【9日=東京】フィリピンの独立機関、人権委員会広報官のジャクリーン・デ・ギア弁護士が、ドゥテルテ政権では、これまでの過去の政権に比べて、警察官による権利侵害が多発している、との認識を明らかにした。3日に放送されたフィリピンの放送局ABS-CBNのニュースチャンネルANCでのインタビューで答えた。その多さをデ・ギア氏は「比べ物にならないほど(incomparable)」と表現した。現地の有力メディア、フィルスターなども報じた。
─「3300件を徹底調査中」
デ・ギア氏はインタビューで、「私たちはほれほどまでの数の事件を取り扱ったことはない」と述べた。その上で、人権委員会は現在、弁護士やジャーナリスト、人権アクティビストが絡む3300件の超法規的殺害の案件を徹底的に調べていることを明かした。
ドゥテルテ政権発足の2016年以降、「ドラッグ(違法薬物)撲滅戦争」を名目にした超法規的殺害は国内外の人権NGOの調べでは約3万人とも言われている。このほかにも、デ・ギア氏が指摘したように、弁護士やジャーナリスト、人権アクティビストらも狙った殺害も400人近くに達しているという。犯人は不明なケースが多いが、いずれも政権を批判する人たちだったことから、政治的殺害だとみられている。
──「ドゥテルテ大統領が有権者や政府関係者に強い影響」
デ・ギア氏は、悪化する人権状況に最高責任者であるドゥテルテ大統領自身がある役割を担っているのではないかと尋ねられたデ・ギア氏は「ドゥテルテ大統領はこの国で最も影響力を持つ役人だ。その者の発する言葉は重要だ。我々は繰り返し、彼が有権者や政府関係者に強い影響を与えていると言い続けている」と語った。
人権委は独立機関で、1987年憲法に基づいて設置された。「独立性」「多元性」「広範な職務権限」「透明性」「アクセス可能性」「運営効率」を基本原則としている。1995年に国連総会で採択された「国内機構の地位に関する原則(パリ原則)」を完全に遵守する団体として国連が認定しているという。
〈Source〉
CHR says Duterte admin’s rights violations ‘incomparable’ to previous terms, Philstar, June 3, 2021.