ロブレド攻撃の一環で頻発化する左派への弾圧

【写真】ラリー・ヴィリエガス襲撃を非難するバヤン・ムナのポスター/via https://m.facebook.com/permalink.php?story_fbid=124622350139169&id=109385914996146&locale=ne_NP&_rdr

【東京=23日】フィリピン共産党との関係が噂される左派パーティリスト政党への国軍・警察による弾圧が強まっている。多くの左派パーティリスト政党は、ロブレド陣営の支持基盤の一つとなっている。3月に入りフィリピン南部で続く左派活動家への一連の襲撃・弾圧に対し、その対象とされた左派代表は、攻撃の背景の一つとしてロブレド陣営への支持を挙げる。

― 赤タグ付けされた活動家への襲撃

 ラリー・ヴィリエガスは、3月13日日曜日の朝6時頃、ジェネラルサントス市ブアヤン村の自宅において、銃を所持した正体不明の男性による襲撃を受けた。襲撃者は、銃で2発撃った後に現場から逃げ去った。ヴィリエガスは足に銃弾を受けて負傷し、すぐさま病院に運ばれた。
 ヴィリエガスは、左派パーティリストのバヤンムナ・ジェネラルサントス市支部コーディネーターである。以前から殺害予告を受けており、また、国軍から反政府活動を止めるよう告げられていた。さらに、ジプニーやトライシクル等の運転手によって組織された左派パーティリスト政党ピストン(PISTON)によると、ヴィリエガスは、「地方共産主義者の武力紛争を終わらせるための国家タスクフォース(NTF-ELCAC)」から赤タグ付けをされていた。

― 人権委員会「深く憂慮する」

 フィリピン人権委員会は、事件翌日の14日に、ヴィリエガス殺害未遂事件に関して「深く憂慮する」との声明をメディアに対して発した。声明では、すでに人権委員会はソクサージェン支部と協力して事件の真相解明に取り組んでいるという。2022年5月の選挙を前に選挙管理委員会とフィリピン国家警察が「銃禁止令」を出しているにもかかわらず、この銃撃事件は起きた。
 「ヴィリエガスは一命を取り留めたが、人権委員会は政治的な呼びかけ人に対して行われたこの攻撃を非難し、この犯罪の背後にいる人物を追求するために地元の警察の執行者が迅速に行動することを要請する」と声明は告げた。

― 襲撃は国軍による一連の弾圧活動の一環

 バヤンムナ(Bayan Muna)やピストン等13のパーティリスト政党から構成されるマカバヤンの、ソクサージェン地方コーディネーターであるマーク・アビバは、ヴィリエガス襲撃は政府による革新組織壊滅作戦の一環であると主張する。ヴィリエガスが襲撃されたのと同じ週に、マカバヤン構成政党アナックパウィス南タガログ地方コーディネーターのジョナサン・メルカド他10人のメンバーが、警察により連れ去られている。アビバは、これらの出来事が人びとの合法的な闘争を沈黙化させると政府を非難する。

― ロブレド陣営への攻撃か?

 ロブレド陣営は「フィリピン共産党と連合を組んでいる」との噂・中傷の払拭に躍起になっているが、その中傷の根拠とされているのが、バヤンムナやピストンを含むマカバヤンによる公的なロブレド支持である。これらの政党は、選挙管理委員会から政党として正式に認められている一方、国軍や警察からはしばしばフィリピン共産党の隠れ蓑と決めつけられ、赤タグ付け、さらに不当逮捕、拉致、暗殺など国軍や警察等の実施する超法規的作戦の対象として、弾圧されている。
 13日、パーティリスト政党バヤンムナのカルロス・サラテ下院議員は、襲撃されたヴィリエガスを含め、最近、不当逮捕されたバヤンムナ関係者が、「石油価格上昇を含むドゥテルテ政権への批判」や「ロブレド陣営支援のためのバヤンムナ・メンバーの動員」などに関わっていたと説明した。その事実から、それらの攻撃は、ロブレド陣営と敵対するドゥテルテ大統領やマルコス陣営による攻撃の一環である可能性を示唆した。

― 大統領選挙へのパーティリスト政党の影響力

 2022年選挙には178のパーティリスト政党が登録されているが、それらのうちの47政党がいずれかの大統領候補の支持を表明している。それらほとんどがマルコス陣営(21政党)とロブレド陣営(18政党)に分かれている。前回の選挙にも出馬した政党のみの比較ではあるが、2019年の選挙結果をみると、バヤンムナが2位以下に倍以上の差をつけた111万7000票でトップ。女性組織ガブリエラが2位と僅差の3位、教員組織ACTTeachersが4位であり、マカバヤン傘下組織は上位5政党のうち3組織(バヤンムナ、ガブリエラ、ACT Teachers)、その半数以上の票を占める。

注:マカバヤンは、13のパーティリスト政党で構成された連合組織。本記事で言及されている組織は、Gabriera(改革・統合・リーダーシップ・行動のための女性連合:General Assembly Binding Women for Integrity, Reform, Equality, Leadership and Action) 、ACT Teachers(憂慮する教員同盟:Alliance of Concerned Teachers), Bayan Muna(国家第一)、PISTON(陸運連合)。

〈Source〉
Bayan Muna coordinator in Gensan wounded in gun assault, Davao Today, March 13, 2022.
CHR to probe into shooting of Bayan Muna coordinator Larry Villegas, Philstar, March 14, 2022.
Transport leader shot in General Santos City, Inquirer, March 13, 2022.
Party-list politics: From marginalized to key election players, Inquirer, March 17, 2022.
ラクソンとマルコス派が拡散するロブレドの共産党連合疑惑, Stop the Attacks Campaign, March 16, 2022.

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