ノーベル平和賞受賞に沸く?
フィリピン政界

【写真】 反ダミー法違反の容疑で逮捕されたRappler社のCEO兼エグゼクティブ・エディター マリア・レッサ=2019年3月29日早朝/via Maria Ressa arrested at NAIA over Anti-Dummy Law, Rappler, March 29, 2019.

【13日=東京】10月8日、ノルウェーのノーベル委員会は、ドゥテルテ政権の「ドラッグ戦争」に伴う超法規的殺害をはじめ、強権政治を批判し続けるウェブニュースサイト・ラップラー代表マリア・レッサに、ノーベル平和賞を授与すると発表した。今後追求され得る「ドラッグ戦争」の責任を回避するために画策していると噂されるドゥルテ大統領にとって、非常に大きな痛手であることは間違いない。

― 受賞に伴うドゥテルテへの批判

 レイラ・デ・リマ上院議員は、「世界がドゥテルテの抑圧に対する英雄的な振る舞いを認めたことは、ドゥテルテへの強力な平手打ちだ」と発言した。
 アルバイ州選出の野党議員エドセル・ラグマンは、レッサのノーベル賞は「報道の自由を悪魔化し、貶めている大統領のもう一つの汚点」であり、レッサは称賛されたが、ドゥテルテは国境なき記者団によって挙げられる「報道の自由の捕食者」31人の世界的指導者の中に含まれたと述べた。
 フィリピンで最も著名なビジネスグループの1つであるマカティビジネスクラブ(MBC)は声明を発表し、この賞はレッサの勇気を認めたものであと称賛した。さらに、フィリピン、そして世界における表現の自由は、正当なジャーナリズムを攻撃し市民を沈黙させる力と資源を有する人たちによって包囲されているが、民主主義の基盤でもある表現の自由や言論の自由、報道の自由といった個人の権利を守るためにジャーナリストや市民が闘っていることに感謝を述べた。

― 世界中から届く祝福の声

 世界中からノーベル賞受賞を祝うメッセージが公表されている。次に挙げるのは、フィリピン政府にも影響力があると思われるメッセージである。

アントニオ・グテーレス国連事務総長
「受賞者を祝福すると同時に、報道の自由の権利を再確認し、ジャーナリストの基本的な役割を認識し、自由で独立した多様なメディアを支援するためのあらゆるレベルでの取り組みを強化しましょう。」

ジョー・バイデン米国大統領
「(2人のジャーナリストは)事実を精力的にそして恐れることなく追求してきた」「彼ら/彼女らは権力の乱用をチェックし、汚職を暴露し、透明性を要求するために働いてきた。彼ら/彼女らは独立したメディアを設立し、沈黙を求める勢力に対して粘り強く戦った。」

ジャスティン・トルドー カナダ首相
「自由で、独立した、事実に基づくジャーナリズムは、これまで以上に重要です。カナダは、ここ国内でも世界でも、報道の自由と表現の自由を擁護し続けます。」

― やっと口を開いたマラカニアン、割れる議会上院

 ドゥテルテ政権が、本来であれば祝福すべき出来事に対してようやく口を開いたのは、受賞決定から3日後11日午後の定例記者会見の席であった。先の東京オリンピックにおいて、ドゥテルテ政権と確執のあるヒディリン・ディアス選手の金メダル獲得に際し、ドゥテルテ大統領が、確執を「水に流す」ことを素早く決定し彼女を祝福したのと比べ、その対応は大きく異なる。フランシス・パンギリナン上院議員は、「繰り返しラップラーを攻撃し、彼女に対してあらゆる種類のでっち上げ起訴を行なってきたドゥテルテ政権は、非常に厄介な状況に置かれることとなった」と語る。
 上院議員内では、顕著な功績を上げたフィリピン人に贈られる上院メダルの授与の手続きをめぐって主張が分かれている。上院メダルがノーベル賞のような顕著な出来事に対して自動的に授与が決められるものなのか、それとも、個々の出来事に即して上院での議決をとる必要があるのか。上院の議決を必要とする場合には、ドゥテルテ派議員によって上院メダル授与が難航することも予想されている。
 11日午後の定例記者会見において、ハリー・ロケ大統領報道官は、「フィリピン人女性の勝利でありとても幸せだ」と発言した後に「なぜなら、マラカニニアンにはカニのメンタリティを持っている人(人を蹴落とそうとする人の意味)は誰もいないからね」と付け加えた。彼は、また、レッサが(フィリピン政府から)起訴されている事実は変わらないことを強調した。

〈Source〉
CBCP: Ressa’s Nobel win a reminder of journalists’ role in democracy, Philstar, October 11, 2021.
Praises pour in for Maria Ressa’s Nobel Peace Prize, Inquirer, October 10, 2021.
Senate torn by Ressa’s Nobel Peace Prize win, Inquirer, October 11, 2021.
World leaders congratulate Ressa, Muratov on Nobel Peace Prize win, ABS-CBN, October 9, 2021.
ドゥテルテ政権、五輪初の金メダリストを「政権の敵」扱い 大統領「水に流そう」, Stop the Attacks Campaign, 2021年8月4日.

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