再び閉鎖、いわくつきのマニラ湾ドロマイト・ビーチ

【写真】新型コロナ禍でドロマイト・ビーチに集まる人びと/via Crowding at dolomite beach fuels controversy, the Manila Times, October 27, 2021.

【3日=東京】10月24日、コロナ禍にもかかわらず12万1744人もの観光客がマニラ湾ロハス通りの新名所であるマニラ・ベイ・ウォーク・ドロマイト・ビーチ(通称ドロマイト・ビーチ)に押し寄せた。同時に、ドロマイト・ビーチの抱える数多くの問題を巡って議論が再燃している。

― 観光客が殺到して2週間で再閉鎖

 ドロマイト・ビーチは、マニラ湾リハビリテーション・プロジェクトの一環として建設されている長さ900m幅60mの白砂の砂浜である。昨年9月に一時的に一般開放されて以降、拡張工事のために開放と閉鎖を何度か繰り返し、先月16日の新型コロナ防疫措置の緩和に伴って再開放された。

 しかし、再開放からわずか2週間後の10月29日に、新型コロナ感染拡大への懸念から再び閉鎖されることとなった。数多くの国軍兵士や警察を投入した巡回や指導にもかかわらず、ドロマイト・ビーチ周辺の広い範囲にわたり大勢の観光客が押し寄せ、過密状況が作り出されたからである。開放されていた2週間の間に、実に32万2718人もの訪問客が記録されている。加えて、大勢の観光客がマスクやソーシャル・ディスタンス等の適切な行動をとっていなかったことが指摘され、再開そのものや対策の不備に対して批判が集中している。

 批判の矢面に立つロイ・シマツ環境天然資源省長官は、過密状態を許してしまったことに対して謝罪し、再びこのような状況を起こさないことを約束すると同時に、タスク・フォースを通して適切な対応方法を探っていることを告げた。

― ドゥテルテ大統領とモレノ マニラ市長へのドロマイト・ビーチ汚職疑惑

 10月26日、マニー・パッキャオ上院議員は、ドロマイト・ビーチの汚職疑惑に言及した。大統領選挙におけるパッキャオ議員の対抗馬であるイスコ・モレノ マニラ市長と大統領選に突然参戦するかもしれないドゥテルテ大統領が、ドロマイト・ビーチのプロジェクトに深く関わっている。このプロジェクトは突然現れ、3億8900万ペソもの巨額予算に膨れ上がった。プロジェクト立案の不透明な経緯や使途不明な資金の流れに関する問題は、パッキャオ上院議員の実施する汚職調査の対象であり、これまでに何度も言及されてきた。

 26日の記者会見でパッキャオ上院議員は、今後も広範囲にわたる当該プロジェクトの汚職調査を継続し、また、大統領となった暁にはこの汚職を容認しないと語った。

― 山積する問題

 ドロマイト・ビーチをめぐり、上記意外にも多くの問題が山積する。破砕したドロマイトの粉塵が人体に与える影響、魚介類への悪影響、ビーチの景観や水質の悪さを建前としたマニラ湾養殖漁師の立ち退き、ドロマイトの流出に伴うビーチ維持コスト、セブ市におけるドロマイトの無許可搬出等の問題は、プロジェクトを推進してきたドゥテルテ政権やモレノ市長と批判派との間で未だ議論が続けられている。

 加えて、ドロマイトの護岸効果や水質改善効果に対しても多くの専門家が実効性に疑問を呈してきた。パンデミック下での美しい景観がもたらす精神的な安らぎも、今回のように逆にパンデミックの一原因にもなりかねない。 ドロマイト(苦土(くど)石灰(せっかい))は、石灰石が海水中で変容してカルシウム分とマグネシウム分が置換して生成したもの。肥料の原料となる。

〈Source〉
Cops deployed at park areas with expected holiday crowds, Manila Standard, November 1, 2021.
DENR open for possible Senate probe into allegedly missing dolomite beach equipment, CNN Philippines, October 27, 2021.
Dolomite beach overcrowding won’t happen again – DENR, Philstar, November 1, 2021.
The bad economics of dumping fake white sand along Manila Bay, Rappler, September 11, 2020.
The shifting sands of public opinion: Dolomite beach attracts huge crowd, Manila Bulletin, October 30, 2021.

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