テロリスト容疑のアエタ族2人への起訴 棄却

【写真】国軍と村の子どもたち=2020年8月21日、グルンらの居住地サンバレス州サン・マルセリノ町ブハウェン村/via FB page of Barangay Buhawen, San Marcelino, Zampales (posted on September 9, 2020)

【16日=東京】2021年7月15日、オロンガポ地方裁判所のメラニ・フェイ・タディリ主席判事は、昨年8月にアエタ族農民ジャパー・グルンとジュニア・ラモスがテロ行為容疑者として起訴された事件を証拠不十分で棄却した。この事件は、2020年7月の反テロ法成立後、テロリストとして起訴された最初のケースとして知られる。

 タディリ主席判事は、陸軍第73歩兵師団がただ走っていただけのグルンとラモスを令状なしに逮捕したことは違法であること、また、法廷での証人の証言や宣誓供述書の内容に矛盾があることを指摘した。

〈解説〉これまでの経緯

― 避難する途中で逮捕され6日間にわたり拷問

 2020年8月21日、グルンとラモスは、彼らが住む先祖代々の土地から避難する途中で陸軍第73歩兵師団によって逮捕された。彼らの居住地では爆撃を伴う軍事作戦が激化しており、近隣の村からも避難者が出ていた。

 そして勾留中の2020年8月27日、グルンとラモス、そしてのちに不起訴となったがラモスの兄弟が、テロリズム、殺人、武器不法所持など保釈が認められない容疑で起訴された。

 グルンは、逮捕された後6日間にわたり拷問を受けたと証言した。木につるされ棒で何度も殴られたり、頭にビニール袋を被せられたばこの煙を袋に入れられたり、酢やトウガラシ、水を無理やり飲まされたり、便を食べさせられたりしたという。拷問の中で、NPAのメンバーであると自白するよう強要されたが、グルンは容疑を否認した。

 グルンによれば、一緒に逮捕された未成年であるグルンの配偶者や子ども、義理の両親なども、銃で脅す、殴るなどの拷問を受けた。

 先住民族の自己決定のために活動するサンドゥゴによると、陸軍第73歩兵師団はアエタ族の先祖伝来の土地の一つサン・マルセリオで作戦を激化させているが、それは、鉱物資源採掘の基礎を築くためだという。すでに、少なくとも695人のアエタが国軍の作戦により避難を余儀なくされている。

― 二人の請願書が棄却され弁護人も変更

 2021年2月2日、グルンとラモスは人民弁護士全国連合(NUPL)のサポートを受け、反テロ法廃止と政府関係者へ同法実行の中止を求める請願書を、最高裁に提出した。請願が認められ反テロ法が廃止されれば、グルンとラモスへの起訴が却下される可能性があった。ところが2月9日、その請願書が取り下げられ、その上、NUPLへの通知なしに、グルンとラモスの弁護人が公選弁護人に変更された。

 のちに、グルンは、請願書の取り下げや弁護人変更に関して、「サインを強要された」と述べた。

 反テロ法を廃止するための司法審査権を行使するためには、反テロ法の危険性などを示す実際の事件や論争が必要となる。グルンらが被る暴力は反テロ法の危険性と廃止すべき理由を示す事例だが、請願書が取り下げられたことによって、司法審査権行使の要件としての事例が消失した。

〈Source〉
Aetas tortured by military, forced to eat soldier’s feces, Bulatlat, September 1, 2020.
Distraught Aetas caught in a war, Rappler, Feb 11, 2021.
Olongapo court junks terror case vs 2 Aeta farmers, Bulatlat, July 20, 2021.
Then and now, indigenous peoples fighting for ancestral lands charged with terrorism, Bulatlat, November 20, 2020.
【お知らせ】NUPL声明:反テロ法違反で起訴されたアエタ族農民の件, Stop the Attacks Campaign, February 13, 2021.
取り消された「反テロ法廃止」を求めるアエタ族農民の請願, Stop the Attacks Campaign, February 12, 2021.
反テロ法違反で逮捕・監禁・拷問 容疑者ジャパーの証言, Stop the Attacks Campaign, February 14, 2021.

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