【10日=東京】現在、大統領選挙でイスコ・モレノ マニラ市長と支持率トップを競うフェルディナンド・マルコス・ジュニア(通称「ボンボン」マルコス)に対して、人権団体を中心とする大統領候補の立候補証明書(COC)を取り消す試みが本格化している。
― 有罪者に被選挙権はない
11月2日、「ボンボン」マルコスのCOC取消しの申し立てが選挙管理委員会(Comelec)に提出された。申立人は、マルコス独裁政権に反対した政治的被拘禁者グループや人権団体、医療従事者団体で構成されており、申立書は、1995年の地方裁判所での脱税有罪判決により、彼に公職へ立候補する権利がないと主張する。
テオドール・テ弁護士によれば、有罪経験者の選挙への立候補は、総選挙法12条に違反しており、脱税有罪判決に対して上告を断念した「ボンボン」マルコスは有罪者として立候補する資格を有さない。
この請願に対して、多くの人権団体や政治家がCOC取消の請願の支援や新たな申立書提出の動きを見せている。
― 予測済みの妨害行為? わずかな罰金を支払うだけの出来事
「ボンボン」マルコス陣営のスポークスマンであるビクター・ロドリゲス弁護士は、COC取消請求が提出された翌日、この「妨害」行為が予測された嘘の宣伝であり、そのような泥試合に真面目に取り組むつもりはないとのコメントを発表した。
ロドリゲス弁護士は4日に再び記者の前に立ち、「ボンボン」マルコスは単に所得税申告書の提出をせず、わずかな罰金を支払うことになったというだけのことであり、候補資格を失うような有罪にはあたらないとの見解を示した。
― 判決に対する見解の違い
ここで議論となっている判決とは、「ボンボン」マルコスが1982年から85年の間の所得税申告書の提出と所得税の支払いを怠っていたことに対して、1995年に地方裁判所から懲役期間を伴う有罪判決が下されたものを指す。この判決に対して「ボンボン」マルコスは、控訴裁判所に上訴し、1997年に懲役刑を削除された罰金刑のみの判決に修正されている。この一連の結果が、被選挙権を剥奪される有罪なのか、それともちょっとしたミスで課されたような単なる罰金なのかの評価を巡っての噛み合わない議論の応酬が行われている。
― マルコスの追及で何も変わらなかった
マルコス支持者の声は、マルコス独裁政権打倒以降に貧困も汚職も政治体制も全く変化していないことへの国民の苛立ちを強く反映している。イスコ・モレノ マニラ市長が語るような未来に向けて、既に終わっているはずのマルコス元大統領への断罪を巡って未だ分裂しているフィリピンにおいて、和解と癒しの必要性、そして、将来のフィリピンを見据えた効果的な政策議論の重要性を主張する声も強い。
〈Source〉
Marcos team says plea to cancel COC ‘predictable nuisance petition’, Philstar, November 3, 2021.
More groups to file Comelec petitions vs Bongbong Marcos, Rappler, November 5, 2021,
[OPINION] Why does Bongbong Marcos get so much support?, Rappler, November 2, 2021,
‘Penalty lang’: Marcos camp insists there’s no need to declare tax case in COC, Inquirer, November 4, 2021
Petition to cancel COC of Bongbong Marcos filed before Comelec, Inquirer, November 2, 2021.