「令状量産」判事が控訴裁判所陪席裁判官へ昇進

【写真】ホセ・ロレンツォ・デラ・ロッサ地方裁判所第一陪席裁判官が発行したエマニュエル・「マニー」・アサンションに対する捜査令状/via Facebook page of Rappler (posted on March 7, 2022.)

【東京=14日】3月7日、ドゥテルテ大統領が、「令状量産=Warrant Factory」判事として知られるホセ・ロレンツォ・デラ・ロッサ地方裁判所第一陪席裁判官(以下、デラ・ロッサ判事)を控訴裁判所の陪席裁判官へ昇進させた。それは、デラ・ロッサ判事らが発行した令状の正当性が問題視され、逮捕・勾留されていた者たちの釈放が相次いでいる中で実行された。

「令状量産」判事という用語は、殺害や集団逮捕につながった捜査令状などを多数発行した判事への批判を込めて使われている。

 3月7日、ドゥテルテ大統領は、3月10日の任命期限を前に、新たに7人の控訴裁判所裁判官と30人以上の裁判官を任命した。だが、7人のうちの一人、デラ・ロッサ判事への人事に対し、人権団体や人権派弁護士らから批判が巻き起こっている。なぜなら、デラ・ロッサ判事らが発行した令状を根拠に実行された「家宅捜索」において、人権活動家や農民団体メンバーらが殺害され不当逮捕されているからだ。

― デラ・ロッサ判事発行の令状は「血の日曜日」「9人の先住民族殺害」につながった

 NGO南部タガログを守ろう(Defend Southern Tagalog)は、デラ・ロッサ判事は治安当局による72件の要請のうち42件について令状を発行し、それらが殺害につながったとフィリピン英字新聞フィルスターの取材に答えた。

たとえば、2021年3月7日、カラバルソン地方の3州で国家警察と国軍の合同部隊が「一斉家宅捜索」を実行し、夫妻を含む活動家9人を殺害、6人を逮捕した。日曜日だったことから、この事件は「血の日曜日」として知られる。殺害された左派系団体連合バヤンのまとめ役エマニュエル・「マニー」・アサンション、逮捕されたエリザベス・カモラル、エステバン・メンドーサに対する令状は、デラ・ロッサ判事によって発行された。

 2020年12月30日にパナイ島で実行された「一斉家宅捜索」でも、デラ・ロッサ判事は、殺害された先住民族グループ・トゥマンドゥク議長ロイ・ギガントに対して令状を発行していた。人権擁護団体カラパタンの副事務局長ロネオ・クラマーは、全国人民弁護士連合(NUPL)によれば、デラ・ロッサ判事は少なくとも先住民族5人に対して令状を発行したと発言した。

― 問われる「令状量産」判事による令状の正当性と捜査の違法性

 ラップラーによると、2021年以来、25人の政治犯が釈放されており、うち20人の案件において、逮捕のきっかけとなった令状自体が無効化された。

 最近では、3月7日に、労働団体活動家デニス・ヴェラスコが14か月間の勾留の末、釈放された。2020年12月の世界人権デーにそれぞれの場所で人権活動家ら7人が逮捕され、ヴェラスコはそのうちの一人であった。今回、ケソン市地方裁判所のホセ・パネダ裁判官は、令状の無効化を求めるヴェラスコの請願を認め、同地方裁判所のセシリン・ブルゴス・ヴィリアヴェルト首席裁判官(ヴィリアヴェルト判事)が発行したヴェラスコに対する令状を、訴状を裏付ける証拠が欠如しているとして無効化した。

 そもそも、「令状量産」判事という用語は、このヴィリアヴェルト判事にあてられたものであった。2021年3月、同判事は過去2年間に少なくとも70人の人権活動家や労働・農民組織のメンバーらに対して令状を発行したと、フィリピン英字新聞インクワイアラーは報じた。うち60人はネグロス島とマニラ市において逮捕された。

 60人には、2019年10月にネグロス島のバコロド市で逮捕された全国砂糖労働者連盟のジョン・ミルトン・ロサンデ事務局長やヴェラスコと同日に逮捕された新聞社の編集者レディ・アン・サレム、労働組合員のロドリゴ・エスパラゴらに対する令状も含まれていた。インクワイアラーによれば、ロサンデに対するヴィリアヴェルト判事による令状は「捜査されるべき場所が記述されていない」、サレムとエスパラゴに対する令状は「あいまいで無効」といった指摘がなされ、無効化された。

 相次ぐ容疑者の釈放は、「令状量産」判事によって発行された令状の正当性に疑問を投げかけている。同時に、これらの令状によって実行された捜査手法の違法性も問題視されている。司法省は、「血の日曜日」において「家宅捜索」を実行した警官らをアサンション殺害容疑で告訴した。前述のクラマーは、警官らへの容疑が、「令状量産」判事の調査が必要であることを物語っていると指摘した。 人権擁護団体や弁護士らによる「令状量産」判事に対する非難の高まりの中で、2021年6月29日、最高裁判所は警察に対し、捜査実行時にボディカメラを着用するよう指示した。また、2021年7月、最高裁は、管轄地域外での捜査令状を発行するというマニラとケソン市の裁判官に与えられていた権限を剥奪した。

〈Source〉
After 14 months in detention, labor organizer Dennise Velasco walks free, philstar, March 9, 2022.
Court voids warrant against activist arrested on Human Rights Day 2020, Rappler, March 8, 2022.
Death warrants’, INQUIRER. NET, March 17, 2021.
Duterte appoints 7 CA justices, 36 judges before election ban, The Manila Times, March 8, 2022.
Judge who issued 3 Bloody Sunday warrants named new CA justice, Rappler, March 8, 2022.
Promotion of “search warrant factory” judge on Bloody Sunday anniversary a slap in the face of justice, Rappler, December 18, 2020.
Rights groups protest appeals court post for ‘warrant factory judge’, philstar, March 8, 2022.
SC now requires law enforcers to wear body cameras in implementation of warrants, philstar, July 10, 2021.

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