サラ・ドゥテルテの副大統領への立候補と周囲の混乱

【写真左】「ボンボン」・マルコス元上院議員(左)とサラ・ドゥテルテ ダバオ市長/via Mayor Inday Sara Duterte Facebook page 【写真右】サラ・ドゥテルテ ダバオ市長(左)、ドゥテルテ大統領(中央)、「ボン」・ゴー上院議員/via Duterte says daughter Sara running for president, long-time aide her VP, interaksyon, October 3, 2021.

【17日=東京】ドゥテルテ大統領の長女であるサラ・ドゥテルテ・カルピオ ダバオ市長は、13日にラカス-CMD党から副大統領として立候補を届け出た。大統領候補としてタッグを組む有力候補はフェルディナンド・マルコス・ジュニア(通称「ボンボン」マルコス)元上院議員。選挙管理委員会(COMELEC)への立候補証明書(COC)の提出は、大統領選候補者変更締め切りの2日前であった。これによりサラ市長の大統領選挙への立候補をめぐる憶測の1つに、終止符が打たれたかたちとなった。

― 予想通りの急展開

 サラ市長は、今月9日に、ダバオ市長選への立候補を取り下げ、自身の所属していた地方政党を離党し、候補者交代期限の2日前13日に、代理人のレイノルド・アンダナル弁護士を通して、COMELECに副大統領候補のCOCを提出した。ラカス-CMD党の下で副大統領候補として立候補していたライル・ウイは、サラ市長のCOC提出の直前に候補取り消し手続きを行った。ウイの候補取り消しは、ラカス-CMD党の大統領候補、副大統領候補のどちらか、もしくは両方がサラ市長の交代要員ではないかとの憶測を裏付けることとなった。
 サラ市長は、13日に公表した副大統領出馬に関する声明の中で次のように述べた。
「私は支持者の皆さんの望み(大統領候補に立候補すること:執筆者)を叶えることができず、皆さんをがっかりさせてしまいました。多くの支持者を傷つけ失望させてしまいましたが、それでも私たちは国のために協力することができます。そのためには私が大統領である必要はありません。日常生活の中で、他者を助け続けていきましょう。」

― サラ市長の出馬で動き出す新たな思惑

 同日、「ボンボン」マルコス大統領候補は、サラ市長が望むならば自身の出馬パートナーとして歓迎する意志を表明した。そして、「ボンボン」マルコスを大統領候補に推す連邦党(PFP)は、サラ市長を「ボンボン」マルコス大統領候補の出馬パートナーとして採用する決議を採択した。
 一方、サラ市長の獲得に成功したラカス-CMD党のラモン・レヴィーラ議長は、サラ市長の出馬パートナーとして、党公認の新たな大統領候補擁立に強い意欲を表明した。既に、党の公認大統領候補であったアナ・ベラスコも、ウイと同様に、サラ市長の副大統領への立候補を機に出馬を取り消している。ラカス-CMD党のマルティン・ロムアルデス代表は、「パンデミックの被害から立ち直らなければならない重要な時期に、私たちの党を助け導く仕事を引き受けてくれたサラ市長の決断を光栄に思う」と、サラ市長の今後の党内リーダーシップへの強い期待を示した。

― 混乱するドゥテルテ大統領陣営?

 ドゥテルテ大統領の長年の同盟者であるクリストファー・「ボン」・ゴー上院議員(通称「ボン」ゴー)は、急遽13日に、PDP-ラバン党公認の副大統領への立候補を取り下げて、PDDS党から大統領候補として出馬することを公表した。
 その翌日、ドゥテルテ大統領は、サラ市長が大統領でなく副大統領に出馬したことが自身の意にそぐわない選択であったことを公表した。さらにドゥテルテ大統領は、サラ市長の大統領出馬を見越して副大統領候補に据えた「ボン」ゴー上院議員に対して、今度は、大統領候補へ鞍替えするよう説得したと述べた。
 「ボン」ゴー上院議員の大統領出馬への転向に合わせて、10月3日に政界引退を表明していたドゥテルテ大統領も政界残留を選択した。13日、マルティン・アンダナル 大統領広報官は、月曜日(15日)にドゥテルテ大統領が副大統領出馬の立候補証明書を提出するであろうと公けにした。しかし、15日に、ドゥテルテ大統領はサラ市長とは争わないことを表明し、最終的に上院への立候補を決めた。ドゥテルテ大統領は、先月10月3日には政界からの引退を表明していた。

― 茶番劇への批判

 マリア・レオノー・「レニ」・ロブレド(通称「レニ」・ロブレド)副大統領の広報官バリー・グティエレスは、ドゥテルテ親子を巡る候補者らの目まぐるしい変化について、国民がパンデミックに苦しむ中で、問題の解決を図るべき指導者たちがこのような駆け引きに時間を浪費する心ない状況を批判した。
 バヤン・ムナ党のネリ・コルメナレス議長は、「専制政治であり、王朝であり、腐敗だらけの勢力の合併は完了した」と述べ、こうした勢力が再び力を得ることがないよう国民の団結を呼びかけた。

〈Source〉
‘BBM-Sara’ taking shape; Rodrigo Duterte wants to be VP too, , Inquirer, November 14, 2021.
Bong Go backs out of VP race, runs for president instead, Rappler, November 13, 2021.
Duterte: I would not be president if people can manipulate me, Philstar, November 14, 2021.
Lakas-CMD has placeholders for president, VP: What post will Inday Sara choose?, Manila Bulletin, November 11, 2021.
PRRD to run for senator in 2022 polls, Philippine News Agency, November 15, 2021.
Sara Duterte drops reelection bid, clearing potential run for higher office, ABS-CBN, November 9, 2021.
Robredo camp on recent substitutions in polls: ‘Nakita na natin ‘yang drama na ganyan’, Inquirer, November 13, 2021.
Sara Duterte files COC for vice president under Lakas-CMD, Inquirer, November 13, 2021.


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