【東京=22日】12月13日、ドラッグ戦争に関する報告書の作成をドゥテルテ大統領から命じられたエドゥアルド・アニョ内務自治省長官は、その報告書がドラッグ戦争の正当性と国際刑事裁判所(ICC)への反論の根拠を示すものとなると明言した。また、フィリピン政府の協力拒否によりICC調査は進まず、司法システムの問題と次期大統領の対応が注目されている。
― ドラッグ戦争正当化に利用される報告書
12月13日、ドゥテルテ大統領は、内務省にドラッグ戦争に関する報告書の作成を命令した。13日のパンデミック・タスクフォース会議において、アニョ内務自治省長官は、パンデミックにもかかわらず違法薬物に対する作戦は継続中であると述べた。
12月5日から11日までに合計940回の作戦が実行され、1,253人の容疑者が逮捕され、21人が降伏し、約7,287万ペソ(1億6,600万円、2021年12月21日1ペソ=2.28円)相当の覚せい剤が押収された。
この会議で、ドゥテルテ大統領から彼の任期中に押収された覚せい剤の量を集大成として(ドラッグ戦争を正当化するものとして)公表することの可否を尋ねられたアニョ長官は、「その報告書は、人権擁護者に対して知らしめるためのものです。時が来れば、ICCに対して、ICCの権威に屈しない理由を示すことになるでしょう。なぜなら、ICCは、我が国の覚せい剤の問題の巨大さを目の当たりにすることになるからです」答えた。
― 次期大統領がICCの調査に重要な役割を担う
「レニー・ロブレド副大統領陣営が、来年の選挙に勝利した暁には、ドゥテルテ大統領によるドラッグ戦争を建前とした超法規的殺害に関するICCの調査にオープンになるだろう。」
12月15日、オンラインフォーラムに出席した元デ・ラ・サール大学法学部長で上院議員に立候補しているホセ・マニュエル・ジョクノ氏は、次の大統領がICCの調査で重要な役割を担うことになる点を強調した。
フィリピンによるドラッグ戦争に対する公正な調査の実行可能性について、ジョクノ氏は、裁判官への脅迫や最高裁判所長官の追放、そして、最高裁判所の大部分のポストやオンブズマン、検察総長、人権委員会の次の人事がドゥテルテ大統領によって任命されることについて触れ、これまでの経緯から否定的な見解を述べるとともに、外部機関であるICCによる調査の重要性を示した。
― イスコ大統領候補、ドラッグ戦争支持もICC問題に触れず
12月10日、大統領候補の一人であり、ドゥテルテ政権やマルコス候補のスタンスにも「理解」を示すフランシスコ・「イスコ」・モレノ・ドマゴッソ大統領候補に対して、アジアタイムズ記者がマニラ市庁舎において独占インタビューを行った。記者は、ドラッグ戦争とICCの問題へのスタンスをイスコ候補に対して質問したが、イスコ候補は、ドラッグの深刻な問題を強調してドラッグ戦争の継続意思を示した一方で、ICC調査に対しての明言を控えた。
〈Source〉
DILG ordered to make inventory of seized drugs, PCOO, December 14, 2021.
Duterte asks Año for drug war report on seized meth so ICC can see problem, Inquirer, December 14, 2021.
Duterte orders Año to come up with drug war report for ICC, Philstar, December 14, 2021.
Interview: Isko would continue Duterte’s drug war if elected, Asia Times, December 15, 2021.
Next president ‘will have very big say’ on PH cooperation with ICC: Diokno, ABS-CBN, December 16, 2021.
Robredo-led gov’t more open to ICC probe — Diokno, Manila Bulletin, December 16, 2021.