フィリピン政経フォーカス
(1月10日-1月24日)

【写真】ICCを含め多くの疑問をマルコスに投げかけるデラ・ローサ上院議員/via. Dela Rosa will respect PBBM decision on entry of ICC rep, Philippines News Agency, January 22, 2024.

― ドゥテルテにはすぐにでも逮捕状が出るだろう
 1月21日、アントニオ・トリリャネス4世元上院議員は、内部情報だと断った上で、国際刑事裁判所(ICC)捜査官が昨年12月にフィリピンに入国して初期調査で必要な証拠をすでに入手しているため、ドゥテルテ前大統領の逮捕状が「非常に近いうちに」発行される可能性があると語った。彼は、次のように付け加えた。
 「もし彼ら(ICC捜査官)が戻ってくるとしたら、それは被告人や被告人の二次的なレベルで十分な証拠を入手するためだろう。」
 ICC捜査官が昨年12月に入国したことの真偽については、年始に入国管理局に記録がないことで否定されたはずであったが、今回のトリリャネス元上院議員の発言によって、既にICCによって捜査が秘密裏に再開されていたとする情報に一定の信憑性を与えることとなった。

― ドゥテルテ陣営「逮捕状はあり得ない」
 ドゥテルテ前大統領の報道官であったハリー・ロケは、トリリャネス元上院議員の発言当日の夜、その発言に対して次のようなコメントを発表した。
 「管轄権のない裁判所(ICC)には、どんな証拠があったとしても、管轄権を与えることはできない。予備調査は我々の(ICC)脱退が発効してからかなり経って認可された。したがって、裁判所は管轄権を失っている。」
 また、ドゥテルテ前大統領の元大統領法律顧問サルバドール・パネロは、トリリャネスの「(ドゥテルテへの逮捕状発行の)物語」は「偏見でありフェイクニュース」であると述べた。

― マルコス大統領へ疑いの目をむけるデラ・ローサ
 「男らしく、 本当のところを話してください。」
 「以前は(ICC捜査官の)入国を許可しないと言っていたのに、空気が変わって、(ICC捜査官の入国を)許可したのであれば、教えてください。」
 これは、ロナルド・デラ・ローサ上院議員が、マルコス大統領に対し、同政権がすでにフィリピンでのICC捜査官の捜査を許可しているかどうか明らかにするよう促した際に発した言葉だ。デラ・ローサ上院議員は、ドゥテルテ前政権の警察長官でドラッグ戦争の実行責任者である。

― 金バラマキの不正な署名か?
 改憲推進団体「改革近代化と行動のためのピープルズ・イニシアティブ(ピルマ)」は1月11日、憲法改正のための署名の買収疑惑を否定した。
 ピルマの全国呼びかけ人であるノエル・オニャテは、「1987年憲法の改正を求める嘆願書の署名と引き換えに100ペソを配布している」との噂は事実でないと述べた。
 オニャテによると、ピルマは憲法改正請願を進めるために、同国の登録有権者数の12パーセントに相当する800万以上の署名を集める必要があるという。嘆願書は、上院と下院が憲法改正案を共同で採決することを求めている。これが受け入れられるならば、議員数が圧倒的に多い下院の意見が優位になる。

― ロムアルデス下院議長の疑惑
 1月12日、カバタアン・パーティリストは、ピルマのタイムスケジュールを入手し、その背後にいる者たち(大物政治家)がマルコス大統領の3回目の一般教書演説(来年7月)の前に改憲の嘆願書をマルコス大統領に「贈る」計画を立てていると主張した。
 また、デラ・ローサ上院議員は、1月22日、ピルマに署名を集めさせる命令を出しているのは、マルティン・ロムアルデス下院議長であると記者会見で述べた。デラ・ローサ上院議員は、「このことは、ある議員が私に言ったことです。しかし、誰だかは言えません。怒られるかもしれないですから」として、情報源については公表していない。
 ロムアルデス下院議長は、同日、囲み取材での質問に対して、「彼(デラ・ローサ)が何を言っているのか分からない。根拠不明な一般論には答えない」と、素っ気ない返答をした。

― 友好的協議へ改善
 1月19日、駐比中国大使館の黄溪连大使は、中国とフィリピンが緊張緩和のために海事関連のコミュニケーションを「友好的協議」に基づいたものに改善することで合意したと述べた。黄大使は、17日に中比間で行われた二国間協議メカニズム(BCM)第8回会議に触れ、両国は南シナ海に関して「率直かつ徹底的な」議論を行なったと述べた。

― 続く緊張とハラスメント
 BCMに関する合意の成果は、全く表れていないように見える。協議の数日後、中国は少なくとも27隻の船舶を南シナ海に派遣した。
 加えて、南シナ海で操業する漁民への中国海上民兵船によるハラスメントは続いている。国家安全保障委員会報道官のジョナサン・マラヤは、フィリピン漁民へのハラスメントを続ける中国を非難し、BCM合意のわずか数日後にもかかわらず生じている出来事を嘆いた

〈Source〉
China ‘militia rotation’ seen in SCS days after deescalation talks with PH, Inquirer, January 21, 2024.
Cool again: PH, China agree on ‘friendly consultation’, Inquirer, January 20, 2024.
Dela Rosa to President: Have you now allowed ICC to conduct probe?, Inquirer, January 24, 2024.
Group denies ‘buying’ signatures for Cha-cha petition, Inquirer, January 11, 2024.
ICC in PH last Dec; arrest order vs Duterte soon – Trillanes, Inquirer, 22, 2024.
NSC condemns latest harassment of PH vessels in WPS, Inquirer, January 23, 2024.
Romualdez sidesteps allegation he ordered People’s Initiative signature drive, philstar, January 22, 2024.
Speed of Cha-cha signatures betrays ‘fake’ people’s initiative campaign, lawmaker says, philstar January 18, 2024.

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