割れるフィリピン経済の国際評価

【写真】2021年に増大した海外送金がコロナ禍による国内経済低迷を支える(via Philippines suffers first recession in 29 years, braces for grim year on virus woes, Reuters, August 6, 2020. https://www.reuters.com/article/us-philippines-economy-gdp-idUSKCN25208X)

【東京=23日】ドゥテルテ政権による2021年の経済政策、そして大統領候補者の公約を評価する上で参考とされる国際経済指標の2つ − 経済自由度指数とフィッチ・レーティングス − が公開された。

― 80位に降格した経済自由度指数

 経済自由度指数およびその世界順位は、米国のシンクタンクであるヘリテージ財団と経済紙であるウォールストリート・ジャーナルによって作成され、毎年公開されている。法制度、政府の規模、管理監督の効率、市場の解放の4つの領域とその下それぞれ3つ、計12の指標の総合得点(100点満点)で決められる。
 2月14日に2022年版経済自由指数が発表され、フィリピンは、73位から80位に順位を下げた。東南アジア諸国では、1位シンガポール、42位マレーシア、62位ブルネイ、63位インドネシア、70位タイに続く6番手につけた。総合得点は、昨年より3ポイント下げ61.1点に落ち込んだ。
 管理監督の効率を構成するビジネス、労働、為替の自由度では昨年より得点を上げたが、他方で、インフラ、電力コスト、低賃金や社会保障の領域での脆弱さが指摘されている。法制度は、財産権、司法効率性、汚職の少なさの全ての構成要素で点数を下げた。ここで指摘されるのは、法執行能力が低い点、2016年以降に少なくとも61人の弁護士、裁判官、検察官が殺害されている点、汚職が蔓延している点、力を持った政治家や大企業のアカウンタビリティが低い点である。自由度のスコアは、コロナ禍での拡大財政・債務により、税負担で横ばい、政府支出、財政健全性で低下している。市場の解放に関しては、貿易の自由度を下げ、投資と金融の自由度は昨年と同様の状況であった。

― 外国企業からの信用は変わらず

 経済自由度に関する指標が国民の安全保障や格差是正に対する不備を指摘する一方で、海外の企業や国際機関、政府機関からの投融資の大きな指針となるフィッチ・レーティングスは、2月17日に昨年同様のBBBの格付け評価をフィリピンにつけたことを発表した。トリプルA(AAA)を最高位とし、トリプルB(BBB)までが投資適格国として位置付けられる。
 フィッチは、フィリピンの評価をBBBとして中期的な経済成長継続の可能性を示しつつも、ネガティブな見通しであることを強調し、財政健全化の構造的な問題を指摘する。

― ロブレド副大統領を支持する経済自由度指数

 経済自由度指数が示すフィリピン経済の評価は、レニー・ロブレド副大統領が主張する現政権批判、そして、彼女が掲げる大統領当選後の経済構想と大きく重なる。2月11日にロブレドの経済政策を支持するエコノミストグループ「レニーのためのエコノミスト」もロブレド大統領に経済学と法学に忠実な執行力、貧困者を包括した安全保障と発展戦略を期待し、法学者も法に忠実な執行力の遂行環境を期待している。

― フィッチの格付けを正当化の根拠とする現政権

 経済自由度がドゥテルテ政権への批判派を支持する一方、フィッチの格付けは、ドゥテルテ政権に正当化の根拠を与えている。ドゥテルテ大統領の報道官カルロ・ノグラレスは、多くの国がコロナ禍により格付けを落としている中でフィリピンが格付けを維持したことを理由として挙げ、国会を通過した外国投資法および公共サービス法の修正やフィリピンの政策の正当性、そして、7-9%の高い経済成長目標を強調した。
 格付け発表の翌日、カルロス・ドミンゲス財務長官は、フィリピンの経済および国家財政の今後の明るい見通しを述べ、外国投資家から高評価をもたらすであろう外国企業に対する公共事業参入領域の拡大を正当化した。しかし、財政健全化の手段の一つとして議論されている増税に関しては一言も触れることはなかった。

〈Source〉
Dominguez: PH to ‘return to normalcy’ in 2022, Inquire, February 18, 2022.
Fed’s 2022 moves seen prompting BSP response, Inquirer, January 13, 2022.
Fitch Ratings affirms PH status at ‘BBB’, PNA, February 18, 2022.
Fitch Affirms Philippines at ‘BBB’; Outlook Negative, FitchRating, February 17, 2022.
Over 160 economists, including 5 ex-NEDA chiefs, back Robredo for president, Rappler, February 11, 2022.
Philippines, 2022 INDEX OF ECONOMIC FREEDOM
Philippines drops to 80th in economic freedom index, philstar, February 17, 2022.
Public Service Act amendments to aid PH economic recovery, PNA, February 9, 2022.
2022年フィリピン大統領選挙キャンペーン始まる, Stop the Attacks Campaign, February 16, 2022.

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