フィリピン政経フォーカス
(11月15日-11月22日)

【写真】APECに出席するマルコス大統領/US, Philippines sign landmark nuclear deal, Reuters, November 18, 2023.

― 皆の希望と願いを携えてAPECへ
 「私たちが住む平和で豊かなアジア太平洋に対するあなたたちの希望と願いを(米国へ)携えて行きます」
 11月14日、マルコス大統領はこのように国民に告げ、サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に参加するためフィリピンを後にした。
 15日から18日(フィリピン時間)にかけての米国滞在中、マルコス大統領は、APEC参加に加え、米国・カマラ・ハリス副大統領、米国・アントニー・ブリンケン国務長官、中国・習近平首席との会談をこなした。

― 原子力協力協定署名

 16日、マルコス大統領は、ブリンケン国務長官とともに、米国企業を通してフィリピン国内での「平和的利用」のための原子力技術の移転を可能とする「123協定」にサインした。ブリンケン国務長官は、「この協定が発効すれば、米国は、フィリピンが小型モジュール式原子炉やその他の民生用原子力インフラを開発する際に、設備や資材を共有することができるだろう」と語った。
 一方、協定にサインしたマルコス大統も、「私たちは原子力が2032年までにフィリピンのエネルギーミックス(多角化されるエネルギー源)の一部になると考えており、米国をパートナーの1つとしてこの道を追求することはこの上ない喜びである」と期待を語った。
 一方、協定にサインしたマルコス大統も、「私たちは原子力が2032年までにフィリピンのエネルギーミックス(多角化されるエネルギー源)の一部になると考えており、米国をパートナーの1つとしてこの道を追求することはこの上ない喜びである」と期待を語った。

― 習近平国家主席との会談
 18日、サンフランシスコで会談を行ったマルコス大統領と習主席は、フィリピンと中国が引き続き意思疎通を図る必要があると記者団に語った。
 マルコス大統領は別の記者会見で、習主席との会談において、西フィリピン海(南シナ海)での中国船によるフィリピン人漁民への脅威についての懸念を習首席に示したことを語った。さらに、大統領は、西フィリピン海における中国との緊張が地政学的問題(米国や台湾との問題)に影響されるべきではないという点で習主席と意見が一致したと述べた。

― 与党内で弾劾の議論が?
 噂の発端は、憂慮する教師同盟(ACT)パーティリストのフランス・カストロ代表の16日の記者会見での発言である。今年8月からカストロ代表を中心にマカバヤン同盟は、過去の機密費の不透明な用途に関してサラ副大統領弾劾の可能性を模索してきた。
 記者会見で弾劾動議の可能性について記者から質問された際、カストロ代表は、機密費に関する議論は弾劾動議には未だ不十分であると述べた後、下院与党内でサラ・ドゥテルテ副大統領に対する「弾劾協議が行われているはずだ」との情報を提供した。彼女は、与党内での弾劾議論は真剣なものにはなっていないものの、確実に与党内で亀裂が生じており、今後の弾劾動議への突破口になり得るとの考え付け加えた。

― なぜか慌てて火消しする与党
 与党政治家たちは、サラ・ドゥテルテ副大統領弾劾に関する噂の火消しに躍起になっている。
 記者会見でのカストロ代表による爆弾発言に対して、アーウィン・トゥルフォ下院副議長は、同日に記者会見を開き、下院にそのような動きがないことを、下院議長を始めとした主要な与党下院議員に確認したことを明らかにした。
 さらに、18日、ロムアルデス下院議長もサラ副大統領弾劾の動きを否定した。APECに参加していたロムアルデス下院議長は、弾劾の動きについて質問されたサンフランシスコでの記者会見で、与党内では弾劾の動きは存在しないし、聞いたこともないと、繰り返し強くその存在を否定した。

