栗田英幸(愛媛大学)
SNSでバレた? シンガポールでのマルコス一家のF1観戦
フェルディナンド・マルコス・ジュニア(以下、マルコス・ジュニア)大統領がシンガポールでF1を観戦していた!
今週は、SNN拡散で発覚したマルコス・ジュニア大統領の週末のシンガポールF1観戦についての記事が国内外で数多く掲載されました。公務ではない休暇扱いとして、国民に公表する必要はないとマラカニアンは考えていたのかもしれません。しかし、同じF1を観戦していた観客やシンガポール高官のSNN投稿によってマルコス・ジュニア大統領のF1観戦のニュースは瞬く間にフィリピン国内にも広がり、そして、強い批判に晒されることになりました。遅ればせながら、10月3日夜に本人およびマラカニアンはF1観戦を認めると同時に、それがフィリピンの国益にもつながるものであったとの「言い訳?」を公表しました。今回は、F1観戦をめぐる記事の紹介・解説を行います。
◆今週のトピックス
― シンガポールでF1観戦していた行方不明の大統領
メディアがマルコス・ジュニア大統領の所在を見失った先週末、シンガポールでF1グランプリを観戦しているマルコス・ジュニア大統領の目撃報告が多くのSNSで報告された。その後、マラカニアンやマルコス・ジュニア大統領自身のSNSを通して、週末のシンガポール訪問に関して報告がなされた。
「皆は事業拡大にはゴルフが良いというが、私にとって、それはF1だ」
「何人もの高官とともに招待され、フィリピンに投資する準備と意欲のあるビジネス仲間に出会えたのは充実したことだった」
「何と生産的な週末だったことか」
マルコス・ジュニア大統領は、自身のインスタグラムで上記のように語り、F1観戦がフィリピンのビジネス外交のためであったとを表明した。
また、マラカニアンもトリクシー・クルス-アンヘレス報道官を通して「シンガポール訪問は非常に生産的であった」と語り、シンガポール人材開発省大臣であるタン・シーレンの投稿した写真を共有した。また、リー・シェンロン首相もマルコス・ジュニア大統領夫妻を含んだ人たちの写真を自身のフェイスブックに上げて「国内外の友人と再び繋がり、レースを観戦し、楽しい時間を過ごすことができて幸せです」とのキャプションを書き込んでいる。
◆今週のトピックス解説
― F1レース観戦の何が問題なのか?
マルコス・ジュニア大統領は以前よりシンガポールとの外交に高い優先順位を置いており、フィリピン政府公式の報告を読む限り今回の外遊はその一貫であるに過ぎないようにも見えます。また、近年は国家元首の休暇について、かなり肯定的な意見が強くなっているようにも感じます。しかし、国外も含め多くのメディアがマルコス・ジュニア大統領の今回の外遊に批判的なコメントを掲載しています。それでは、何が問題だったのでしょうか?
バヤン政治連合レナト・レイエスは、「国家が直面する危機を考えると、無神経・不必要・無責任であると断言する」「このことを理解していないのは全く無神経で恥知らずな人たちだけだ」と声明で語っています。また、労働団体5月1日運動(KMU)も今回の外遊がハイパーインフレと低賃金に苦しむ労働者や最近の台風被害者に対する侮辱であると発表しました。
実際、マルコス・ジュニア大統領にとって、今回は大統領選に勝利してから早3度目のシンガポール訪問でした。加えて、食糧危機への国民の危機感を煽っていることに加え、ハイパーインフレや未だ大勢の台風避難民が帰宅できずにいる最中に妻と2人の息子を伴い、軍用機を利用した1泊のF1観戦「旅行」は、タイミングが悪すぎました。未だ、シンガポールでの外遊の「生産的」成果について具体的に語られていませんが、それは、軍用機を利用し、軍用機を含めたマルコス・ジュニア一行の1泊の高額な支出を賄うに足りるものであったのでしょうか? 今後の具体的な説明(言い訳?)に注目が集まっています。
〈Source〉
Critics slam Marcos’ F1 weekend ‘junket’ to Singapore, Inquirer, October 3, 2022.
‘Insensitive and shameless’ | Groups question Marcos Jr. F1 Grand Prix trip, Bulatlat, October 3, 2022.
Marcos Jnr facing criticism for Singapore F1 trip as Philippines reels from recent typhoon, South China Morning Post, October 4, 2022.
Marcos trip to watch Singapore F1 races sparks criticism, Asahi Shimbun, October 4, 2022.
The lesser evil, Philstar, October 5, 2022.