取り消された「反テロ法廃止」を求めるアエタ族農民の請願

【写真】フィリピン最高裁(INQUIRER file photo / EDWIN BACASMAS)

 2020年8月、アエタ族の農民2人が、反テロ法違反と武器不法所持の容疑で逮捕・起訴された。彼らは、反テロ法廃止と、違憲訴訟が裁定されるまで反テロ法の実行を止めるよう最高裁に請願書を提出していた。だが、2021年2月9日、彼らの請願は全会一致で否定されたことが公開された。

― 2人の農民に何があったのか

 2人の名前は、ジャパー・グルン(Japer Gurung)とジュニア・ラモス(Junior Ramos)。 それぞれ、フィリピン中部ルソン地方のザンバレス州とパンパンガ州で、小さな畑を耕して生活していた。2020年8月21日、銃撃戦が発生し、彼らは家族と共にボートに乗って避難所へ逃げた。 ところが、彼らは共産党軍事部門NPAのメンバーであるとの疑いにより逮捕され、8月27日に反テロ法違反と武器不法所持の容疑で告訴された。彼らは、反テロ法によって起訴された最初の事例となった。

 しかしグルンは、勾留中に拷問されNPAのメンバーであると自白するよう強要されたと供述し、容疑を否認していた。 2020年9月14日に彼らが起訴されて以来、NUPL(the National Union of People’s Lawyers)が弁護にあたっていた。

― グルンとラモスの最高裁への請願

 2021年2月2日、グルンとラモスは最高裁に請願書を提出した。この請願で彼らは、反テロ法(Republic Act 11479)廃止と、すでに提出された37件の請願書に言及された政府関係者に対して同法の実行を止めるよう求めた。 グルンとラモスは、反テロ法第4条(a)に規定される「人の死または重傷を負わせることを意図した行為、人の命を危険に晒すことを意図した行為」に関わったとされ、起訴された。だから彼らは、反テロ法によって実際に苦しめられる自分たちには、この法律を廃止するよう求める権利があると考えたのだ。

― 撤回されたグルンとラモスの請願

 2021年2月9日。その日は、反テロ法に関する口頭弁論だった。その際、裁判長ジョスダド・ペラルタ(Chief Justice Diosdado Peralta)が、グルンとラモスが提出した請願書は、今朝、全会一致で否定されたと述べた。これは、主席検事であるホセ・カリダ(Solicitor General Jose Calida)による「2人は、今、請願を撤回した」という主張を受けての決断だった。

 そのうえカリダは、グルンとラモスの弁護人はNUPLからNational Commission on Indigenous Peoples (NCIP)とthe Public Attorneys Office (PAO)へ移ることを明らかにした。 カリダがこれを口頭弁論の場で公表するまで、グルンとラモスの弁護人であるNUPLは何も知らされておらず、寝耳に水の話だった。

 グルンとラモスによると、彼らは十分な説明なしに請願書にサインした。その上カリダは、グルンとラモスは請願書にサインした後に、NUPLから500ペソずつもらったと述べた。 他方、グルンとラモスは、「サインを強要された」「サイン後に500ペソずつもらった」という事実はないと言っている。また、NUPLの弁護士は、1000ペソは2人の両親からのもので、野菜と共に彼らに渡されたと述べた。

― なぜいま請願書の撤回なのか

 最高裁が司法審査権を行使するためには、実際の事件や論争の存在が必要だ。つまり、実際の事件や論争にあてはまるグルンとラモスの請願が撤回されると、司法審査権を行使する要件を満たさないと判断される可能性がある。 人権団体カラパタン事務局長クリスティーナ・パラバイ(Cristina Palabay)は、グルンとラモスの請願が取り消され、弁護人が変更されたわけは、彼らの請願と彼らが耐える苦しみが、この法律の危険性と廃止すべき理由を明らかに示し、反テロ法の争点になるからだと述べた。

〈Source〉
SC denies petition of 2 Aetas seeking help vs anti-terror law, Inquirer. net, February 09, 2021.
2 Aetas ask SC: Stop anti-terror law, February 3, 2021.
Aetas who filed petition vs anti-terror law were not forced – NUPL, Karapatan, Inquirer. net, February 09, 2021.
Why the 2 Aetas quit joining the anti-terror law challengers, Inquirer. net, February 09, 2021.
Even 2 Aetas deny they were bribed to sign ATA petition — NUPL, Inquirer. net, February 10, 2021.

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