フィリピン政経フォーカス

【写真】ACT参加者リスト作成を要請するサラ副大統領を批判するポスター/Via. Facebook page of Act Teachers Party-List, June 24, 2023.

南シナ海情勢/サラ副大統領と教職員団体との確執続く/アフガニスタン難民の一時的受入れ

トピック1:南シナ海情勢

― 対中領海問題を国連総会へ!
 この1週間で、西フィリピン海(=南シナ海)における中国の好戦的な行動を国連総会に提起するよう政府に求めるアントニオ・カルピオ元最高裁上級判事の提案に、より多くの上院議員の支持が集まった。
 国連総会提起への支持を強く表明しているのは、リサ・ホンティベロス上院議員、フランシス・トレンティーノ上院議員、J・V・エヘルシト上院議員である。他にも、有効性に疑問は残るものの肯定的な意見を有する上院議員は少なくない。
 カルピオは、国連総会から中国の領海侵犯の問題に関する決議案を提出することについて論じた5月30日のフォーラムにおいて、大多数の国連加盟国が沿岸国であり、強力な隣国によって自国の領海を取り上げられてしまう懸念を有していることから、その決議案に多くの支持を得られるとの勝算を述べた。
 一方、ギルバート・テオロド国防長官をはじめ幾人かの上院議員は、問題を国連に持ち込むことの有効性に懐疑的な意見を発している。中国が国連安全保障理事会で拒否権を有しているからだ。テオロド国防長官は、国連に持ち込むのではなく、フィリピンの領有の正当性を広く世界に発信すべきだと述べた。

― フィリピンとの関係強化を歓迎する台湾
 6月27日、台湾の呉釗燮外相は、比米防衛協力強化協定(EDCA)や米国によるフィリピン国内の米軍施設増設の動きを歓迎し、また、台湾とフィリピンとの関係の更なる強化の可能性を語った。
 呉外相は、中国の経済的圧力について触れ、「(中国の経済能力について)過剰評価すべきではない」、なぜなら、「前(ドゥテルテ)政権時代の投資約束は実現しなかったのだから」と語った。
 「もちろん、(私の考えを)押し付けるつもりはない。フィリピン政府がフィリピンの利益になるようなことを考え抜くことを望んでいる」と付け加えた。

トピック2:教育省(=サラ副大統領)と左派教職員団体との確執続く

― 発覚した教育省の覚書
 6月14日にレブゼー・エスコベド教育次官によって出された覚書によると、すべての地方局長と教育課長は、教育省の自動給与控除システム(APDS)に加入している憂慮する教師同盟(ACT)に加盟している教師の名前を21日までに提出する必要がある。
 各地に送られた覚書がSNS等で拡散され露見したことで、覚書に対する批判や疑問の声が強まっている。そんな中、24日、教育省は、この覚書が政府の反乱キャンペーン(反政府組織メンバーを特定し、赤タグ付け等によりメンバーに圧力をかけ、時に排除する作戦)のためのリストであることを否定し、APDSの効率化を目的とするものであると説明した。

― 反乱キャンペーンの一環か?
 ACTは25日、サラ・ドゥテルテ副大統領(教育省長官を兼任)が過去にACTに対して行った発言を引き合いに出し、「教育省が、ACT会員名簿を使って私たちの権利を侵害しないという保証はない」と述べた。赤タグ付けやAPDS等を利用した給与の不正に関する疑惑のためにサラ副大統領との関係が悪化しているACTは、以下のような声明を発した。
 「(サラ)ドゥテルテ副大統領がACTに対して執拗で悪質な赤タグ付けを行っていることを(皆が)知っている以上、このような文書がACTとその組合員に対して(その行為を抑圧するために)使用されないという保証はない」。つまり、赤タグ付けするサラ副大統領がACT参加者リストを作成しようとすると、多くの人たちは、それが赤タグ付けの行為と同等のものと認識し、恐れることとなる。
 「これは、ACTとそのメンバーによる結社の権利、表現の自由、プライバシーの保護を侵害するという大きな可能性をもっている。私たちは教育省に対し、悪質な高利貸しや貸金業を追及する労働組合、教員組織に対して手を出さないよう要請する」。

トピック3:アフガニスタン難民、一時的に受入れ

― アフガニスタン難民受入れの事前合意はない
 マルコス大統領は6月29日、政府は自国の混乱で避難しているアフガニスタンの人びとを収容するための選択肢をまだ模索していると述べ、米国との合意が水面下で既になされているのではないかとの憶測に反論した。
 マルコス大統領によると、フィリピンには難民を受け入れてきた長い歴史があるが、アメリカがフィリピンに対しアフガニスタン人を一時的に受け入れるよう要請した前例はないという。
 「この難民の一時的受入れに関しては、多くの問題があります。だから、アメリカとフィリピンの間で合意が成立したという報道を見たときは本当に驚いた。どうすればうまくいくのか、私たちはまだ慎重に調査しているところです。実現する方法を見つけるつもりです」と、パラニャーケ市でのぶら下がりインタビューに応じた大統領は語った。

― 安全保障への影響を調査中
 マルコス大統領は、難民の経由地となることで、安全保障上の問題や法的・物流的な問題が生じる可能性があることを認めた。
 「彼らは主に米国に再定住しようとしているアフガニスタン人であり、われわれは第3の国になるというのが米国の提案だ。私たちは調査を続けます。フィリピンの安全保障を脅かすことなくできる方法があるかどうか検討しましょう」とマルコスは語った。
 今月21日のホセ・マニュエル・ロムアルデス在米フィリピン大使の発言によると、フィリピンは、7月15日までに難民の受入れを行うか否かの答えを米国政府に出さなければならない。

〈Source〉
Bongbong Marcos: Gov’t still exploring ways to shelter Afghans, denies talk of deal with US, Inquirer, June 29, 2023.
Expand West PH Sea debate beyond PH instead of going to UNCLOS: Gibo, ABS-CBN, June 26, 2023.
Member list may be used to violate rights – ACT, philstar, June 26, 2023.
Taiwan seeks security cooperation with Philippines, philstar, June 29, 2023.
UN as venue to resolve WPS row gains support, Inquirer, June 27, 2023.
UN honors Secretary Galvez for role in Bangsamoro peace process, Inquirer, June 12, 2022

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