【コラム】“There are still small voices that could be turned into thunder” サラの一周忌によせて

【写真】サラ・アルバレス/via FB page of Zara Alvalez(posted on May 19, 2020)

by そら

 2020年8月17日、ネグロス島のバコロド市で、人権擁護団体カラパタン・ネグロスの中心的な活動家であり、医療支援活動などにも携わっていたサラ・アルバレス(サラ)が、居宅近くの路上で銃殺されました。

 2017年以降、ネグロスでは、超法規的殺害が頻発していました。サラも常に標的となっていたので、寝床を転々として生活していました。なのに、サラの居場所は、サラを敵だと思う人たちに知られていたのです。

― でっち上げ容疑による起訴が棄却されたあと殺害

 サラは、でっち上げの容疑で2年近く勾留され、2020年3月、やっと無実を勝ちとったところでした。サラはとても喜んで、長年背負っていた重たい荷物を下ろしたように見えました。

 でも、サラを敵と思う人たちは、司法制度を利用してサラを黙らせることができないと思い知り、次の手段に出たのかもしれません。

― ずっと標的にされてきたサラ

 サラは、殺害されるまでずっと、国軍や国家警察から標的にされてきました。

 2012年、サラは、でっち上げの容疑で逮捕され勾留されました。2014年に保釈されましたが、2020年3月に無罪判決が出るまでいくつもの容疑について裁判で闘わなければなりませんでした。

 その上、保釈されて以来、サラはさまざまなハラスメントを受けてきました。

 たとえば、ネグロス島のモーゼス・パディラ町に貼りだされた60人の顔写真が載ったポスターに、サラの写真も掲載されました。そのポスターには、見かけたら電話するようにと国家警察の番号が記されていました。そのポスターに掲載されていた人権派弁護士ベン・ラモスさんやネグロス北部の人権擁護団体のリーダー べナルディーノ・パティガス・シニアさんも殺害されました。

 また、2017年に、司法省が600人以上の民間人をテロリストとして公開しましたが、そこにも、サラの名前がありました。このリストは最終的に2人まで減らされましたが、リストから名前が消されたからといって、サラへの「テロリスト」としてのレッテルが外されたわけではありませんでした。

 サラが殺害される前、5月にも、新たな容疑でサラが起訴されそうになっていることがわかりました。2018年10月20日に9人の農民がネグロス島のサガイ市で虐殺されましたが、その事件の「目撃者」の供述書にサラの名前があったのです。「目撃者」は、サラが犯人たちと話しているのを目撃した、国家警察や国軍への批難を醸成するために、サラたちが9人を虐殺したと証言しているというのです。

― 身を挺して

 常に標的になりながら、サラは身を挺して他者を助けるために奔走していました。

 忘れられないことがあります。

 2019年10月31日ネグロス島のバコロド市で、国家警察や国軍による一斉家宅捜索が実行され、農民組織などのメンバー55人が一斉に逮捕されました。

 私は11月4日に現地へ到着しました。私は、着の身着のままで、会話中も四方に注意を払っているサラの様子から、サラたちが尋常ではない緊張感の中にあることを察しました。

 サラが生活していた農民組織の事務所も家宅捜索されましたが、たまたまそこにいなかったので、サラは逮捕されませんでした。でも、もう、そこへ戻ることはできません。だからサラは、着替えもお金も仕事に必要なパソコンも何も持っていませんでした。

 サラの身にも危険が迫っていたので、隠れる必要がありました。でも、サラには落ち着いて眠る場所すらありません。そんな中でサラは、逮捕された人びとの様子を見るために警察署へ行き、弁護士などと連絡をとったりしていました。

 55人のうち11人が起訴されましたが、そのうちの4人は保釈可能な容疑であることが判明しました。するとサラたちは即座に、保釈金を準備し始めました。あの時サラは、とても急いていました。なぜかというと、起訴されたうちの何人かに対して、人身売買の容疑もかけられるという情報が、サラたちに入っていたからなのです。のちに、実際に、何人かにその容疑がかけられました。

 人身売買は保釈不可の容疑なので、その容疑がかけられる前に何としても保釈させなければ、もう助けるチャンスはないと、サラたちは思ったのです。

 4人の人権活動家らが保釈された時、サラが写真を送ってくれました。そこには、保釈されたばかりの農民組織メンバーらと並んで、サラの笑顔がありました。

― “There are still small voices that could be turned into thunder”

  殺害される1年ほど前の2019年7月20日、サラのフェイスブックページにこんな書き込みがありました。

 「私は、人権や人びとの安全を大切にする人が、まだいると信じています。そして、小さな声が、いつか大きな雷のようになって響く時がくると信じています。自分も含め多くの人権擁護者の命が危険に晒されていることはとても心配です。でも、もっと危険なのは、私が農民の問題や多くの人権問題に沈黙することだと思っています。」

〈Source〉
Zara Alvarez Facebook page, July 20, 2019.
農民組織や人権団体のメンバーやリーダー55人が警察へ連行 連絡取れず, Stop the Attacks Campaign, October 31, 2019.

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