副大統領選の敗北から開始されていた?
「ボンボン」マルコスの偽情報戦略

【写真】ボンボン」マルコス陣営の偽情報戦略の基盤と主張されるFacebook /via https://www.reuters.com/technology/facebook-rolls-out-new-messaging-business-tools-brands-2021-09-16/

【東京=30日】フェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニアによるソーシャルメディアを利用した偽情報戦略についての分析が進み、その分析を担うAFP等は「ボンボン」マルコスとトロール部隊との関係にさらなる証拠を提示した。

― 偽情報から利益を得る「ボンボン」マルコス

 選挙監視組織コントラ・ダヤは、大統領候補のフェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニア(以下、「ボンボン」マルコス)と彼のチームが、彼と彼の家族を権力の座に戻すために使用していると考えられる「偽情報」について、国民に注意を呼びかけている。
 「偽情報がこれほど大量にばら撒かれている理由を簡単に説明させてください」。3月22日に開催された「2022年フィリピン選挙公開フォーラム」(主催:IBONインターナショナルおよび民衆の開発とガバナンス評議会)において、コントラ・ダヤ設立の呼びかけ人ダニーロ・アラオ教授は聴衆に語り始めた。
 アラオ教授は、マルコス一族は1989年に亡命していた米国から帰国して以来、一族の復権に備えてきたと述べた。最初はゆっくりと、北部の基盤を再統合するために地方レベルの首長に立候補し、人びとの心にじわじわと足を踏み入れて行ったという。そして、大統領選に出馬した今、「ボンボン」マルコスは偽情報のネットワークが彼に有利に働くとある程度確信を持っていると説明した。他方でアラオ教授は、実際には、マルコスがこのような戦略から利益を得られないと確信していることを示し、5月9日の選挙の結果が社会の流れを(偽情報から)真実に転換することを願っていると語った。

― トロール部隊

 フィリピンでは7600万人ものインターネット・ユーザーがおり、そのほとんどがFacebookを利用していると言われている。Facebookをはじめ、YouTube、TikTok、Twitterには、故マルコス大統領や「ボンボン」マルコス候補に関する好意的な偽情報や誤解を招く主張があふれ、マルコス陣営は有権者に対しプロパガンダを拡散している。このような偽情報によって真実を捻じ曲げる、「荒らし」と呼ばれる行為を行う組織や組織的行為は、トロール部隊(Troll Armies)と呼ばれ、特に最近のメディアでは「ボンボン」マルコスの政治戦略を指す言葉として利用されている。
 2016年の副大統領選において「ボンボン」マルコスがレニ・ロブレドに惜敗して以来、親マルコス派のページには、ロブレド副大統領への選挙違反疑惑や一族の財産、故マルコス大統領の統治時代の経済的業績などに関わる偽情報が掲載されてきた。
 ロブレド副大統領も偽情報の大きな標的になっている。インターネット情報の事実調査を担う国際民間調査組織AFPと現地組織連合Tsek.phによる最近の共同調査では、「ロブレドは(SNNにおいて)支配的なネガティブなメッセージに動揺し、「ボンボン」マルコスは圧倒的にポジティブなメッセージを楽しんでいる」と分析し、彼女を愚か者、有権者に不親切、あるいは共産主義者として描写することを目的とした加工された写真やビデオなど、数十の誤った、あるいは誤解を招く主張を確認したと述べている。

― ソーシャルメディアへの圧倒的な影響力格差

 2022年の選挙を前にして、ロブレド副大統領への支持をかき消すようなインターネット上の活動は強まるばかりだ。
 ソーシャルメディア監視プラットフォームCrowdTangleのデータによると、少なくとも3000人のフォロワーを持つ100以上の親マルコス派ページがあり、その投稿に対する「いいね」、「シェア」、「コメント」などの読者からの反応は、過去1年間に7500万件近くあった。同じ数のロブレド副大統領のページが3900万件強のインタラクションを記録したのと比べると、その差は歴然としている。
 昨年10月7日にロブレド副大統領が大統領選への出馬を表明すると、「ボンボン」マルコス元上院議員支持のページにおけるインタラクションは180万件以上に急増し、1日平均は約9倍となった。他方、親ロブレド派のページでは48万7000件のインタラクションがあった。
 マニラにあるデ・ラ・サール大学政治学部クリーブ・アルゲレス助教授は、他の候補者がマルコス陣営とオンラインで競争するのは困難だ。「ボンボン」マルコスらはソーシャルメディアのスペースを支配するために本当に努力してきたし、トロール部隊に早くから投資し、これらのオンライン・コミュニティを構築することで利益を得てきたと述べた。

― 「ボンボン」マルコスも偽情報の被害者?

 「ボンボン」マルコスは、21日に行われたOne PHチャンネルのインタビューにおいて、AFPのファクト・チェッカー(調査ツール)が「自らの意思を持ち、彼に関する引用を捏造していると強い不満を表し、以下のように語った。
 「私は偽情報の被害者だ。私について言われたことの中には、真実でないことが沢山あるのだから。」

〈Source〉
Election watchdog calls out Marcos for ‘disinformation’ campaign, ABS-CBN, March 25, 2022.
Marcos Jr. winning Philippine election misinformation, say fact-checkers, GMA Network, March 23, 2022.
Marcos Jr. winning PH poll misinformation race–analysis, Inquirer, March 24, 2022.

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