【6日=東京】10月3日、それまでPDP-Laban党から副大統領として立候補を表明していたドゥテルテ大統領は、立候補受付け会場にボン・ゴー上院議員とともに現れ、副大統領候補として立候補することを取りやめ、さらに、政治家としても引退することを表明した。
― 世論調査：５人中3人が違憲と判断
ドゥテルテ大統領が副大統領出馬取りやめの理由として語るのは、SWS(Social Weather Stations)の世論調査である。この調査は、6月23～26日の間に1200人の成人フィリピン人に対して行われたもので、60%がドゥテルテ大統領による次期副大統領出馬を憲法の精神に反していると捉えている。
1987年憲法第7条第４項には、「大統領は再選の資格を持たない。４年以上その役職に就いた者は、どのような場合であっても同じ役職に選出される資格を持たない」と明示されている。ドゥテルテ大統領が副大統領出馬の意向を示していた8月、法務省メナルド・ゲバラ長官は、「大統領が辞任する、あるいは、死亡するなどの事態が生じた場合、副大統領が大統領に就任することになる。つまり、副大統領に就任したドゥテルテが、再度、大統領に就任する可能性が生じる。したがって、ドゥテルテ大統領の副大統領への出馬は憲法の精神に反する」との見解を公表した。その意見が60%という結果に反映されたと言える。
― 本命はサラ・ドゥテルテ-カルピオなのか？
ドゥテルテ大統領の政治家辞任発言の直後になされた記者会見とインタビューにおいて、PDP-Labanから大統領に出馬を表明していたゴー上院議員は、ドゥテルテ大統領の意思を引き継いで副大統領として立候補することを発表した。「それでは、サラ－ゴーということですね（サラ大統領－ゴー副大統領の組み合わせで出馬するのですね）」との質問に、ドゥテルテ大統領は「サラ－ゴー だ」と答えた。
ドゥテルテ大統領の娘であり現在ダバオ市長のサラ・ドゥテルテ-カルピオは、これまで何度か大統領出馬の意思がないことを表明しており、ダバオ市長として再び立候補するための申請を10月2日に済ませたばかりである。
― 今回も土壇場で変り身か？
専門家によれば、ドゥテルテ大統領は、ドラッグ戦争に伴う数千人とも言われる死者への責任を問おうとする国際刑事裁判所等から身を守るために、彼に忠実な後継者を次期大統領に据える必要がある。前回の2016年の大統領選挙の際も、ドゥテルテ大統領は大統領選挙への出馬を否定して、サラ同様にダバオ市市長に立候補していたが、最後の最後で他の候補と入れ替わり、大統領選挙に鞍替え出馬して勝利した経緯がある。ドゥテルテ大統領の側近でありPDP-Labanのアルフォンソ・クシ代表は、4日の記者会見において、状況次第でドゥテルテ大統領の考えが変化することもありうると発言している。
大統領選の候補者の受付けは今週8日までとなっているが、撤回や変更は11月15日まで可能である。
〈Source〉
DOJ chief: President can run for VP; VP can take over as president, ABS-CBN, August 31, 2021.
Duterte changing his mind on 2022 polls always a possibility — Cusi, Inquirer, October 4, 2021.
Duterte ‘retiring,’ Go runs for VP – but eyes still on Sara, Inquirer, October 3, 2021.
Philippines’ Duterte says daughter running for president in 2022 elections – media, REUTERS, OCTOBER 3, 2021.
Sara Duterte-Carpio files COC for Davao City mayor, ABS-CBN, October 2, 2021.
SWS: Most Pinoys say Duterte VP run violates Constitution’s intent, ABS-CBN, September 27, 2021.
