労働団体や人権活動家、ジャーナリストらを標的とした殺害、拉致、逮捕・勾留などの事件を、7日から10日ごとにまとめて時系列でお知らせします。事件の詳細については、出典をご覧ください。
◆2025年1月14日(火)
カラパタンは、ラグナ州サン・ペドロでビコラノ・ジェラルド・ガストール(24歳)が拉致されてから2か月が経過したこと、国軍や国家警察による作戦においてpalit-ulo(パリット・ウロ)スキームが横行していることを批難した。
パリット・ウロは、タガログ語で頭数の交換を意味し、ドゥテルテ前大統領時代のドラッグ戦争以来よく使われている当局の手口である。標的の身柄を確保できなかった場合、当局は、その親族や親戚を拉致し、標的の出頭と引き換えに拉致された親族らを解放するというもの。
2024年11月17日、ガストールは、兄弟のレオとともに公共交通機関車両から降りたところを拉致された。逃げることができたレオは、母親のジェラルディンとともに国家警察に被害届を提出した。その後、彼らは国家警察によって自宅に送られるが、その警官らによって家宅捜査されることとなった。さらに、数時間後、ジェラルディンは拉致されたガストールから電話を受け、彼の知るフィリピン共産党軍事部門新人民軍(NPA)元兵士に拉致されたと告げられた。数日後、また別の電話で、ガストールらの父親は国家警察に自首すべきであると電話口の人物から言われた。
後にガストールの家族は、父親が2024年10月にソルソゴン州のフィリピン陸軍第22歩兵大隊から複数の訴訟を起こされていることを知った。
Guerrilla fighter on medical leave kept in secret detention, rights group reveals, Bulatlat, January 14, 2025.
Robredo reveals gov’t forces use ‘palit-ulo scheme’ in drug war, INQUIRER.NET, March 15, 2017.
◆2025年1月15日(水)
1月13日、カガヤン・デ・オロで開催されたイグレシア・ニ・クリスト(INC)主催の平和のための全国集会で、地元で有名なアーティストのニコラス・アカが、大道芸を通して無言の抗議を行っていたところ、国家警察から嫌がらせを受けた。
アカは、宗教的権威に疑問を持ち、真の平和と私たちに押しつけられているものとの違いを理解するよう人びとに訴えていたと述べた。
Cagayan de Oro artist harassed while performing silent protest during Iglesia Ni Cristo rally, Bulatlat, January 15, 2025.
◆2025年1月15日(水)
憂慮する教員同盟(ACT)教員パーティリスト政党のフランス・カストロ下院議員は、拘置所管理刑務局(BJMP)が出したとされる、勾留/拘留中の「フィリピン共産党(CPP)党員容疑者」を厳重に監視するよう命じた覚書について、公式に謝罪し撤回するよう要求した。
全国人民弁護士連合(NUPL)によれば、覚書は2025年1月10日付で、被拘禁者のすべての通信、面会者とのやりとり、外部とのコミュニケーションの監視と確認、行動監視、厳格な面会者の身元調査と承認など、強権的な措置を示唆している。
この覚書は、引退したアントニオ・パルレード将軍のフェイスブックへの投稿に端を発している。パルレード元将軍はその投稿において、カストロ下院議員が自身の党派グループのために違法薬物密売人から資金を募るために刑務所を訪問していると非難した。BJMPの覚書には、このことも書かれている。
Groups condemn BJMP memo targeting alleged CPP-NPA PDLs, Philstar.com, January 13, 2025.
Press Statement: NUPL condemns grievous disinformation and affront to political prisoners’ rights in reported BJMP memorandum, Facebook page of National Union of Peoples’ Lawyers, January 12, 2025.
ACT Teachers Rep. France Castro demands apology, retraction of BJMP memo, Bulatlat, January 15, 2025.
◆2025年1月18日(土)
1月17日、土地の権利のために活動しているネグロスの社会開発団体PDGは国家人権委員会に対し、1月2日にテロ資金供与容疑で逮捕された社会開発ワーカー3人の逮捕に関する調査を行うよう要請した。
Negros-based NGO calls for CHR probe into the arrest of their workers, Bulatlat, January 18, 2025.
◆2025年1月18日(土)
上記のPDGによる申し立てと同日午前9時半ごろ、西ネグロス州カバンカラン市にあるPDGの敷地外で、バイクに2人乗りした男が確認された。
PDGのスタッフによると、後部座席の男は腰のベルトに拳銃を隠し持っていた。 PDGは声明で、「男たちは自分たちの行動について何の説明もすることなく、ただちにその場を立ち去った」と述べた。
Following arrest of development workers, PDG reports surveillance, Bulatlat, January 18, 2025.
◆2025年1月20日(月)
2024年12月12日、ラグナ州カランバ市で、40世帯の家屋が、突然、暴力的に取り壊された。
Violent demolition of urban poor community in Laguna reflects wider housing crisis, Bulatlat, January 20, 2025.
◆2025年1月21日(火)
授業料などの値上げ(TOFI)や学生に影響を与える行政方針について批判的な報道で知られるセブの学生向け出版物「Today’s Carolinian」の事務所が、事前通告なしに撤去された。
Cebu-based student publication kicked out of its campus office, Bulatlat, January 2l, 2025.
◆2025年1月21日(火)
ラ・ウニオン州アグーで、私服を着た7人の国軍兵士と想定される人物が、漁民団体TIMEK La Unionの元メンバーらに、彼らの組織に「登録」するよう強要した。7人は、漁民団体のメンバー30人が挙げられたリストをもっていた。
これに先立ち、国軍諜報員らは同地域で、TIMEK La Unionのメンバーらにバランガイ(最小自治単位)・ホールに集合するよう強要し、国軍による「援助」を受けるよう促している。
近年、漁民の権利を主張するだけで、TIMEK La Unionのメンバーらは犯罪者のように扱われてきた。
In La Union, fisherfolks forced to ‘surrender’ in exchange for ayuda, Bulatlat, January 2l, 2025.
◆2025年1月23日(木)
フィリピン国軍第80歩兵大隊と地方共産党の武装闘争を終わらせるための国家タスクフォース(NTF-ELCAC)は、「カバタアン・パルティリストのような進歩的青年組織」に赤タグを付ける一連の「リーダーシップ・セミナー」をリサール州にある大学や高校で実施した。
セミナーは、第2歩兵師団の地域情報啓発アプローチ・プログラム(CIAAP)の一環で、先週1週間にわたって実施された。
国軍はセミナーにおいて、「喚起する、組織する、動員する」といった活動家のスローガンは、若者を「怒らせ、怖がらせ」てフィリピン政府に対する武装闘争に参加するよう仕向ける戦略なのだと述べた。
また、ある大学では、国軍が大学当局に接近し、学生団体の代表に関する情報を開示するよう要請したりした。学生団体は、国軍の行為は2012年データプライバシー法に違反していると指摘した。
国軍第80歩兵大隊が、大学構内に入ったのは今回が初めてではない。 同大隊は2024年だけでも7つのキャンパスで少なくとも8回セミナーを実施した、と学生団体は報告している。
Students in Rizal province lambast Army’s red-tagging in schools, Bulatlat, January 23, 2025.