3人の政治犯、拘置所でハンガーストライキ

【写真】逮捕されたラモン・パトリアルカら/via Facebook page of HEADZ UP NegOr (posted on March 19, 2022).

【東京=18日】現在勾留中の和平交渉相談役ラモン・パトリアルカと青年活動家カルメン・ジョナヴィル・マタルロ、ジョン・マイケル・テクソンが、留置所における国軍と国家警察特殊行動部隊(SAF)によるハラスメントに抗議し、4月11日午前6時からハンガーストライキを始めた。彼らは、西ネグロス州ヒママイラン市で逮捕されたことから、「ヒママイラン3」として知られる。

 人権擁護団体カラパタンの中央ビサヤ支部によると、ヒママイラン3は2022年3月18日に逮捕・勾留されて以来、国軍とSAFから、釈放を交換条件に治安当局への「協力」を迫られるなどのハラスメントを受けている。4月6日午前2時にも、ヒママイラン3は武装したSAFの要員に眠っているところを起こされ、話しかけられた。3人がそれを無視すると、SAFは彼らに聞こえるように大きな声で「この共産党軍事部門新人民軍(NPA)には弁護士を呼ぶ権利はない」などと会話していたという。ヒママイラン3は、拘束されているうえに、国軍やSAFによる威嚇と嫌がらせを受けており極度の不安と睡眠不足に陥っていると、カラパタン中央ビサヤ支部は非難した。

― 3月18日の逮捕、食い違う言い分

 フィリピン公式ニュースサイトPNAは、2022年3月18日ヒママイラン市スアイ村で、国軍と国家警察の合同作戦において10件の殺人容疑がかけられたパトリアルカとその仲間マタルロとテクソンを逮捕したと報じた。3人の容疑は、武器不法所持(フィリピン共和国法第9561号)と包括的銃器・弾薬規制法違反(フィリピン共和国法第10591号)である。治安当局の報告によれば、NPAが活動にリクルートしているという住民からの通報が3人の逮捕につながった。ベネディクト・アレヴァロ少将は、NPAはネグロス島における兵力の損失をもはや隠せないだろうと述べた。
 他方、フィリピン民族民主戦線(NDF)ネグロス支部のスポークスパーソンは、声明において、3人は武装しておらず、広大なコファンコ家の農園がいかにして包括農地改革計画の対象から除外されてきたのか、どのような方法を使ってそれを回避してきたのか、農民の生活にいかなる影響を与えてきたのかについて詳細な調査を行うためにその地域に滞在していたと主張した。NDFによれば、この調査は、和平交渉の議題である社会経済改革に関する包括的合意(CASER)作成の一環であった。
 また、NDFは、ヒママイラン3の逮捕は「安全および免責保証に関する共同協定(JASIG)」の明白な違反にあたると非難した。JASIGにおいて、和平プロセスに関与するすべての相談役や関係者らは、逮捕、監視、作業を妨げる可能性のある行為から保護される。現在、和平交渉は停止しているが、フィリピン政府とNDFの間でJASIGの無効を合意しない限り、この協定は有効であると主張している。

― 長年にわたるハラスメント

 パトリアルカは、2009年にも反逆罪(rebellion charges)で逮捕されたが、2014年に証拠不十分で釈放された。
 マタルロは、青年活動家グループ アナックバヤンの元議長として常に監視され、2017年には、人権侵害に関する調査のために東ネグロス州バヤワン市へ赴いた際、何者かに撃たれて重傷を負った。マタルロと一緒にいたカラパタン中央ビサヤのエリサ・バダヨスと地元農民団体のエリオテリオ・モーゼスは、撃たれて死亡した。この時、マタルロを含む約30人からなる調査チームは、軍事作戦が活性化する地域で、作戦に伴って発生する国軍などによる人権侵害について調査していた。
 テクソンは、2017年に父親を銃殺されている。父アルベルト・テクソンは、東ネグロス州ギフルガン市の漁民グループ元事務局長だった。アルベルトは、長年にわたり国家警察などからハラスメントを受けてきた。殺害された日の午前中、国軍がアルベルトを探していたという証言がある。

〈補足〉
 全国砂糖労働者連盟(NFSW)によれば、前述のコファンコ家は、ネグロス島に5000ヘクタール以上の土地を所有する。この数値は、2018年11月に殺害されたベンヤミン・ラモス弁護士がフィリピン土地管理局や農地改革省などから得た情報を集約したものである。ネグロスでは、土地紛争をかかえる農場労働者をサポートする弁護士は、ラモス弁護士だけだった。
 コファンコ家を今日のフィリピンでもっとも裕福な実業家一家にのし上げたのは、ダンディン・コファンコである。『フィリピンを乗っ取った男』の著者アール・G・パレ―ニョによれば、ダンディンは、フェルディナンド・マルコス元大統領との結びつきによって一介の地方政治家からココナツ王、さらにはフィリピンの最重要企業とされるサンミゲル社の最高責任者になった人物である。タルラック州出身でネグロス島には縁のなかったダンディンが、いま、5000ヘクタール以上の土地を同島に所有する。

〈Source〉
Arrest of peace consultant, activists in Himamaylan denounced, Nationa Democratic Front Negros Island, March 19, 2022.
Elisa Badayos Killed, FRONT LINE DEFENDERS, December 1, 2017.
Facebook page of Karapatan – Central Visayas, April 11, 2022.
NPA leader, 2 comrades fall in southern Negros, PHILIPPINE NEWS AGENCY, March 19, 2022.
Political prisoners protest against continued detention, BULATLAT, June 1, 2012.
アール・G・パレ―ニョ, 2005, 『フィリピンを乗っ取った男』太田出版.

美しい国フィリピンの「悪夢」

フィリピン政府が行っている合法的な殺人とは?

詳しく見る

最新情報をチェックしよう!
>ひとりの微力が大きな力になる。

ひとりの微力が大きな力になる。


一人ひとりの力は小さいかもしれないけれど、
たくさんの力が集まればきっと世界は変えられる。
あなたも世界を変える一員として
私たちに力を貸していただけないでしょうか?

Painting:Maria Sol Taule, Human Rights Lawyer and Visual Artist

寄付する(白)