【東京=20日】5月9日の選挙後、ほぼ確実に当選を決めたフェルディナンド「ボンボン」マルコス・ジュニア（以下「ボンボン」マルコス）とサラ・ドゥテルテ＝カルピオ（以下サラ）。対して、マリア・レオノール・ロブレド（以下ロブレド）支持者たちは、すぐさま全国的な拒否運動を展開した。ロブレド支持者たちの動きに嫌悪感を露わにする「ボンボン」マルコス陣営との対立が先鋭化するかに見えたが、5月13日、ロブレドは、彼女の支持者たちに対して新たな闘争のあり方と方向性を示した。
― 新たなNGOアンガット・ブハイ
5月13日、ロブレドはケソン市のアテネオ・デ・マニラ大学の選挙支持者たちを集めた感謝祭の席で、副大統領を辞任する翌日、6月1日に新たなNGOを立ち上げると発表した。大勢の支持者の前でロブレドは、「今回の選挙結果が私たちの夢と一致していないことを受け入れる必要があります」と述べ、新たに立ち上げるNGOアンガット・ブハイ（生活の向上）を通した活動により「未来に目を向け始めることができるでしょう」と支持者たちに語りかけた。
新たなNGOアンガット・ブハイは、ロブレドが在任中に指揮した反貧困プログラムを辞任後も継続する目的で、地方レベルの選挙キャンペーンの主催者とともに組織化される。ロブレドは、今回の選挙活動を通して、必要な活動とその中で自分たちもできる活動が明らかになったと語り、フィリピン歴史上「最も広いボランティア・ネットワーク」を創設し、社会の周縁に追いやられている人びとを助け、正しい歴史（認識）を守っていくことを強く宣言した。
― このシステムは、真実を盗み、歴史を盗み、未来を盗みました
同集会において、彼女はまた、これまでの結果に異議を唱えることなく、不正選挙に対する非難や報告に言及した。「多くの人びとの声を尊重しながら、これまでの成果を無駄にしないよう決意してください」と述べ、「この点で私と一体になることを、皆さんにお願いします」と語りかけ、さらに、彼女はこう続けた。
「真実と間違った状況とを見分けることができるのは、選挙期間中だけではありません。欠陥のある票数計算機や報道された票の買収事件だけではありません。私たちの最大の脅威であり敵である、選挙期間前から優勢な、数十年にわたるプロジェクト（マルコス一族による復権の試み）は、怒りと嘘を広める大規模で恐ろしいシステム（machinery）なのです。」
「このシステムは、真実を盗み、歴史を盗み、未来を盗みました。偽情報は我々の最大の敵なのです。」
さらに、副大統領候補としてロブレドとともに立候補したキコ・パンギリナンは、同集会において、2025年に行われる次の選挙まで戦い続けることをアピールした。
― ネット荒らし（トロール）部隊による対ロブレドへの素早い行動
選挙から１週間が経ったが、フェースブックやツイッターでは、ロブレドやマルコス勝利を受け入れようとしないロブレド支持者に対する怒りの投稿や虚偽の情報で溢れかえっている。ロブレドによるアンガット・ブハイ立ち上げの発表直後には、次のようなコメントがフェースブックおよびツイッターにおいて、投稿・拡散された。
「ロブレドは『政府の中の政府』を作ろうとしている」
「ロブレドの演説は怖かった。（中略）マルコス政権に戒厳令を出させた分裂と崩壊の動きを繰り返している。（中略）新人民軍みたいだ」
さらに、アンガット・ブハイの偽フェースブックページが作成された。このフェースブックには、14日午後には既に4万人以上が参加していた。この偽フェースブックは管理者の情報が秘匿され、外部コメントを拒否していたため、ロブレド支持者は、このページに参加している人たちに対してそこから去るよう声明を発表した。
― 必要なのは支持者との対話（TIME）
欧米メディアが、「ボンボン」マルコスの偽情報戦略による勝利を、トランプ元大統領をはじめ多くの政治家が同様の勝利を得るようになった世界的な現象の顕著な例として取り上げているが、それら報告の中に、今後の対応へとつながるような具体的な分析や主張はほとんど見られない。その中にあって、TIME誌は、次のようなジョナサン・オン准教授（マサチューセッツ大学）の分析を掲載している。
「野党がついに草の根運動を展開し、マルコス支持者と対話したとき、それは感動的であり、記念碑的であり、重要なことであった。しかし、「ボボタンテ」（愚かな有権者）や「マサ」（大衆）を非難したり見下したりすることが何十年も続いた後では、それは遅きに失していた。同時に、このような対話が、政治参加における彼ら自身の主体性と狡猾さに敬意を払いつつ、選挙戦の一時的なものではなく、排除されたコミュニティの直面する問題に耳を傾け、理解しようとする誠実で長期的な意志に変わることを期待したい。（中略）
（「ボンボン」マルコスのような政治家に対して）反撃するために、進歩的な指導者たちは自分たちの対抗的な物語と説得力のあるヴィジョンを推進すべきである。しかし、その前に、彼らは自分たちが聞く耳を持たなかったことを認めなければならない。」
〈Source〉
No problem with Constitution, Marcos team if Robredo puts up NGO, Philstar, May 16, 2022.
Robredo spox: We want clarity on issues, but we’re not questioning results at this point, Inquirer, May 13, 2022.
Robredo vows to ‘fight lies’, ABS-CBN, May 13, 2022.
Suspicious FB page emerges after Robredo bares NGO plan, Inquirer, May 15, 2022.
The World Should Be Worried About a Dictator’s Son’s Apparent Win in the Philippines, Time, May 10, 2022.
Trolls still targeting Robredo past election, Inquirer, May 16, 2022.
Urging voters to accept poll results, Leni Robredo sets sights on new NGO, Inquirer, May 13, 2022.
