2022年フィリピン大統領選挙キャンペーン始まる

【写真】4人の候補者たち。左から「ボンボン」マルコス、レニー・ロブレド、イスコ・モレノ、マニー・パッキャオ/via Philippines 2022 Presidential Election Candidates, ASEAN Analytics, January 28, 2022. https://www.youtube.com/watch?v=7ngrNFpbWyM

【東京=16日】2月8日、2022年総選挙の選挙活動が解禁された。既に何度も実施されている世論調査で、常に大差をつけてトップを走り続けているフェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニア(以下、「ボンボン」マルコス)元上院議員。その後を、レニー・ロブレド副大統領、イスコ・モレノ マニラ市長、元ボクシング世界チャンピオンのマニー・パッキャオ上院議員が追う。

― フィリピンを一つに! 世論調査で独走するマルコス

 独裁者マルコス大統領の政策を息子として支えていた、マルコス遺産を未だ隠し持っている、脱税の経歴により立候補資格はない等、数多くの強力な批判が絶えず投げかけられているにも関わらず、フェルディナンド「ボンボン」マルコス元上院議員と副大統領候補のサラ・ドゥテルテ ダバオ市長による元大統領の長男―現大統領の長女のタッグは、これまでの世論調査を見る限り、圧倒的多数の支持を集めている。今年1月に実施されたパルス・アジア世論調査で「ボンボン」マルコス元上院議員の支持率は60%に達し、12月の調査の53%から大きく数値を上げた。副大統領選の支持でもサラ ダバオ市長が先月より5%上げて支持率50%に達した。
 キャンペーン解禁の8日、マニラで「ボンボン」マルコス元上院議員とサラ ダバオ市長が共に立ち、「フィリピンを一つにする」と詰めかけた支持者に語った。マルコスーサラ陣営は、15日にブラカン市にあるフィリピン最大の屋内会場から全国キャンペーンを開始する。
 また、今月10日、選挙管理委員会は、「ボンボン」マルコスの脱税判決にまつわる審査において資格取消しの請求を退けたと発表した。このことで「ボンボン」マルコスにとって大統領選の最大の懸念の一つが取り払われたことになった。

― エコノミストと法律家を味方につけるロブレド

 12月の世論調査で、20%から16%に支持率を落としたものの、未だ2位を走るのは、レニー・ロブレド副大統領である。副大統領の立場にありながらもドゥテルテ大統領の非人道的、独裁的な政治と「ボンボン」マルコスによる独裁政治復権を強力に批判してきたロブレド副大統領は、2月12日にバターン州バランガ市のバランガ大聖堂のバルコニーに立った。ピンク色のTシャツや小旗でロブレドの支持を示す支持者たちに向かい、ロブレド副大統領は、5月の選挙がその後6年間の政治のタイプを決める非常に重要なものであると訴えた。
 独裁政治への批判が目立つロブレド副大統領ではあるが、法学と経済学を修めた経歴に支えられた彼女の政治経済的な構想は、多くの有力かつ著名な経済および法律の専門家からの支持を集めている。今月11日、この時点で既に160人以上のエコノミストが名を連ねた組織「レニーのためのエコノミスト」は、積極的で腐敗のない政府を作り出すことを方針とするロブレド副大統領を支持する声明を発表した。声明では、ロブレドの経済学と法学における「確固とした」経歴に触れ、その専門的な知見が「経済回復を加速するための政策立案に必要」であることを強調している。また、同声明は、ロブレド副大統領の貧困者への「真の懸念」を称賛するとともに、ロブレドの提唱するグッドガバナンスのブランドが、健康と経済において現在フィリピンが直面している二つの危機から回復するための解毒剤であると主張している。

