農民への人権侵害の救済を ILOに申し立て

【写真】サトウキビの収穫をする人たち=2020年2月5日、ネグロス島東ネグロス州ムルシア、木村英昭撮影

【28日=東京】農業労働者連盟(UMA)と全国砂糖労働者同盟(NFSW)は、ドゥテルテ政権が関与したとみられる農民に対する権利侵害事件について、国際労働機関(ILO、本部・ジュネーブ)に救済を求める申し立てをした。申立書によると、政治的な意図を持って超法規的に殺害された労働者のうち、農民が多数を占めるという。

─「暴力的な報復をされる」

 現地の報道や関係者によると、ILOには7日に申し立てをし、23日に記者会見を開いた。今回申し立てたのは、人権侵害のケースを現地の裁判所に申し立てても、裁判所や行政が対応しないためだ。反対に、申し立てをした農民が何者かによって暴力的な報復をされるという。

 UMAのアントニオ・フローレス議長は「労働組合員に対する冤罪事件も広がっている」。また、NFSWのジョン・ミルトン・ロサンデ事務局長は、「農業労働者はゲリラ戦士に仕立て上げられる。中傷され、嫌がらせを受け、逮捕され、さらに殺されることさえある。私たちの結社の自由に対する攻撃だ。それは、私たちの生活や暮らしに対する攻撃でもある」と話している。

─ 解決しない封建的な土地の支配

 農民を標的にした嫌がらせや殺害が起こる背景には、スペイン統治下で導入された封建的な土地所有の問題がある。
 アキノ政権は1988年6月、包括農地改革計画(CARP)を制定し、地主の元で働く農民への農地分配をとおして、不公正な社会の是正や農民の福祉向上、地方の発展などを達成しようとした。この包括農地改革計画は時限立法で、2回の延長を経て2014年に終了した。

 だが、実際には農民への土地の分配は進んでいない。NFSWが農地改革省の資料などから推計したところ、2018年と2019年時点で、ネグロス島では農場で働く農民と地主の土地で働く小作人の38%しか農地の分配を受けていない。

 法律で定められた土地の分配を求める農民に対する報復的な事件も発生しており、2018年10月20日には、ネグロス島西ネグロス州北部のサガイ市で、農場で働く9人の農民が殺害される事件が発生した。サガイ・ナイン事件と呼ばれる。

─ 国際刑事裁判所でも調査の動き

 国際刑事裁判所(ICC)でも動きが出ている。

 ICCのファトゥ・ベンスダ主任検察官は14日、フィリピンのドゥテルテ大統領が進める「違法薬物撲滅戦争(ドラッグ・ウォー)」における人道に対する罪を徹底的に捜査することを求める声明を発表、予備審査部に捜査の認可を申請した。

〈Source〉
Agricultural workers file complaint vs Philippine government before ILO, Philstar, June 24, 2021.
クラリッサ・シングソン, 2021, 「ネグロスからの手紙──虐殺と弾圧の島で 第4回 砂糖の島、農民の涙はかれず」『世界』岩波書店, 942: 278-283.
サガイ・ナイン農民虐殺事件の真相──プロローグ 阻まれる農地分配」Negros Exposure, 2020年10月19日.

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