憲法改正手続きの泥沼的攻防/議会侮辱罪に問われるキボロイ/続く開発暴力
憲法改正手続きの泥沼的攻防
― ほとんど同じだが相入れない1つの相違
上下両院において、憲法の経済条項を修正するための両院決議法案が審議されている。上院では両院決議第6号法案(RBH6)、下院では両院決議第7号法案(RBH7)が、それぞれ提出・審議されているが、内容は一点を除きほぼ同一だ。
相違点は、次の憲法改正手続きにおいてである。上院のRBH6では、上院と下院が別途議決をとり、それぞれの4分の3の賛成を経て憲法改正が認められるが、下院のRBH7は、上院と下院が一堂に会して、両院議員全体の4分の3の賛成を経れば憲法改正が認められるというものとなっている。
1987年憲法では、憲法改正に4分の3以上の議員の賛成が必要と記されているが、これまでもその解釈を巡って対立があった。上院は、そもそも二院制を前提とした憲法であるから、それぞれの議会で4分の3の賛成を経る必要があると主張するのに対して、下院は憲法が全ての議員としか記していないので、両議院全体の4分の3の賛成が憲法改正の条件であると主張してきており、その決着がついていない。
― RBH7下院議会を通過
3月20日、下院議会はRBH7を、最終読会を経て承認した。一部下院議員は、最終的な憲法改正の手続きが選挙管理委員会(COMELEC)に委ねられることから、RBH7を上院議会ではなくCOMELECに直接送るべき(上院の決議を経る必要はない)と主張しており、上院議会からは、二院制の無視であるとして強い反発を受けていた。下院議会が、下院で可決されたRBH7をCOMELECと上院のどちらに送るかが注目されていたが、下院議長はRBH7を上院に送る命令に署名した。
議会侮辱罪に問われるキボロイ
― キボロイ陣営の欠席理由
新興宗教「イエス・キリストの王国」のアポロ・キボロイ教祖の陣営は3月15日、彼の上院公聴会欠席の理由として、上院が彼を逮捕すべきではないとする理由書を上院に提出した。
19ページに及ぶ文書の中で、キボロイの弁護士メラニオ・エルビス・バラヤンは、調査は「立法を助けるものではなく、上院の権限を超えた司法機能の簒奪に等しい」と主張した。バラヤンは、調査を求める決議が「図々しく有罪を宣告するもの」であり、「合理的な疑いを超えて有罪が証明されるまでは無罪である(推定無罪)という憲法上の推定を完全に無視して、キボロイ師を断定的に有罪であると宣言している」と付け加えた。
バラヤンは、さらに、公聴会欠席が「上院に対する侮辱でも、その権限と機能を無視したものではなく、純粋に彼(キボロイ)に対する刑事告発は管轄裁判所においてのみ合法的に解決できるという事実に基づくものである」と説明した。
― 逮捕状に署名する上院議長
キボロイ陣営の理由書を受け、ミゲル・ズビリ上院議長は、キボロイに対する逮捕状に署名した。これは、19日の上院の女性、子ども、家族関係、男女平等に関する委員会が、理由書の内容を公聴会欠席の適切な理由として認めなかったことを受けたものである。
同委員会のリサ・ホンティベロス委員長は、キボロイ陣営の提示した理由について、キボロイの逮捕は犯罪容疑ではなく上院召喚の拒否によるものであり、また、上院は法廷ではないために「有罪か無罪かを判断する」ことはできないと語った。
― 放送免許取り消し
一方、下院議会で調査されていたキボロイが所有するメディアSMNIの放送免許に関しては、3月20日の下院議会でそれを取り消す法案が可決された。この法案も、憲法改正法案RBH7と同様に、上院に即座に送られることとなった。
続く開発暴力
― アンヘレス市の強制立ち退き
クラークヒルズ・プロパティ・コーポレーション(クラークヒルズ社)が所有権を主張しているアンヘレス市内73ヘクタールの係争地で、3月12日に住宅の暴力的な取り壊しが行われた後、この都市のシティオ・バルバドの住民少なくとも2000人が過去4日間に避難を余儀なくされた。
アンヘレス市の集計によると、少なくとも2000人の住民または535世帯が、3月15日までに荷物をまとめて家を出るよう命じられた。取り壊し当日、解体グループと解体に反対する住民たちの間で衝突が生じ、解体グループからの発砲を含んだ暴力的行為により少なくとも7人の怪我人が出たと言われている。住民支援グループによると発砲は警察とクラークヒルズ社のガードマン、同社の雇う武装集団によってなされた。
パンパンガ第1地区選出の下院議員カルメロ・ラザティン2世は、暴力を伴う立ち退きの報告を受け、3月13日、下院決議第1645号を提出し、下院に対して、立法支援として、暴力的破壊と報告された銃撃を非難し、調査するよう求めた。
― 国際河川行動デーに合わせた巨大ダム抗議活動
3月14日、国際河川行動デーに合わせ、先住民族権利と環境保護の活動家らが環境天然資源省(DENR)前で破壊的な巨大ダムと水力発電プロジェクトの建設を非難する抗議活動を行った。
カリカサン環境民衆ネットワーク(PNE)は、マルコス政権が、カリワ・カナン・ライバン・ダム、ワワ・ダム、アフナン水力発電プロジェクト、ジャロール・メガ・ダム、サルタン・ダム、パシグ川高速道路などの環境や住民に深刻なリスクを与える大規模プロジェクトを依然として許可していると述べた。
また、先住民族連合カトリブは、「巨大ダムは生態系の微妙なバランスと、生計をこれらの川に依存している地域社会の存続そのものを脅かしている」とし、これらのプロジェクトはしばしば、先住民族の権利として認められている「先住民族コミュニティの自由意志による事前の十分な情報に基づく同意(FPIC)」の違反と、これらのコミュニティの軍事化をもたらすと語った。
― 被害が起こった後も操業続く金鉱山
2月6日に悲惨な地滑りが生じたダバオ・デ・オロ州マコで金鉱山を運営する会社アペックス・マイニングは、環境保護団体からの抗議にもかかわらず、この悪条件の地域に留まるつもりであり、操業を停止する計画はないと述べた。
3月12日、下院公聴会でアペックス社CEOのルイス・サルミエントは、「最近の地滑りは私たちの回復力を試したが、同時にホスト国と(影響を受けた)バランガイ(最小自治単位)が自然の脅威に対してより良い安全地帯を築くのを支援するという私たちの取り組みを強化した」と語った。
この鉱山地区で生じた地滑りは、少なくとも9人の鉱山労働者を含む98人の住民の命を奪った。環境団体は地滑りが鉱山活動によって誘発されたとして、その調査を要求している。
〈Source〉
Angara rejects suggestion to directly transmit RBH 7 to Comelec, Inquirer, March 18, 2024.
APEX to continue mining operations in Davao de Oro despite landslide, protests, Rappler, March 13, 2024.
At least 2,000 residents in Angeles City flee after violent demolition, Rappler, March 16, 2024.
House promptly forwards RBH 7, SMNI franchise revocation bill to Senate, Manila Bulletin, March 21, 2024.
KARAPATAN denounces violent demolition in Angeles City, KARAPATAN, March 14, 2024.
Quiboloy camp responds to Senate show cause, explains why he should not be arrested, ABS-CBN, March 15, 2024.
Senate issues arrest order vs Quiboloy, philstar, March 19, 2024.
True to the timeline: House eyes final approval of RBH 7 this week, Manila Bulletin, March 17, 2024.