ラクソンとマルコス派が拡散する
ロブレドの共産党連合疑惑

【写真】大統領の座を争うピン・ラクソン上院議員(左)とレニー・ロブレド副大統領(右)/via https://www.pna.gov.ph/articles/1118772、 https://www.pna.gov.ph/articles/1168292

【東京=16日】「レニー・ロブレド副大統領がフィリピン共産党と大統領選挙で連合を組んでいる」との噂が拡散している。拡散を促進するのは、ピン・ラクソン上院議員やフェルディナンド・マルコス・ジュニアを支持するカビテ州の政治家たちであり、ロブレド陣営がその反論に追われている。

― フェイクニュースの発端

 レニー・ロブレド副大統領の選挙キャンペーンと共産主義者とを結びつけたのは、カビテ州のジーザス・クリスピン「ボーイン」・レムラ元下院議員である。彼は3月4日にカビテ州で実施されたロブレド陣営の集会に関して、同日のラジオ番組で次の二点を指摘した。
 ・「ピンク(ロブレド支持者のこと)のユニフォーム」を着た集会参加者たちに政治家(ロブレド副大統領のこと)が500ペソずつ支払っていた。
 ・ 集会に参加した学生は活動家のように見えた。彼らはフィリピン共産党(CPP)とその軍事部門新人民軍(NPA)を含む革命的組織の連合である民族民主戦線(NDF)参加者たちによって訓練を受けている
 ボーイン下院議員は、そのラジオ番組において「ピンクとCPP-NPA-NDFは共同戦線を張っている」と発言を締め括った。

― 悪意ある無責任かつ根拠のない主張

 3月7日、ロブレド陣営は、レムラ元下院議員の「悪意ある、無責任かつ根拠のない」主張をすぐさま非難する声明を公表した。声明において、「参加は変化を希求するカビテの人々の圧倒的な願望から生じたものである。それは純粋な無償活動である。この主張(レムラ下院議員の主張)は、正しいリーダーを選択しようとするカビテの人たちの能力を最小化するものに他ならない」と、ロブレド陣営は主張した。
 なお、このイベントに先立つ2月、カビテ州知事フアニート・ビクター「ジョンビック」・レムラは、カビテ州から80万票を届けると、フェルディナンド・「ボンボン」マルコス・ジュニア大統領候補に約束した。カビテ州はレムラ王国と称されるほどレムラ・ファミリーの政治的影響力の強い地域で、登録有権者数は国内で二番目に多い230万人を有する。

― ラクソンによる矢継ぎ早の批判

 選挙支持率でロブレドの後塵を拝しているピン・ラクソン上院議員は、3月6日、レムラ元上院議員の上記発言に対して、自身のツイッターを介して次のコメントを発している。

「それは憂慮すべき事態だ。CPP-NPA-NDFとの連立政権は、この国の数十年にわたる反乱問題を終わらせるための政府の努力による成果を後退させることになるだろう。」

 この後もラクソン上院議員は自身のツイッターを通して、矢継ぎ早にロブレド副大統領と共産主義との関係に言及している。3月8日には、ロブレド陣営に「共産主義が入り込んでいる」可能性について警告し、「適切な行動」をとるようロブレド副大統領に促すコメントをツイートした。さらに、その翌日もツイッターにおいて、NPAの元幹部であると主張する(NPAを裏切り、除籍されているという噂もある)ジェフリー・「カ・エリック」・セリス氏の主張を引用し、自身の主張とセリス氏の発言が一致している点に言及した。
 セリス氏は、3月4日にカビテ州で開催されたロブレドの選挙集会に、CPPのメンバーがいたと発言している。

― ロブレド陣営からの反論

 3月9日、ラクソン上院議員の発言に対して、ロブレド陣営のスポークスマンは、声明で次のような批判を公表した。

「この選挙戦の間、私たちはロブレド副大統領に対する攻撃やフェイクニュースを十二分に見てきました。 しかし『懸念』の仮面をかぶったこの露骨で執拗な赤タグ付けは、これまでにないほど低いレベルです。」
「党員選挙で議席を得ようと必死になっている人が『検証』したとされる勝手な報告書に基づいて、(共産主義との)連立政権があるといった飛躍的な結論を導くことは、無責任の極みです。ロブレド副大統領の大統領選への立候補を大規模に支援するために出現した人びとのキャンペーンのエネルギー、熱意、献身を弱めるために、恐怖を煽る行為も同様です。」

 同日、アントニオ・トリアネス元上院議員は、記者会見において、ジェネロッソ・セルボ・ジュニア元国家警察長官とドミンゴ・トゥターン元国軍司令官がロブレド副大統領支持を表明していることについて言及し、共産主義者と繋がっているというロブレド副大統領への批判を否定してロブレド副大統領を擁護した。

― 共産党も連合を否定

 3月12日、CPPの報道官マルコ・バルブエナは、「記録上、2022年5月の選挙に立候補するどの政党とも、いかなる合意も結んでいない」と声明を発し、どの選挙陣営とも連合の協議を行っておらず、その関心もないことを公表した。

〈Source〉
[ANALYSIS] About those 800,000 votes from Cavite, Rappler, March 6, 2022.
Cavite’s Remulla endorses UniTeam, Manila Times, February 13, 2022.
CPP: No coalition gov’t talks with any candidates, philstar, March 12, 2022.
Lacson warns Robredo of ‘communist infiltration’ in campaign; VP spokesman cries foul, Inquirer, March 10, 2022.
Robredo’s volunteers deny paid rally attendance, decry red-tagging, ABS-CBN, March 7, 2022.
Trillanes: Ex-AFP, PNP officers’ support belies red-tagging of Robredo camp, Inquirer, March 9, 2022.

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