【16日=東京】国際刑事裁判所(ICC)のファトゥ・ベンスダ主任検察官は14日、フィリピンのドゥテルテ大統領が進める「違法薬物撲滅戦争(ドラッグ・ウォー)」における人道に対する罪を徹底的に捜査することを求める声明を発表し、ICCの予備審査部に捜査の認可を申請したことを明らかにした。ベンスダ主任検察官は、ドゥテルテ大統領がダバオ市長や副市長を務めた2011年から2016年の期間も捜査対象期間にするよう求めた。アフリカのガンビア出身のベンスダ主任検察官は15日付で退任、後任には英国出身のカリム・カーン氏が就く。
─ ドゥテルテ大統領のダバオ執政期も
報道によると、ベンスダ主任検察官は予備審査部に「超法規的殺害実行者たちの犯行の手口がどれも似ていて、1988年から2016年にかけて、驚くほど類似した犯行がダバオで発生したと言われている」「その殺害は、2016年7月から2019年3月までの全国的に行われた『ドラッグ・ウォー』による殺害と類似している。両期間に関与した者たちが重なっている」と伝えた。「両期間に関与した者たち」とは当時ダバオ市長だったドゥテルテ大統領とダバオ警察署の元署長のデ・ラ・ロッサ上院議員を指しているとみられる。
─「超法規的殺害に関与した者たちを罰しない文化をつくり上げた」
また、ベンスダ主任検察官は「フィリピン全土で行われている超法規的殺害はフィリピン政府の正式な政策に従って実行されたと思われる」と指摘した。「警察官や政府関係者は超法規的殺害を計画し、命令し、時に直接手を下した。その者たちは警察官や自警団に超法規的殺害に対する報奨金を支払った。政府の最高レベルの役人たちは公然とそして繰り返し、超法規的殺害を支持する発言をした。そして、超法規的殺害に関与した者たちを罰しない文化をつくり上げた」
─ フィリピン政府は2019年に脱退
フィリピン政府は2019年、ICCがドラッグ・ウォーをめぐる予備的調査を開始したことを受けてICCから正式に脱退した。ベンスダ主任検察官はフィリピンがICCに加盟していた期間に起きた犯罪については捜査が可能だといい、「予備的調査を踏まえ、人道に対する罪である殺人が行われてきたと信じるに足る合理的な根拠がある」と指摘したという。
〈Source〉
「ICC主任検察官、フィリピン『麻薬戦争』の本格捜査求める」AFP BB, 2021年6月15日.
「ICC、フィリピンを本格捜査へ 麻薬戦争で市民殺害の疑い」時事通信, 2021年6月15日.
ICC prosecutor seeks probe into Duterte’s drug war, Davao killings, Rappler, June 14, 2021.