あと25日! フィリピン大統領選挙への主要候補のラストスパート

Hirap(困難とか苦痛とか貧しさを示すフィリピノ語)を利用したポスター。写真右上からロブレド(貧困層の仲間)、右下パッキャオ(困難への挑戦者)、左上モレノ(貧困出身)、左下「ボンボン」マルコス(税金を払わない)。ロブレドを支持する陣営で共有された。/via https://www.facebook.com/photo/?fbid=161096609624149&set=a.122405630159914

【東京=15日】フィリピンの進路を決める大統領選挙投票日まで1ヶ月を切った。大方の予想において、次期大統領は次の3人に絞られている。世論調査でトップを走り続けるフェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニア(以下、「ボンボン」マルコス/元上院議員)が逃げ切るのか、最後に差を縮めてきたレニ・ロブレド(副大統領)が抜き去るのか、それとも、イスコ・モレノ(マニラ市長)が大逆転劇を見せるのか、最後まで目の離せない攻防が続く。

― 2月と3月の世論調査

 4月6日、パルス・アジアによる3月の世論調査の結果が報告された。これまで常にトップを占めてきた「ボンボン」マルコスは、ダントツトップの座を守りつつも、3月の支持率は2月の60%から56%へと4ポイント減少させた。逆に、2位のロブレドは、15%(2月)から24%(3月)へと大幅な支持率のアップを果たした。他方、モレノは10%(2月)から8%(3月)へと後退した。
 投票日が近づくにつれ、勝ち目のなくなった候補者やその支持組織・個人の動向や浮動票の取り込みに注目が集まっている。

― 「ボンボン」マルコス:未だ継続中の資格審査とフェイクニュース

 「ボンボン」マルコスへの立候補資格審査が「不当な遅延」であるとの提訴が選挙委員会に対してなされた後、ジョージ・ガルシア選挙委員会委員長は、「早ければ今週(4月2週)、あるいは、第3週に決定を下すことができる」と語った。
 「ボンボン」マルコス陣営は、自分に対して行われている全ての訴訟が「政治的刺客」によってなされた「政治的なゴミ屑」であると繰り返し主張している。
 また、「ボンボン」マルコスが積極的に利用していると噂されるフェイク・ニュースに関して、新たな出来事が注目されている。今週、新たにロブレドの選挙活動を助ける彼女の長女アイカがターゲットにされ、ロブレドのイメージを貶めるような情報がSNSを通じてフィリピン全国に拡散されたのである。それに対して、4月13日、ロブレド陣営から「ボンボン」マルコスへの批判声明が発表された。ロブレド陣営によれば、「ボンボン」マルコスは2016年の副大統領戦の敗北後からフェイクニュースを利用してロブレドを攻撃してきているため、フェイク・ニュースでアイカを攻撃した悪意ある戦略を「驚くことではない」としながら、「もし、そのような攻撃から(ロブレド陣営が)学んだことを挙げるならば、それは、真実は何ものにも置き換えることができないということであり、最後の日(投票日)に人びとは何が真実なのかを選ぶこととなる」と記者たちに告げた。

― ロブレド:潮目が変わった

 ロブレド陣営は、最近、多くの地方政府関係者からの支持を取り付け、また戸別訪問に力を入れている。ロブレドのスポークスパーソンであるバリー・グティエレスは、最新の世論調査の結果が現場での変化を反映し始めている点を強調している。「ロブレドには勢いがあり、それが5月9日(大統領選挙日)に向けてさらに強まり、加速していくと思われる。私たちが今見ているのは、潮の変わり目なのだ」とグティエレスは声明で述べている。
 対マルコスの最有力候補としての評価をほぼ固めたロブレドではあるが、他の反マルコス陣営をロブレドの下で取りまとめるための積極的な活動について何度も否定している。4月11日のCNNフィリピンの取材に対して、グティエレスは、ラクソン上院議員から出ている情報が根拠のないものであり、選挙パートナーである副大統領(候補)のキコ・パンギリナン上院議員の変更はあり得ないと答えた。ラクソン上院議員は、副大統領候補を別の陣営から引き抜くことで他陣営の取り込みをロブレド陣営が図っていると公言しており、グティエレスはその噂をキッパリと否定した。

―モレノ:崩れる支持基盤

 4月12日、全国的な規模を有するモレノ候補支援組織イカウ・ムナ(IM)のティム・オルボス元運輸次官は、エルマー・アルガーニョ事務局長と共にIMレニ(IMを「I’m」とかけた)と書かれたポスターを掲げ、IMがモレノ候補からロブレド候補に鞍替えしたことを記者の前で発表した。既に、その前の週にIMサンボアンガ支部とビサヤ支部はロブレド支持への鞍替えを表明していた。IMは、全国に80万人の会員を有し、モレノ陣営を支持するボランティアの中でも非常に活動的な組織である。
 モレノ陣営は、市場調査会社が4月4日から6日にかけて実施したパルス・アジアとは異なる調査において、モレノが「ボンボン」マルコスに次いで2位につけていることを挙げ(3位はロブレド)、モレノが最大のマルコスの選挙ライバルであること、モレノの大統領選からの撤退がマルコスの票を増大させることを主張した。さらに、ロブレドではなくモレノこそがマルコスを倒し得る候補者であるとアピールし、モレノの下に反マルコス陣営が結束するよう呼びかけている。

〈Source〉
Comelec to decide on Marcos disqualification case ‘this week at earliest’: exec, ABS-CBN, April 11, 2022.
February 2022 Nationwide Survey on the May 2022 Elections, Pulse Asia Research Inc., March 2022.
‘Isko’s withdrawal will hurt Leni’, Inquirer, April 9, 2022.
March 2022 Nationwide Survey on the May 2022 Elections, Pulse Asia Research Inc., April 2022.
One of Isko Moreno’s volunteer groups defects to Robredo, Rappler, April 12, 2022.
Pulse Asia: Marcos keeps lead, but Robredo narrows gap, Inquirer, April 7, 2022.
Robredo camp denies active efforts to unite candidates, CNN Philippines, April 11, 2022.
Robredo vows legal action for attack vs daughter, philstar, April 13, 2022.
Robredo gains on Marcos in Philippine presidential race, NIKKEI Asia, April 6, 2022.

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