ロレイン・バドイ大統領府広報次官、
「赤タグ付け」で提訴 される

【写真】ロレイン・バドイ広報次官「『赤タグ付け』提訴を報道するメディアはフィリピン共産党のネットワークの一部だ」/via Facebook page of NTF-ELCAC (posted on March 25, 2022)

【東京=28日】地方共産党の武力紛争を終わらせるための全国タスクフォース(NTF-ELCAC)のスポークスパーソンでもあるロレイン・バドイ大統領府広報次官が、活動家や宗教団体、13のパーティリスト政党から構成されるマカバヤン・ブロックなどから、次々と提訴されている。バドイ広報次官は、「赤タグ付け」などしていない、真実を語っているだけだと反論した。

― 活動家や宗教団体ら、3件の行政不服申し立て

 3月23日、活動家26人や宗教団体、教員や学生リーダーのグループなどが、オンブズマン事務所へバドイ広報次官に対する3件の行政不服申し立て書を提出した。原告側は、バドイ広報次官は汚職・腐敗行為防止法、公務員および職員の行動規範・倫理基準に違反していると主張している。これら申し立てにより、バドイ広報次官は停職処分になる可能性がある。
 原告側は、「大統領候補であるレニー・ロブレド副大統領が共産党と同盟を結んでいる」という根拠のないバドイ広報次官の発言を、国営メディアのインフラを利用し有権者の心理に影響を与えるものであるとして非難している。
 原告側のトニー・ラ・ヴィニャ弁護士は、数週間のうちにさらなる提訴を予定していると述べた。

― マカバヤン・ブロック、選挙法違反で提訴

 つづいて、3月25日、マカバヤン・ブロックが、NTF-ELCACのバドイ広報次官と他8人を選挙法違反であるとし、選挙委員会に提訴した。マカバヤン・ブロックの告発の根拠となっているのは、3月14日と21日のバドイ広報次官を介したNTF-ELCACによる発言である。
 3月14日、NTF-ELCACは、ロブレド副大統領とCPP-NPA-NDFが協定を結んだと述べ、また21日には、マカバヤン・ブロックを構成するパーティリスト政党カバタアンやアナックパウィス、バヤンムナなどはCPP-NPA-NDFの都市工作員であると発言した。
 原告側は、これらの発言が政治的広告、あるいは、選挙プロパガンダに相当すること、パーティリスト政党に対するネガティブキャンペーンと見做されること、また、「赤タグ付け」された候補者の集会などへの参加を思いとどまらせる行為であることを問題視している。

― 「赤タグ付け」などしていない、真実を語っているだけだ

 NTF-ELCACは、3月23日の声明において、私たちは真実を述べることにこだわり、CPP-NPA-NDFの隠ぺい工作には加担しない、私たちは黙っている時ではない、CPP-NPA-NDFが黙る時だと述べた。さらに、たとえCPP-NPA-NDFだと識別されても、その人物の生命や自由、安全に危険が及ぶわけではないと続けた。「赤タグ付け」への抗議や提訴に屈しNTF-ELCACが黙ってしまえば、CPP-NPA-NDFとの関係性を隠蔽したいパーティリスト政党や労働団体などの思うつぼであるというのである。
 だが実際、原告の一人であるカバタアン・パーティリストのモング・パラティノ元代表が述べるように、「赤タグ付け」は対立グループや候補者への支持を阻害するだけでなく、実際に、活動家らを殺害や不当逮捕などの危険に陥れている。たとえば、2020年8月17日にネグロス島で殺害された人権活動家サラ・アルヴァレスは、1年8か月にわたりでっち上げの罪により収監された経験があり、また、殺害されるまでNPAのメンバーに仕立て上げられていた。

― SNSにもあふれるNTF-ELCACによる「赤タグ付け」

 活動家への「赤タグ付け」は使い古された手口だが、NTF-ELCACによるそれは、下院予算委員会の審議を中断させるといった事態をも引き起こしている。まにら新聞が紹介したインクワイアラーの記事によれば、2020年9月、「赤タグ付け」されたバヤンムナ党のサラテ議員が、広報室に関する予算審議の中止を求めた。バドイ広報次官が自身のフェイスブックページにおいて、パーティリスト政党から選出された議員を共産党幹部だと決めつけ、議員辞職を呼びかけたのである。批判に対しバドイ広報次官は、個人的な意見だと釈明した。

 フィリピンの英字紙フィルスターによれば、フィリピンの法学において「赤タグ付け」とは、政府工作員や法執行者、国軍などが、国の脅威、あるいは、敵と見なした個人やグループに対して、左派である、破壊分子である、共産主義者あるいはテロリストであるなどとレッテルを貼ったり、名称をつけたりすることである。

〈Source〉
Anti-communist task force, PCOO spread false claims on ABS-CBN franchise, philstar, May 10, 2020.
Baguio mayor Magalong calls out Badoy to fact-check, observe due process, Rappler, March 23, 2022.
Complaints vs Badoy, 8 other execs filed before Comelec, Inquirer, March 25, 2022.
Irked by Rappler fact checks, NTF-ELCAC sees red, philstar, March 3, 2021.
Lawyers’ group calls for sacking of red-tagging general Parlade, philstar, February 7, 2021.
NTF-ELCAC Statement, March 23, 2022.
NTF-ELCAC’s Lorraine Badoy sued at Ombudsman over red-tagging spree, philstar, March 23, 2022.
NTF-ELCAC admits to ‘monitoring’ community pantries but not profiling, philstar, May 19, 2021.
‘Red-tagging’ better defined through law, Lacson and Sotto say, philstar, March 23, 2022.
‘There is no such thing as red-tagging’: NTF-ELCAC spox, PNA, March 23, 2022.
国の予算でレッテル貼り 大統領府広報室の審議, まにら新聞,2020年9月18日.

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