【20日=東京】9月15日水曜日、国際刑事裁判所(ICC)の裁判官たちは、超法規的殺人の申し立てに関して、市民に対する「広範囲で体系的な攻撃」が見られるとして、「ドラッグ戦争」の中で実行された人道に対する罪の可能性を本格的に調査することを承認した。
― 国際刑事裁判所の見解
裁判官たちは、ドラッグ戦争について、「合法的な作戦と見なすことはできない。その殺害が合法であるとか、合法的な活動の単なる余剰的なものであるか、そういった問題でもない」と報告した。検察は、フィリピンが国際刑事裁判所に関するローマ規定の締約国となった2011年から2019年の期間の殺害について調査を行なっている。これは、ドゥテルテ大統領がダバオ市の副市長、市長時代をカバーしている。ダバオ市では、「ダバオ死の部隊」という自警団による数百人もの殺害が実行された。そして、検察は、これらダバオでの殺害が、ドゥテルテ大統領就任後に全国各地で行われた殺害と似ている点を指摘した。専門家によると、ダバオでの殺害とドゥテルテの大統領期の殺害の関係を描き出し、そのパターンを示すことで、ドゥテルテ大統領に対する起訴を強化することができる。
― ICCは無効?
ICC前検察官ファトウ・ベンソウダは、人道に対する罪の有無を調べるため、2016年以降のドラッグ戦争に関する予備調査を実施した。これを受け、フィリピン政府は、2018年にICCからの脱退を表明し、その一年後の2019年3月17日に脱退が発効した。脱退発効当日、フィリピン大統領府のサルバドール・パネロ報道官(当時)は、フィリピンがICC批准過程を完了していなかったためにローマ規定の締約国にそもそもなっていなかったとのフィリピン政府の立場を強調し、ICCの規定がフィリピン政府にとって効果を持たないと述べた。当時、ドゥテルテ大統領も、ICC調査への協力拒否の姿勢を示している。
― 撤退後もICCは逮捕状を発効可能
他方、ファトウ前検察官は、ICC脱退以降も調査の継続を主張した。今年3月16日のフィリピン最高裁判所の判決で述べられているように、フィリピンのICCからの脱退は、その当事者の刑事責任を免除するものではない。専門家によると、ドゥテルテが大統領であるかどうかに関わらず、ICCは、十分な証拠があれば、逮捕状を発効できる。
― ドゥテルテの反応
15日のICCの調査承認に対して、大統領府サルバドール・パネロ首席法律顧問は、ラジオ番組にて、「ドラッグ戦争」に関するICCの調査にドゥテルテ大統領が協力しないこと、ICCを既に脱退したフィリピンでICCの効力がないことを強調した。彼はまた、ICC調査承認発表に対するドゥテルテ大統領の反応について、「大統領に反応はない。彼は、外国の裁判を受けるくらいなら死んだ方がマシだといつも言っている。大統領は、彼らは勝手にすれば良いと考えているのだろう」と述べた。
〈Source〉
ICC probe of Duterte’s drug war inevitable, political analysts say, Business World, August 22, 2021.
ICC probe renews hope for justice for kin of drug war victims, ABS-CBN, September 17, 2021.
International Criminal Court authorizes investigation into bloody Philippine drug war led by Duterte, Washington Post, September 16, 2021.
Philippines Supreme Court dismisses challenge to Duterte’s ICC withdrawal, Reuters, March 16, 2021.
Philippines will not cooperate with ICC probe of ‘war on drugs’ – Duterte aide, ABS-CBN, September 16, 2021.
Philippines: Withdrawal from the ICC must spur UN action, Amnesty International, March 17, 2019.