ワクチン未接種者に
公共交通機関乗車禁止を発令!

【写真】警察に接種証明書を見せるジプニー乗客/via ‘No vax, no ride’ policy to prevent public transport shutdown, Philippines News Agency, January 13, 2022. https://www.pna.gov.ph/articles/1165325

【東京=19日】オミクロン株による感染者の再拡大とその経済被害を受け、ドゥテルテ政権は、昨年6月から何度も発言してきたワクチン未接種者への差別的措置ともとれる対応を進め始めた。バランガイ(フィリピン最小自治単位)キャプテンを通した未接種者リストの作成や逮捕を含めた直接的な規制、そして、公共交通機関の利用禁止をめぐり、議論が白熱している。

― ワクチン未接種者への急速な取り締まり強化

 1月4日のドゥテルテ大統領によるワクチン未接種者への脅迫ともとれる発言以降、未接種者への規制強化策が次々と報告されている。4日にバランガイキャプテンへワクチン未接種者の移動を取り締まるよう命じたドゥテルテ大統領は、6日のテレビ会見において、全てのバランガイキャプテンに対して、ワクチン未接種者を発見し、家から出ないよう要求または命令し、それに反する者を逮捕するよう命じたと発表した。
 また、ドゥテルテ大統領の発表に先立つ1月3日、マニラ首都圏では、ワクチン未接種者の首都圏への移入禁止決議が採択され、未接種者の首都圏内での不要な外出も禁止されている。
 1月12日、ワクチン未接種者に対して、さらに2つの施策が発表された。一つは、交通運輸省からのものであり、警戒レベル3以上で「未接種者乗車禁止(no vax, no ride)」をすべての公共交通機関に課す。もう一つは、内務自治省による全てのバランガイへのワクチン未接種者のリストアップの命令である。

― 感染者の爆発的拡大とワクチン接種率

 ジョンズ・ホプキンス大学の統計によれば、12月半ばには100人を下回るまでに減少したフィリピン国内の新規感染者数は、今年に入ってから急激な増加を見せた。1月5日には1万人を超え、10日には3万人、16日には3万8千人を超えた。感染者総数も1月11日に300万人に達した。感染拡大に対し、マニラ首都圏は1月3日より警戒レベルを再び3に引き上げている。
 一方、ワクチン接種者数も増加しており、1月14日の新型コロナウィルス対策タスクフォース(NTF)によると、5445万7863人が既に2回のワクチン接種を終えている。これは、対象国民の70.60%にあたる。

―「未接種者乗車禁止」政策は17日より適用

 これら一連の規制策のうち、最も批判が多いのは、「未接種者乗車禁止」政策である。1月17日に施行されるこの規制は、「2回のワクチンを接種した個人にのみ首都圏への/からの/内部での、移動が認められる」とされる。健康上の理由で接種できない者はそのための医師による証明書が必要とされ、生活必需品の購入のための移動にはバランガイ健康パスが必要となる。

― 反貧困者か、必要な措置か

 多くの市民組織や政治家等から、「未接種者乗車禁止」政策に対しての批判や懸念が上がっている。1月12日、人権委員会(CHR)は、広報官のジャクリーン・デ・ギア弁護士を通し、この政策が基本的権利の行使と享受を事実上制限しているのではないかとの危惧を表明した。ギア弁護士は、この法律の下で生活に必須の品やサービスのための移動を例外として認めたとしても、ただ許可を与えるのではなく、そのようなアクセスを保護しない限り、実際的には大きな制限となり得ることを説明した。
 加えて、ワクチンへのアクセス、リモート手段や移動手段の所持に関して、貧しい人により厳しくなる内容に対して批判が集まり、また、その禁止政策の実施可能性、特に運転手の負担への懸念が表明された。
 1月13日、多くの批判を受けた交通運輸省は声明を出し、「未接種者乗車禁止」政策が反貧困者への差別的な政策であることを否定し、再度、生活必需品等に関する移動を例外とすることを説明した。声明文は、不便をかけることに関して謝罪した後、公共交通機関の閉鎖を防ぎ、国民を守るために、未接種者の移動制限が必要な措置であることを訴えた。

― 主要大統領候補の立場

 副大統領のレニ・ロブレド大統領候補は、脅迫によるワクチン接種を批判し、情報と教育によってワクチン接種へのインセンティブを創出する必要性を語る。パッキャオ大統領候補は、「彼らを犯罪者のように扱ってはならない。働く権利、生活必需品を購入する権利の行使を妨げないようにすべき」と呼びかけている。そして、パンフィロ・ラクソン大統領候補は、「希望者全員分のワクチンを確保できているのか? もし、そうでないなら、それはアンフェアだ」と政策の前提条件に注意を向けた。
 他方、フェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニア大統領候補は、ワクチン未接種者の移動制限の強化に賛同すると同時に、ワクチン接種を国民により近いものとし、仕事や食料等、国民の生活への注視の必要性を語った。そして、マニラ市長であるイスコ・モレノ大統領候補は、マニラ首都圏の移動規制に関する決議を主導した一人である。

〈Source〉
Duterte: Arrest the unvaxxed, Manila Standard, January 7, 2022.
Duterte threatens to arrest people who refuse getting vaccinated, Rappler, June 22, 2021.
DOTr issues ‘no vax, no ride’ policy, but CHR, Lacson, BBM urge caution, Business Mirror, January 12, 2022.
DOTr says sorry, denies ‘No vax, no ride’ policy is anti-poor, Rappler, January 13, 2022.
Fully vaccinated in PH surpass 54 million, Inquirer, January 14, 2022.
‘No vaccine, no ride‘ policy restricts fundamental rights – CHR, Inquirer, January 16, 2022.
‘No vax, no ride’ in NCR public transport begins Jan. 17, Philippines News Agency, January 12, 2022.
‘No vax, no ride’ policy to prevent public transport shutdown, Philippines News Agency, January 13, 2022.
Philippines’ COVID-19 cases breach 3 million as 28,007 more infections logged, ABS-CBN, January 11, 2022.
Robredo insists on info drive as Marcos backs ‘No vax, no ride’, Rappler, January 13, 2022.

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