【10日=東京】2022年1月7日、25歳で逮捕され32年間拘束された政治犯フアニト・イタアスが釈放された。イタアスは、米軍のジェイムス・ロウ大佐殺害容疑で懲役39年を求刑されたが、拷問され自白を強要されたと主張していた。法務大臣は裁判所に対し、釈放の再考を求めている。
― 初めての家族との生活
逮捕されてから約32年後の1月7日、政治犯イタアスがモンテンルパ州にあるニュー・ビリビッド刑務所から釈放された。39年の懲役刑だったが、Good Contact Time Allowance(善行時間手当)制度に基づき、懲役が短縮されたのである。
イタアスは、釈放に際し、「信じられない」、「荷物をまとめるよう指示された時驚いた」と、家族と暮らせる喜びを述べた。拘留中に結婚し3人の子どもを授かったイタアスにとって、家族と暮らすのはこれが初めてだ。他方で、身の安全に対する不安ももらしている。
― ベトナム戦争退役軍人ロウ大佐殺害事件
1989年4月21日、米軍のロウ大佐がケソン市で殺害され、同大佐の運転手が撃たれて受傷した。同年8月27日、その容疑者として、イタアスがダバオ市で逮捕された。イタアスはのちに、拷問によって自白を強要されたと主張したが、39年の懲役を求刑された。
他方で、共産党軍事部門新人民軍(NPA)は、ロウ大佐殺害の責任は自分たちにあると公表した。
1989年8月29日のニューヨーク・タイムスは、ゲリラのフアニト・イタアス(25)が、ロウ大佐殺害の容疑で逮捕されたと報じた。報道によると、陸軍総司令官代理を務めるラモン・モンタナオ少将は、共産主義者の反政府組織が犯行声明を出しており、「ロウの事件は、もう終わったことだ」と述べた。
― イタアスと支援者は無実を主張
政治犯や家族を支援するKapatid(カパティッド)は、イタアスの釈放に際し、政治的な意図をもったでっち上げの容疑による逮捕が常態化しているフィリピンの現実を米国は認識すべき、容疑者は拷問によって自白させられているのであると指摘した。
米国政府は、イタアスの逮捕と共産主義反政府組織による声明をもって事件を終わったこととしただけでなく、フィリピン英字新聞インクワイアラーによると、1992年にイタアスの釈放が勧告された際に、それを阻止している。
カパティッドは、法務大臣による釈放の再考への請願についても非難した。イタアスは自白を強要され32年間も勾留されたのであり、せめてこれから家族と安らかに暮らせるよう身の安全を確保すべきであると述べた。
〈Source〉
Convicted killer of US Army Col. Rowe released from NBP on orders of RTC, MANILA BULLETIN, January 8, 2022.
‘Longest-held political prisoner’ now home, INQUIRER. NET, January 9, 2022.
Longest held political prisoner in PH freed, CNN Philippines, January 8, 2022.
‘Longest-held’ political prisoner in PH released, ABS-CBN, January 8, 2022.
Philippines Arrests Guerrilla In Slaying of a U.S. Colonel, The New York Times, August 29, 1989.
Rowe’s killer freed, Daily Tribune, January 9, 2022.
【修正】
2022年1月10日14:50 以下のように修正しました。
ラモン・モンタナオ軍司令官代理参謀総長➡ (修正)陸軍総司令官代理を務めるラモン・モンタナオ少将