報道自由度ランキングを
大きく下げたフィリピン

【写真】マラカニヤン宮殿前でプラカードを手に報道の自由を訴える大学生たち/Philippines' Duterte blasts news site Rappler, but denies stifling media, January 17, 2018. https://www.reuters.com/news/picture/philippines-duterte-blasts-news-site-rap-idUSKBN1F50HL

【東京=6日】5月3日の世界報道自由デーに、世界報道自由度ランキングと各国レポートが発表された。フィリピンは昨年の138位から147位に順位を落とした。

― 新たな分極化の時代と民主主義の世界的な弱体化

 国境なき記者団は、毎年恒例の世界報道自由度ランキング発表の場において、2021年の世界的な報道の自由を巡る変化を「新たな分極化の時代」と表現した。専制主義的な国家が、開かれた社会とメディアやオンラインプラットフォームを支配し、民主主義国家に対してプロパガンダ戦争を仕掛けている。民主的な政権と専制的な政権への分極化によって、国際レベルで民主主義が弱体化していることへの懸念を表明したのである。
 世界報道自由度ランキングは、報道自由度指数によって世界180カ国を順位付けており、それぞれの国を、「良好」、「満足」、「問題」、「困難」、「深刻」の5つの状態に区分する。9年間で最高区分である「良好」な国は26カ国(2013年)から8カ国(2022年)に激減し、フィリピンを含む下から二番目の「困難」諸国は38カ国から42カ国へ増加、最低区分である「深刻」諸国は20カ国から28カ国へ増加している。

― 世界報道自由度ランキングで更に順位を落とすフィリピン

 世界報道自由度ランキングにおいて、フィリピンの順位は180カ国中147位となり、昨年よりも9位順位を落とした。分類は上記5つのうちの下から二番目の「困難」な国に位置付けられている。「困難」な国に分類されるのは、111位報道(自由指数54.48)から152位(報道自由指数40.26)までであり、フィリピンの147位(報道自由指数41.84)は、報道自由指数40未満に分類される最低区分である「深刻」な国に限りなく近い。ちなみにロシアはフィリピンから8位下の155位(報道自由指数38.82)であった。
 国別レポートでは、フィリピンが過去6年間のドゥテルテ大統領の指導下において「政府に過度に批判的とみなされるメディアを標的とした、司法による嫌がらせとも結びついた無数の攻撃が特徴」だと述べている。国別レポートは、さらに、赤タグ付けへの回帰やサイバーハラスメント、その他深刻な抑圧状況について触れた後、フィリピンはジャーナリストにとって最も死者の多い国の一つであり、メディアの殺害に対する加害者の免責は、「ほぼ完全」であると述べている。

―「ボンボン」マルコス支持者による外国特派員への脅迫

 フィリピン外国特派員協会は、5月3日に公表した世界報道自由デーの声明において、選挙期間中に記者たちが受けたオンライン攻撃を調査するよう、ソーシャルメディア・プラットフォームに要請した。この声明は、記者たちの受けたソーシャルメディア上の嫌がらせや脅迫が、フェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニア(以下、「ボンボン」マルコス)の支持者によるものであることを明かした。声明において同特派員協会は、次の3つの事例を紹介し、「ボンボン」マルコスや彼のキャンペーンチームから長年にわたる問題や論争についての回答を求めることすら困難な状況にあると述べた。

 事例1:ワシントンポスト・マニラ特派員のレジーン・カバトは、「ホラ吹き」と呼ばれた。彼女はまた、歴史修正主義について書いた正当な記事のためにオンライン攻撃に直面した。
 事例2:BBCの特派員ハワード・ジョンソンは、マルコス・ジュニアが「まじめなインタビュー」を許さないなら、どうして良い大統領になれるのかと映像で尋ねた後、「フィリピン人の評判を傷つけたから首を切るぞ」と脅迫する支持者が現れ、オンラインでの罵声の嵐にさらされた。
 事例3:サウスチャイナ・モーニングポストのジャーナリスト、ライサ・ロブレスが「ボンボン」マルコスの過去の有罪判決についてツイートした後、上院議員に出馬するラリー・ガドンが、ロブレスに関する卑猥で罵詈雑言に満ちた投稿をした。

― 報道の自由の「プレデター」ドゥテルテ大統領がまさかの「報道の自由の日」を制定

 世界報道自由デー1週間前の4月27日、ドゥテルテ大統領は、8月30日を「報道の自由の日」とする法律を承認したことを発表した。この日は、1850年8月30日に生まれたスペイン統治時代の愛国作家で、フィリピンのジャーナリズムの父とされるマルセロ・デル・ピラールにちなんで決められたものである。同法によると、国や民間の報道機関は、この日、ジャーナリストの権利とその保護を促進するための「意識改革」活動を主導しなければならない。
 大手放送局ABS-CBNを閉鎖し、自国政府への批判的な報道で知られるオンライン・メディア・ラップラーとノーベル平和賞受賞者マリア・レッサCEOをはじめ数多くのメディアを抑圧の標的としたドゥテルテ大統領は、国境なき記者団から報道の自由の「プレデター(捕食者)」と呼ばれている。ドゥテルテ大統領が「報道の自由の日」を制定することに対して、フェースブック等多くのSNSは「皮肉」として拡散している。
 ドゥテルテ大統領は、報道の自由が「国家の活力ある民主主義にとって不可欠である」と語った。

〈Source〉
August 30 declared National Press Freedom Day, Philstar, April 28, 2022.
Philippines drops to 147th place in World Press Freedom Index, GMA News, May 3, 2022.
Press Freedom Day: Big Tech urged to probe online attacks on Philippines journalists, Philstar, May 3, 2022.
Press “predator” Duterte declares Philippine Press Freedom Day, Kyodo News, April 27, 2022.
RSF’s 2022 World Press Freedom Index : a new era of polarisation, RSF, May 3, 2022.

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