エドサ革命の精神を再び!
歪曲された歴史情報を正すことができるのか?

【写真】エドサ革命の歪曲された認識を修正する市民組織イベントポスターの一部/via Facebook page of BAYAN - Bagong Alyansang Makabayan (posted on February 18, 2022)

【東京=2日】2月25日にエドサ革命記念日を迎え、全国各地でエドサ革命に紐づけられた祝典や催しが開催された。カトリック教会や次期選挙立候補者らもエドサ革命記念日にあわせて自らの意見を表明するなか、ドゥテルテ大統領とマルコス元大統領の長男ベルディナンド・「ボンボン」マルコス(「ボンボン」マルコス)元上院議員は沈黙に徹している。

― エドサ革命記念行事を実施する市民組織

 昨年ノーベル平和賞を獲得したマリア・レッサが代表を務めるウェブジャーナル・ラップラー紙は、歪曲された情報が流布される中、マルコス元大統領による戒厳令の実態を伝え、歴史事実の歪曲に抵抗する行事のリストを2月23日のウェブ紙面にて紹介した。

・国家による市民弾圧の結果、超法規的に3340人が殺害され、記録があるだけでも3万4000件の拷問が実行され、7万人が投獄された。
・汚職は、盗賊政治と縁故主義によって制度化された。一連の調査によれば、マルコスの不正蓄財は3000億ペソ(約6800億円:2022年2月28日のレートにて換算。1986年フィリピン国家予算は約7000億ペソ)に達した。

― 真実のために立ちあがろう! 「ボンボン」反対を強めるカトリック教会

「私たちは真実以外を支持しません。私たちは、戒厳令とEDSAピープルパワー革命の歴史における過激な歪曲について警告したいのです。」
 フィリピン・カトリック司教会議(CBCP)会長パブロ・ビルジリオ・デビッド司教は、エドサ革命記念日に際して信徒あてに送った公開書簡において述べた。
 書簡においてデビット司教は、多くのカトリック司教が戒厳令の暗黒時代に「不正」と「残酷さ」を目撃してきたことを伝え、「人権侵害や犠牲者の存在、汚職、独裁によって作られた国の深刻な負債、経済悪化などは、十分に証拠のある事実です。これらは私たちの歴史にしっかりと記録されているのです」と言葉を続けた。
 さらに、「これ(マルコス元大統領独裁に関する事実の歪曲と嘘偽りの物語の流布による記憶の塗り替えと破壊の試み)は、危険です。私たち国民の共通認識を毒し、私たちの制度の道徳的な基盤を破壊するからです」と警告し、「真実のために皆で立ち上がりましょう」「真実に基づかない選挙運動やいかなるプロセスも欺瞞に過ぎず、信用できません」と強調し、事実上の「ボンボン」マルコス反対支持を訴えかけた。

― 若者たちよ、騙されるな! モレノ市長

 選挙活動解禁後に、人気トップの「ボンボン」マルコス批判を強めているイスコ・モレノ マニラ市長は、エドサ革命の教訓をいくつもの集会や声明を通して積極的に訴えた。2月17日には、エドサ革命が政治家は権力を濫用してはいけないものであることを思い出させてくれる出来事であると述べた。さらに、「若者たちは、1986年の出来事を思い出して、大統領の権力が国民から与えられたものであることを常に念頭に置くべきです。そして、権力を(大統領に)与え、また、取り戻すのも、国民の役割です」と訴えた。
 また、24日には、ムスリムの若者たちを前に、「私たちは皆、過去の出来事を知っています。1974年から81年は、ミンダナオのムスリムにとって血に塗られた年月でした。あなたたちの何人かには、失踪している親戚がいるはずです。だからこそ、この流行に流されて、騙されてはいけないのです」と述べ、「ムスリムの若者たち、女の子、男の子たち、忘れてはいけません。年配者たちに誰があなたたちの先祖を殺害したのかを忘れてはならないことを訴えなさい。気をつけることです」と選挙権を有する成人たちへの働きかけの重要さを若者たちに強く訴えた。

― 人間らしい明日のために、共に立ち上がりましょう! ロブレド副大統領

 レニ・ロブレド副大統領は、エドサ革命記念日にあわせ次のようなメッセージを国民へ送った。
「エドサにおける国家の勝利は、愛によってもたらされたものです。そして、私たちがこの愛を実践するとき、それがピープルパワーであれ、ピープルズ・キャンペーンであれ、平和的革命であれ、重要な選挙であれ、どんな場合であっても、私たちは先人や次世代の人びとと共にあるのです。進歩的で、自由で、人間らしい明日のために、共に立ち上がり共に働きましょう。進歩的で自由で人間らしい明日のために、共に立ち上がり、共に働くのです。」

― 汚職者たちは例外なく刑務所に入れる パッキャオ上院議員

 イスコ市長やロブレド副大統領と異なり、マニー・パッキャオ上院議員はエドサ革命記念日に際して、その精神が36年の間にあった汚職によって失われているとの悲観的なメッセージを強調した。パッキャオは、「1986年のエドサ革命は、貧困を作り出した汚職に塗れた独裁者を追い出した。しかし、36年たった今、貧困者は増加している。なぜなら、政府は何も変わっていないからだ」と主張し、パッキャオが大統領に当選した際には、汚職に対する革命を実行し、「例外なく」汚職者を刑務所に入れることを力強く宣言した。

〈Source〉
【コラム】強権政治の脆さを露呈した「エドサ革命」から36年, Stop the Attacks Campaign, February 28, 2022.
CBCP warns Filipinos of ‘radical distortions’ on martial law history, Inquirer, February 25, 2022.
EDSA 36: Candidates remember Martial Law abuses before 2022 polls, Rappler, February 25, 2022.
LIST: Protests, activities to commemorate 36th People Power anniversary, Rappler, February 23, 2022.
Newfound enthusiasm for Edsa people power, Inquirer, February 26, 2022.
Pacquiao: Spirit of EDSA lost due to corruption, philstar, February 26, 2022.
Robredo: Keep EDSA alive, from People Power to People’s Campaign, Rappler, February 25, 2022.

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