活発化する活動家への抑圧:マルコス=ドゥテルテ政権による弾圧の予兆なのか?

【写真】環境保護活動家への抑圧を批判するデモ/ via Environment defenders reveal new wave of surveillance, red-tagging, KODAO, June 14, 2022.

【17日=東京】6月に入り、労働者・農民・市民などの民主的活動に対する警察や国軍による顕著な抑圧行動が立て続けに生じている。6月9日のタルラック州における農民ら83人の逮捕、12日のラグナ州での環境活動家の暴力的で根拠なき逮捕、そして、13日までの連日におよぶ環境保護団体への違法かつ抑圧的な捜査だ。人権や環境に関する団体からは、批判や調査要求が叫ばれている。加えて、新たに就任する大統領安全保障顧問も、抑圧的な対策から人道的な対策へと反政府組織戦略を転換するよう主張している。

― 環境保護団体への新たな抑圧

 「私たちは、人権委員会(CHR)および過去何年も一緒に仕事をしてきた国連の人権や環境に関する諸事務所に対して、これらの人権侵害や脅威に対する予防的介入を行うよう求めます。」(カリカサンPNE)

 6月13日フィリピンの環境保護団体であるフィリピン環境問題研究所(CEC)およびカリカサン環境人民ネットワーク(カリカサンPNE)は、過去5日間にわたって行われた団体メンバーに対する監視、嫌がらせ、赤タグ付けといった一連の抑圧行動に対して、それぞれのホームページやSNSを通して強く非難した。
 カリカサンPNEによると、9日に、私服警官が捜査令状を提示することなくオフィスを訪れ、無断で職員の写真を撮影し、また13日には、オフィスの写真を撮影する警察官らしき姿が目撃された。さらに、同日、同様に赤タグ付けの対象となっている革新系パーティリスト政党のポスターに、共産主義者であるなどと書き込まれてCECなどの敷地や近隣住宅に投げ込まれた。

― マルコス=ドゥテルテ次期政権の下での弾圧の始まりか!?

 カリカサンPNEは、「環境保護活動家は、監視や赤タグ付けの新たな波に直面している」と題した緊急警告文をSNSで公開し、現在、タルラック州やラグナ州において実行されているフィリピン政府による一連の抑圧行動に対して、次のような懸念を表明し、団結を呼びかけた。

 6月9日のタルラック州コンセプシオンにおける農民や農地改革支持者ら93人の逮捕、12日のラグナ州パキルにおけるダム反対活動家の逮捕、そして、連日続く事務所などへの監視は、治安当局による一連の抑圧行動です。私たちは、これが権威主義的なマルコス=ドゥテルテ次期政権における土地や環境の擁護者に対する弾圧の始まりではないかと懸念しています。
 私たちは、同盟者や友人、そして一般の人びとに対して、カリカサンPNEやCEC、そして、その他の土地と環境の擁護者への政府の攻撃を止めるために、私たちと共に行動することを呼びかけます。私たちの声は、私たちの国が直面している生態系の悪化や気候危機に関する真実を権力者に語るものとして、認められ尊重されるべきです。

― 身内からも赤タグ付け戦略への批判

 「ボンボン」マルコスの安全保障顧問に就任予定のクラリタ・カルロス博士は、6月9日、地域共産主義の武装紛争を終わらせるための国家タスクフォース(NTF-ELCAC)は赤タグ付けを止めて、代わりに現場の人びとの支援に焦点を当てるべきであると述べた。また、彼女によれば、フィリピンや他国における紛争対策の経験から、反政府勢力への軍国主義的な力による対策には効果がなく、これまであまり注目されなかった「人びとの生活を支え、子どもたちに学校へ行く機会を与え、一個人として成長させる」人間の安全保障に焦点を当てることが必要である。

― 決まらぬ人権委員会人事

 ドゥテルテ政権下での赤タグ付けを含む数々の人権侵害について調査・報告を行うのは、CHRの役割である。6月12日、同委員会のジャクリーン・デ・ギア委員長は、カルロス次期安全保障顧問の赤タグ戦略見直しの発言を歓迎し、「ボンボン」マルコス政権下での人権状況改善への期待を述べた。
 CHRは、故マルコス大統領による深刻な人権侵害を繰り返さないために1987年憲法によって創設された組織である。「ボンボン」マルコスは、適切な業績を有する人物をその長として任命すると述べたのみで、未だにそのポストに座る人物は明らかにされていない。

〈Source〉
CHR welcomes Marcos commitment to uphold human rights, philstar, June 12, 2022.
Environment defenders reveal new wave of surveillance, red-tagging, KODAO, June 14, 2022.
Green groups assail surveillance, red-tagging, Bulatlat, June 14, 2022.
Groups call for release of environmental defender in Laguna, philstar, June 13, 2022.
Senior Citizen arrested after speaking against Ahunan Dam Project, Kalikasan, June 12, 2022.
‘Stop this red-tagging’: Incoming Nat’l Security Adviser Carlos to focus on ‘human security’, ABS-CBN, June 9, 2022.
Urgent Alert: Environmental defenders face fresh wave of surveillance, red-tagging amid spate of arrests, Kalikasan, June 13, 2022.

「私の家には 奴隷 家政婦がいた」

不平等に扱われるフィリピン人の意外な理由とは?

詳しく見る

最新情報をチェックしよう!
>ひとりの微力が大きな力になる。

ひとりの微力が大きな力になる。


一人ひとりの力は小さいかもしれないけれど、
たくさんの力が集まればきっと世界は変えられる。
あなたも世界を変える一員として
私たちに力を貸していただけないでしょうか?

Painting:Maria Sol Taule, Human Rights Lawyer and Visual Artist

寄付する(白)