかをよく知っているはずです。病であることを知っていながら、効き目もなく、かえって病を悪化させる薬を投薬しているのです。

クラリッサ・シングソン氏(人権NGOカラパタン・ネグロス支部代表)

 外務省の回答には失望しました。回答はむしろ、多くの人びとを殺害するフィリピン政府に手を差し伸べるだけではなく、なんのアカウンタビリティ(結果責任)(*4)を伴わずに頻発している人権侵害に関与するものだということを意味するでしょう。

― 申し入れ項目=2021年3月27日郵送

(1) 超法規的殺害をただちにやめるよう、フィリピン政府に要請すること

(2) 超法規的殺害をはじめとした人権侵害についてフィリピン政府に説明を求めること

(3) 超法規的殺害に関する国連人権理事会や国際刑事裁判所による調査を受け入れるよう、フィリピン政府へ要請すること

(4) フィリピン国軍や国家警察への経済的・人的支援の停止並びに開発援助及び防衛装備移転などを中止すること

― 賛同団体=2021年4月9日現在

一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター/医療法人ことぶき共同診療所/インドネシア民主化支援ネットワーク/神奈川県勤労者医療生活協同組合港町診療所/カラバオの会 (寿・外国人出稼ぎ労働者と連帯する会)/草の根援助運動/国際環境NGO FoE Japan/特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター/名古屋NGOセンター政策提言委員会/日本国際法律家協会

〈Souse〉*1) 和訳:ヒューライツ大阪 https://www.hurights.or.jp/archives/newsinbrief-ja/section1/2020/11/4510.html 原文:国連人権理事会 https://digitallibrary.un.org/record/3884738
*2)「フィリピンにレーダー輸出契約成立 完成装備品で初」20202020年8月28日日本経済新聞.
*3) Karapata, 2020, On the adoption of UN HRC Resolution on technical cooperation and capacity-building for human rights in PH.
*4) アカウンタビリティ(accountability)は「説明責任」の日本語が充てられているが、誤訳が定着して使用されている。ここでは原文は英語のため、そこで使用されていた accountability は、その言葉の本来の意味をくんで「結果責任」と訳した。『ロングマン現代英英辞典』によると、accountability は”responsible for the effects of your actions and willing to explain or be criticized for them.”

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