【2日=東京】フィリピン政府は7月31日、新型コロナウイルスの感染拡大が続くマニラ首都圏を4段階の防疫措置の中でもっとも厳しいレベルに引き上げる、と発表した。期間は8月6日から20日まで。この期間は、集会や外出も禁止され、事実上の全面的都市封鎖(ロックダウン)になる。昨年5月以来続く隔離措置は、世界最長となる。
─ 1日感染者8147人に
報道によると、6日から実施されるのはもっとも制限の厳しいECQ(強化されたコミュニティ隔離措置)と呼ばれるレベル。フィリピン保健省によると、31日の感染者数は8147人に達し、3月末から4月初旬のピークに迫った。感染者数は累計で158万8965人、死亡総数は2万7899人だ。
─ 進まないPCR検査と報告の遅れ
日本と同じくPCR検査は行き届いていない。保健省は、検査キットの品質にはばらつきがあり、さらに、PCR検査の陽性者に関する各地からの報告の遅れが問題となっていることを認めている。
─「ワクチンを拒否するヤツは投獄し、豚用の治療薬を注射する」
先月7月の30日時点で、8種類の新型コロナワクチン3386万700回分(人口約1億900万人)がフィリピンに到着している。日本からも、アストラゼネカ社のワクチン100万回分が届けられた。
しかし、2回のワクチン接種を完了したのは現在、人口の7.2%にとどまっている。
その理由として、ワクチンの調達が遅れていることにくわえ、ワクチンの人体への影響を懸念する人たちが多いことが考えられるという。2017年にはデング熱予防ワクチンの接種で多くの子どもたちが死亡したほか、その翌年には狂犬病の偽物のワクチンが出回る事件があったことも影響している。
ドゥテルテ大統領は、こうした市民の不安に対し、「ワクチン忌避者は投獄し、豚用の治療薬を注射してやる」と6月21日の会見で脅した。だが、この見解は、「希望者のみに接種する」という保健省の見解と矛盾する。
─ 最大のワクチン提供者は中国
7月26日に行われた任期最後の施政方針演説で、ドゥテルテ大統領は中国への配慮を鮮明にした。ワクチンの調達にくわえ、コロナ禍で低迷するフィリピンへの投資を増大させてきた中国への依存は、南シナ海(西フィリピン海)問題などでも中国と対立する日米との協力にも大きく影を落としている。
現在フィリピンが確保しているワクチンの半分以上、1950万回分は、中国シノバック社製だ。うち、100万回分が中国政府からの寄付だ。
〈解説〉フィリピンにおけるCOVID-19への防疫措置
フィリピン政府は、隔離措置に以下の段階を設けている。制限は、ECQが最も厳しい。
ECQ(Enhanced Community Quarantine、強化されたコミュニティ隔離措置)
MECQ(Modified Enhanced Community Quarantine、修正を加えた、強化されたコミュニティ隔離措置)
GCQ(General Community Quarantine、一般的なコミュニティ隔離措置)
MGCQ(Modified General Community Quarantine、修正を加えた、一般的なコミュニティ隔離措置)
人の移動については、ECQとMECQでは「自宅に滞在」、GCQでは「症状が悪化しやすい高齢者、感染を媒介しやすい若者者は自宅に滞在」、MECQでは「制限なし」とされる。
〈Source〉
Coronavirus (COVID-19) Vaccinations, Our World in Data, July 31, 2021.
Philippines: COVID-19 Vaccine Tracker, ABS-CBN, July 30, 2021.
PH posts 8,147 new COVID-19 cases; active cases at 60,000, ABS-CBN NEWS, July 31, 2021.
Tracking Covid-19 vaccinations worldwide, CNN health, July 31, 2021.
フィリピンにおける新たな隔離措置の概要, ジェトロ・マニラ事務所, 2020年5月18日.