ドゥテルテ政権、五輪初の金メダリストを「政権の敵」扱い 大統領「水に流そう」

【写真】金メダルを受賞し敬礼するディアスさん=2021年7月27日、東京都千代田区の東京国際フォーラム/via Philippine Information Agency

【4日=東京】東京五輪ウェイトリフティング女子55キロ級でフィリピン初の金メダリストとなったヒディリン・ディアス選手が、2019年に政府が作成した「反ドゥテルテ大統領」のリストに掲載されていたことを明らかにした。政府に公式の謝罪を求める声が強まっている。
 ディアス選手が7月26日にあったメディアとのインタビューで明らかにした。報道によると、2019年、フィリピン政府はドゥテルテ大統領を厳しく批判するジャーナリストらの交友関係などを人工知能を使って分析し、人物相関図を作成していたという。サルバドール・パネロ大統領補佐官(当時)がその人物相関図を公表した。ドゥテルテ大統領の指示だったという。

援助も断たれる事態に

 この人物相関図の中に、ディアス選手の名前もあった。当時リオデジャネイロオリンピック銀メダリストだった。人物相関図が公開された以降、ディアス選手は、資金援助団体から援助を中止されたり、ほかのアスリートから距離をおかれたりしたという。中には、「ディアス選手とは無関係」と宣言する者もいたという。
 ディアス選手は当時、「ウェイトリフティングのことで頭が一杯で、他のことを考える余裕はない」との談話を発表し事実を否定した。だが、その主張は政府に受け入れられなかった。

「辛い経験が私を強くした」

 ディアス選手はインタビューで「私は、金メダルを獲得した後、私を痛めつけ、私の生命を危険に晒した人たちを赦さなければならないと発言しました。その決断は非常に辛いものでした。でも、あの辛い経験こそが、私をアスリートとして強くしたのだと気づきました。愛国心も高まりました。このような試練がなければ、金メダルは取れなかったでしょう。今、私は彼らに感謝しています」と答えた。
 政府は、ディアス選手に対し正式な謝罪をする予定はないという。ドゥテルテ大統領は28日、帰国したディアス政府とオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使って話し、「過去のことは水に流そう」と語った。

〈Source〉
Olympic Champion Hidilyn Diaz Deserves an Apology From the Philippine Government, The DIPLOMAT, July 29, 2021.
Olympic gold medalist Hidilyn Diaz forgives Palace for oust-Duterte tag, Inquirer, July 29, 2021.
Panfilo Lacson mocks new ‘matrix’ that includes Gretchen Ho, Hidilyn Diaz, Philstar, May 9, 2019.
Philippines’ first Olympic gold medalist was briefly accused of being part of ‘plot’ against Duterte, CNBC, July 30, 2021.

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