2022年10月6日に西ネグロス州ヒママイラン市で発生したフィリピン国軍とフィリピン共産党軍事部門新人民軍(NPA)との遭遇戦を契機に、国軍が同市や東ネグロス州ギフルガン市における作戦を活発化させた。メディアによる取材が制限されている中、人権団体カラパタン・ネグロスが現場の状況を伝えているので紹介する。
※情報ソースの記載がない箇所は、カラパタン・ネグロスからの情報である。
― ヒママイラン市での遭遇戦を契機に榴弾砲やヘリコプターからの攻撃
国営フィリピン通信社(PNA)やその他のメディアが報じているように、10月6日午前6時、ヒママイラン市カラバラン村で第94歩兵大隊とNPAの遭遇戦が発生した。カラパタン・ネグロスによれば、午後3時に再度、遭遇戦が発生し、国軍は榴弾砲や迫撃砲を使って約8回砲撃した。同日、7人の農民が逮捕され3日間にわたり拘束されたうえに拷問され、住民は「避難は強制ではないと国軍に言われたが、7人が連れ去られたのを知って恐ろしくなり避難した」と述べた。
10月7日、再度、遭遇戦が発生。国軍は、105ミリ榴弾砲や迫撃砲で爆撃すると同時に、前日に遭遇戦が発生した地域から近隣の村に至る範囲の川やサトウキビ畑、森などをブローニングM20重機関銃でヘリコプターから無差別に銃撃した。攻撃は翌日まで続いた。この日までに国軍兵士2人が殺害され、6人が負傷したと国軍が認めた。
― 避難民は一時1万8000人に
住民は避難を試みたが、国軍は検問所を設置し住民に対し身分証明書の提示を求めた。避難所でも時々、身分証明書の提示を求められ、誰ひとり自由に出入りすることはできない。ウェブニュースサイト・ラップラーによれば、子どもの人権やプライバシーなどを理由にメディアによる取材も制限され、そのうえ、取材は避難所の管理者が選別した相手に対して決められた場所で実施することになっている。
10月9日になると、国軍は、一週間のロックダウンを宣言し、指示された地域へ避難するよう住民に指示。避難民はさらに増加した。翌10日までに避難民は1万5000人以上に上り、その数は1万8000人に達した。
PNAによると、15日に、ヒママイラン市長は、1万8000人の避難民のうち3500人がまだ避難所に残っていると明らかにし、さらに、16日、もっとも戦闘が激しかった村からの避難民も帰宅した。
すでに自宅へ戻った住民らは、家畜が殺された、家の中を荒らされたとカラパタン・ネグロスへ報告している。
― NPAの司令官殺害、東ネグロス州ギフルガン市でも遭遇戦
ロックダウン開始後の10日、ネグロス島と中部ビサヤ地方で活動するNPAのフアニト・マグバヌア地域作戦司令官が殺害された。PNAは、第94歩兵大隊とNPAとの遭遇戦ののちにマグバヌア司令官は殺害され、彼の死は指導者の空白を生み、反乱軍の士気を低下させるだろうと報じた。一方、カラパタン・ネグロスは、「遭遇戦はなかった」、「マグバヌアは高血圧と関節炎のために戦える状況にはなく、農民宅に避難していた」というNPA側の主張を報告している。
PNAによれば、10月12日には、東ネグロス州ギフルガン市にある山間の村でも、捜索を続ける国軍第62歩兵大隊とNPAとの間に遭遇戦が発生し、反乱軍は二手に分かれて逃げた。第3歩兵師団司令官ベネディクト・アレバロ少将は、ネグロス島の陸軍部隊に対して、NPAは疲弊し、また、弾薬を使い果たしたと述べ、追跡を続けるように命じた。
また、PNAによると、アレバロ少将は声明の中で、ヒママイラン市において「軍事封鎖」が実行されているといったカラパタン・ネグロスの主張を退けた。同少将は、こういった主張はテロ活動からヒママイランを守るための国軍の努力を妨害する行為であり、検問所の設置などは国軍や国家警察の通常の手順であると述べた。
ちなみに、2022年9月21日に、マニラ地方裁判所は、フィリピン共産党(CPP)とNPAをテロリストとして宣言することを求める司法省による訴訟を棄却した。マルロ・マグドサ・マラガー裁判長によって書かれた135ページの判決文で、マニラ地方裁判所第19支部は、CPP-NPAのプログラムを読めば、テロに従事することを目的とした組織ではないことがわかると述べた。
〈Source〉
AFP sees demoralization among Reds with death of ranking leader, Philippine News Agency, October 11, 2022.
AFP sees demoralization among Reds with death of ranking leader, Philippine News Agency, October 11, 2022.
𝗗𝗘𝗙𝗘𝗡𝗗 𝗛𝗜𝗠𝗔𝗠𝗔𝗬𝗟𝗔𝗡! 𝗦𝗧𝗔𝗡𝗗 𝗪𝗜𝗧𝗛 𝗛𝗜𝗠𝗔𝗠𝗔𝗬𝗟𝗔𝗡!, Facebook page of Karapatan Negros, October 11, 2022.
Military ops in Negros intensifies, Manila Times, October 15, 2022.
Negros residents displaced by military-NPA clashes return home, Philippine News Agency, October 16, 2022.
Strict protocols enforced at Himamaylan evacuation centers, Rappler, October 14, 2022.
Soldiers clash with NPAs in Negros Oriental, Philippine News Agency, October 14, 2022.