【16日=東京】2020年以降ジャーナリストへの攻撃が急増していることが、フィリピンのジャーナリストの全国組織、ジャーナリスト連合(NUJP)の調べでわかった。名誉毀損で訴えられたのが20件、脅迫が22件、殺害も4件あった。脅迫は2020年3月以降、43%増加したという。
下院議会がフィリピン最大のテレビ局ABS-CBNの放送免許の更新に反対して放送停止を決定して1年が経った10日、ジャーナリスト連合が声明を発表し、明らかにした。
─「共産主義者」のレッテル貼り
ドゥテルテ大統領が就任した2016年以降ではジャーナリスト連合が把握しているだけで51件の脅迫事件がのうち30件は、政府側が政府を批判するジャーナリストを「共産主義者」のレッテルを貼ったことが関係しているという。
大統領府は「下院が決定したことだ」として、放送免許不更新の動きへの関与を否定しているが、ドゥテルテ大統領は2019年に「あなたがここから出ていくのを見届ける」と発言するなど、ABS-CBNを敵視する発言をしていた。放送免許を更新に反対票を投じた下院議員の名前は今も公表されていない。
ジャーナリスト連合は声明で「ABS-CBNへの攻撃は、小さなメディアや、ニュースルームを持たないジャーナリストへの攻撃を誘引することになる」「(今日の声明は)メディアへの攻撃を止め、プレスの自由と民主主義を守るためのより広範な呼びかけの一つである」としている。大手のメディア企業だけでなく、インクワイアラーやラップラー、オルタナティブ・メディアといった独立系のネット・メディアにも政権側から攻撃が続いているという。
─ 今年5月にも殺害事件
今年に入ってもジャーナリストの殺害が発生し、5月2日にはパナイ島カピス州ロハス市で、ジャーナリスト連合カピス州支部の元支部長、ジョン・ヘレディア氏が殺害された。ドゥテルテ大統領の就任以降、昨年末現在でジャーナリストの殺害は19人に上っている。
ジャーナリスト連合はハッシュタグ #IbalikAngABSCBN でプレスの自由を守る取り組みをしている。
〈Source〉
Masked Gunmen Kill Capiz Town Administrator, The inquire, May 2, 2021.
[Statement] #IbalikAngABSCBN: The fight Goes On, National Union of Journalists of the Philippines (NUJP), July 10, 2021.
ホセ・ハイメ・エスピナ, 2021, 「19人のジャーナリストが殺害 増加する『自己規制』」『世界』岩波書店, 944:266.