― ドゥテルテ政策を色濃く継ぐモレノ

 先月と同じ世論調査8%で3位につけるのは、フィリピン最大のスラム、トンド地区出身で人気俳優を経てマニラ市長なったイスコ・モレノ氏である。モレノ マニラ市長は、ユニークな経歴に加味された市長としての貧困や腐敗、犯罪に対する強力なリーダーシップで人気を誇る。コロナ禍で停滞するドゥテルテ大統領の大規模開発計画やドラッグ戦争の継承を主張し、また、ドゥテルテ大統領への批判から距離を置く姿勢から、ドゥテルテの政策的な後継者ともみなされている。
 ドゥテルテ大統領の再選やサラ氏の大統領出馬の最大の支持者としてPDP-Laban党の取りまとめをおこなってきた党代表のボン・ゴー上院議員は、一度はドゥテルテの説得によって大統領候補として立候補したものの、その後に出馬を取り消した。イスコ陣営によると、ゴー上院議員を支持していた政治家の一部がイスコ支持に回っている。なお、ドゥテルテ大統領は、どの大統領候補者に対しても支持を表明していない。
 モレノ マニラ市長は、人気の衰えない「ボンボン」マルコスをターゲットとし、パッキャオ上院議員と組んでマルコスの強力な支持基盤であるミンンダナオ(パッキャオ上院議員)とマニラ(モレノ マニラ市長)で同時集会を開催することを決定した。モレノ陣営は、「ボンボン」マルコス元上院議員のテレビ出演機会の低さを指摘し、今後、「ボンボン」マルコス元上院議員の支持率が低下する可能性は十分にあると主張している。

― 汚職と貧困に対して共に闘うパッキャオ

 ボクシング世界チャンピオン獲得の後、政治家に転身して昨年後半にはフィリピンで最も影響力のある上院議員の地位に上りつめたマニー・パッキャオ上院議員は、モレノ市長と同様に先月今月ともに8%の支持率を獲得した。パッキャオ上院議員は、「ボンボン」マルコスおよびドゥテルテ大統領への強力な批判を継続的に行い、その批判の中で、過去に遡った汚職の追求、汚職と貧困の撲滅、中国の領海侵犯に対する強硬な対決姿勢を軸に、政策公約として2021年8月に公開した22ラウンド・アジェンダを強調する。他方、同性婚反対も再度主張しており、この点への批判も根強い。
 パッキャオ上院議員は、モレノ マニラ市長のキャンペーンと足並みを揃えて地元ジェネラルサントスからミンダナオでの「ボンボン」マルコス票の切り取りをも視野に入れたキャンペーンを開始する。

〈Source〉
Bongbong Marcos – Sara Duterte tandem set to kick off campaign at Philippine Arena, Inquirer, February 7, 2022.
Comelec division junks disqualification suits vs Marcos, philstar, February 10, 2022.
Duterte supporters now backing Isko Moreno candidacy, Inquirer, February 10, 2022.
Isko Moreno, Pacquiao eyeing Marcos’ turf – analyst, philstar, February 10, 2022.
Marcos Jr. sustains lead in January 2022 Pulse Asia poll, Rappler, February 13, 2022.
Over 160 economists, including 5 ex-NEDA chiefs, back Robredo for president, Rappler, February 11, 2022.
Pacquiao gets in his biggest fight yet, the one for president, philstar, February 8, 2022.
Pacquiao shares ’22 round priority agenda’ for PH | TFC News California, USA, Youtube, August 27, 2021.
Robredo: Election is about choosing the type of politics in next 6 years, Inquirer, February 12, 2022.

あなたは知っていますか?

日本に送られてくるバナナの生産者たちが
私たちのために1日16時間も働いていることを

詳しく見る

最新情報をチェックしよう!
>ひとりの微力が大きな力になる。

ひとりの微力が大きな力になる。


一人ひとりの力は小さいかもしれないけれど、
たくさんの力が集まればきっと世界は変えられる。
あなたも世界を変える一員として
私たちに力を貸していただけないでしょうか?

Painting:Maria Sol Taule, Human Rights Lawyer and Visual Artist

寄付する(白)