【21日=東京】ドゥテルテ大統領は17日、ルソン島パンパンガ州クラーク・フリーポート・ゾーンのロイス・ホテル&カジノで開催された与党PDPラバンの全国大会で演説し、「法律では、大統領や副大統領であれば、免責される。そうであれば、私は副大統領として出馬する」と語った。翌18日には、フィリピン政府の管理下にあるフィリピン・ニュース・エイジェンシー(PNA)が「州知事はドゥテルテ大統領が副大統領に立候補することを望んでいる」という見出しの記事を配信、少なくとも24州の知事がそうした意向を持っていると伝えた。来年の大統領選に向けて、ドゥテルテ大統領が副大統領として引き続き影響力を保持することに意欲を見せていると言える。ただ、訴追免責特権を利用するために副大統領の職を利用するとの意向を公言したもので、批判も出ている。
ドゥテルテ大統領は演説で、アントニオ・トリヤネス元上院議員やアントニオ・カルピオ元最高裁判事らの名前を挙げ、「彼らは訴訟などで私を脅し続けている。訴えられるのではないかと恐れている」と語り、そうした訴追を回避するために、副大統領選への立候補に意欲を示した。大手メディアのABS-CBNによると、「私心」を露わにするドゥテルテ大統領の発言に、サルバドール・パネロ大統領首席法律顧問は早速、「ドゥテルテの副大統領就任はフィリピン人を守ることを目的としている」とのコメントを出して火消しに回った。
国際刑事裁判所(ICC)のファトゥ・ベンスダ主任検察官は退任前の6月14日に、ドゥテルテ大統領が進める「違法薬物撲滅戦争(ドラッグ・ウォー)」における人道に対する罪を徹底的に捜査することを求める声明を発表し、ICCの予備審査部に捜査の認可を申請したことを明らかにした。ベンスダ主任検察官は、ドゥテルテ大統領がダバオ市長や副市長を務めた2011年から2016年の期間も捜査対象期間にするよう求めた。国際刑事裁判所は現在、被害者の証言への協力を呼びかけ、ホームページに特設サイトを設けている。
─ 「自らの不正行為に対する十分な答えを」
こうしたドゥテルテ大統領の発言に、有力メディアのフィルスターのフェデリコ・D・パスクアル・ジュニア記者は「ドゥテルテ氏、免罪符を失う恐れを認める」と題したコラムを掲載、「お言葉ですが、ここでの私たちの最大の関心事は、単に失策を犯した大統領を罷免することではなく、自らの不正行為に対する十分な答えを出させることです」と批判した。
大統領の訴追免除を規定しているのは、現在の1987年の憲章ではなく、1973年憲法。1973年憲法(マルコス憲法)の第7条15項は「大統領は、その在任期間中、訴訟から免責される。その後は、大統領の在任期間中に大統領の特定の命令に従って大統領または他の者が行った公的行為については、いかなる訴訟も起こらないものとする。ここに規定されている免責は、この憲法の第17条で言及されている現職の大統領にも適用される」とある。法律関係者からも、この規定は現在の1987年憲法には引き継がれず、そもそも副大統領には訴追免責特権はない、との見方も出ている。
任期6年の大統領は憲法で再選が禁じられている。
〈Source〉
Federico D. Pascual Jr., 2021, Duterte admits fear of losing immunity, The Philippine Star.
Governors want Duterte to run as VP, The Philippine News Agency, July 18, 2021.
‘Tatakbo na lang ako’: Duterte will Run for VP If It Means Having Legal Immunity, ABS-CBN News, July 17, 2021.