― サラの発言は誰に向けたものなのか?
 19日、サラ副大統領は記者たちの前で、2028年の大統領選挙で大統領に出馬する予定のないことを、「神のみぞ知る」と断った上で、発言した。弾劾の動きについての記者からの説明に対して、サラ副大統領は、適切な時期にコメントを発表すると述べ、マルコス大統領との関係は良好であると付け加えた。
 一方、同日、ハワイからフィリピンに帰国する直前の会見で記者からサラ副大統領との関係について質問されたマルコス大統領も次のように語った。

 「私たちは彼女を弾劾しようとは思わない。彼女には弾劾される理由がない」
 「(彼女との関係は)素晴らしい」

― 検察庁からの召喚
 ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は、娘のサラ・ドゥテルテ副大統領の2024年度予算案における機密費要求が物議を醸していることを批判した野党下院議員を殺害すると脅迫した容疑に答えるため、ケソン市検察庁から召喚された。
 召喚状は、憂慮する教師同盟(ACT)パーティリストのフランス・カストロ議員から提出された重大な脅迫の刑事告訴の予備調査のため、前大統領に12月4日と12月11日に出頭するよう命じている。
 元検察官である78歳のドゥテルテにとって、2022年半ばにマラカニアンを退任し、免責特権を失って以来、召喚状の対象となるのは初めてのことである。ドゥテルテが検察庁に出頭するのは、反証言書の提出のためである。
 「却下の申し立ては受け付けない。そうでなければ、被申立人は証拠を提出する権利を放棄したものとみなされる。」
 同様に、延期の申し立ては「例外的に正当な理由がない限り」受理されない。

― 最初のターゲットはお前だ
 ドゥテルテは、改正刑法第282条により6ヶ月以下の禁固刑に処せられる重大な脅迫の罪に問われている。しかし、2012年サイバー犯罪防止法第6条に基づき、より高い刑罰が課される可能性がある。カストロが申し立てたように、犯罪は情報通信技術を利用して行われたからだ。
 サンシャイン・メディア・ネットワーク・インターナショナルで10月10日に放映されたテレビ番組「Gikan sa Masa, Para sa Masa(大衆から、大衆のために)」での発言に端を発している。この番組は同ネットワークのビデオ共有プラットフォームにもアップロードされたが、後に削除された。
 ドゥテルテは、娘が要求した機密予算を予備役将校訓練課程に使おうとしていると語り、共産主義者反政府勢力の教化と勧誘に対抗するための機密予算の必要性を議会が認めるべきであるとの考えを示した。さらに、「機密費で最初に狙われるのは、フランス(カストロ)、お前たち共産主義者だ。」とドゥテルテは語った。

〈Source〉
Bongbong cites ‘excellent’ ties with Sara: We don’t want her impeached, Inquirer, November 20, 2023.
Explain confidential funds first: Castro says impeachment talks vs VP Duterte ‘premature’, Manila Bulletin, November 16, 2023.
Marcos embarks on weeklong US trip for 2023 APEC Summit, return to Hawaii, Rappler, November 14, 2023.
Marcos tells Xi: PH fishers should work freely in WPS, Inquirer, November 19, 2023.
No House-backed impeachment moves vs VP Duterte, solons say, Inquirer, November 16, 2023.
Nuclear energy pact with PH the ‘fastest’ negotiated by US, Inquirer, November 18, 2023.
Philippines, US sign ‘123’ deal on nuclear energy cooperation, ABS-CBN, November 17, 2023.
Philippine Prosecutor Subpoenas Ex-President Rodrigo Duterte Over Alleged Death Threat, Time, November 15, 2023.
Readout of Vice President Harris’s Meeting with President Marcos of the Philippines, White House, November 16, 2023.
Speaker Romualdez denies impeachment moves vs Sara Duterte at House, Inquirer, November 19, 2023.
US, Philippines sign nuclear energy cooperation deal, Benar News, November 17, 2023.
VP Sara Duterte says she has no ambition to run for president in 2028, Inquirer, November 19, 2023
‘Will that hold?’ House lawmakers quick to deny move to impeach Sara Duterte, Rappler, November 17, 2023.

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