フィリピン政経フォーカス (4月9日-4月16日)

【写真】ドゥテル-テンポスター(左)と全員の支持率向上を誇示するデラロサの投稿(右)/via Facebook page of Ronald Bato Dela Rosa, April 12, 2025., Facebook page of Ronald Bato Dela Rosa, April 15, 2025.

― 支持率上げるDuter-ten(ドゥテル-テン)
 ドゥテルテ前大統領の国際刑事裁判所(ICC)による逮捕を受け、中間選挙におけるドゥテルテ一派の支持率が上昇している。マルコス陣営に対抗して団結したドゥテルテ一派10人による上院候補連合「Duter-ten」の全員が、ドゥテルテ逮捕以降、大きく支持率を上げている。
 10人の候補者とサラ副大統領が支持を表明したアイミー・マルコスの最新の世論調査Pulse Asiaによる支持率と順位(カッコ内の数字)は以下の通り。中間選挙で当選するのは、12人。

ボン・ゴー:61.9%(1)
ロナルド・デラロサ:48.7%(3)
フィリップ・サルバドール:20.4%(13)
ロダンテ・マルコレタ:28.3%(16)
アイミー・マルコス:27.6%(17)
ジミー・ボンドック:20.4%(19)
ビクター・ロドリゲス:15.8%(24)
ジェイビー・ヒンロ・ジュニア:15.5%(25)
ラウル・ランビノ:15.2%(26)
アポロ・キボロイ:11.4%(27) リチャード・マタ:8.7%(記載なし)

― サラ副大統領、アイミー支持を表明
 4月14日、サラ副大統領は、上院議員アイミー・マルコスの再選を支持することを表明した。 アイミーが弟のマルコス大統領と政治的に距離を置く中での動きであり、今後の支持率の急上昇が見込まれる。​
 サラ副大統領は、アイミーを支持する理由として、彼女の「誠実さ、勤勉さ、そして国民への献身」を挙げた。 また、アイミーは、サラ副大統領が2022年の副大統領選挙でマルコス大統領と組んだことについて、「彼女を巻き込んでしまった」と後悔の念を示した。

― 偽情報戦略で支持広げる?ドゥテルテ陣営
 イスラエル企業Cyabraの調査により、ドゥテルテ前大統領のICC逮捕後、彼を擁護するための偽アカウントによる大規模な情報操作が行われていることが明らかになった。​これらの偽アカウントは、ドゥテルテの逮捕を「誘拐」と表現し、ICCの正当性を攻撃するなど、彼の支持を広めるための投稿を行っていた。​
 さらに、Cyabraの調査は、5月の中間選挙に向けて、選挙関連の議論の最大45%が偽アカウントによって主導されていると報告している。​これらの偽アカウントは、実在のユーザーとやり取りすることで、現実の世論のように見せかける「デジタル戦争」とも言える情報操作を展開しており、フィリピンの民主主義に深刻な影響を与えていると専門家は警鐘を鳴らしている。​

〈Source〉
Duterte’s Senate bets gain numbers in latest survey, Rappler, April 11, 2025.
Exclusive: Fake accounts drove praise of Duterte and now target Philippine election, Reuters, April 11, 2025.
Key Findings of the March 2025 Ulat ng Bayan Pre-election Preferences, Pulse Asia, April 11, 2025.
Sara Duterte endorses Imee Marcos’ Senate reelection bid, ABS-CBN, April 14, 2025.

〈Source〉
CSC urged to reconsider ‘restrictive’ rule on state workers liking online political posts, philstar, April 10, 2025.
CSC warns state workers: No political posts on socmed, philstar, April 10, 2025.
Gov’t workers, partylist groups criticize CSC memo for ‘violating right to free expression’, Bulatlat, April 12, 2025.
Misogynistic comments, once applauded in the past, will not fly under Marcos – Palace, ABS-CBN, April 10, 2025.

華人を狙って多発する誘拐事件
 フィリピン国家警察(PNP)の報告によると、2025年1月から4月上旬までに13件の誘拐事件が記録され、そのうち8件が華人系フィリピン人および中国人を標的としたものだった。 ​これらの事件の背景には、2024年にフィリピン政府がオフショアゲーミング事業(POGO)の取り締まりを強化し、多くの施設を閉鎖したことがあると言われている。​これにより、収益源を失った犯罪組織が新たな手段として誘拐を行っていると考えられている。
 フィリピン政府は、誘拐事件の増加に対応するため、省庁間タスクフォースを編成し、司法省(DOJ)では、誘拐事件専用の特別法廷の設置を検討している。しかし、犯罪組織の活動が地下に潜行しているため、治安の回復には時間がかかると見られている。​

― 比中間で説明内容が異なるシエラ・マドレ補給任務
 フィリピンで4月9日に第83回「勇気の日」(戦没者追悼および戦争勇士を称える記念日)が祝われる中、フィリピン国軍(AFP)は、西フィリピン海のアユンギン礁に駐留するBRPシエラ・マドレ部隊への定期的な部隊交代および補給(RORE)任務を無事に完了したと発表した。
 声明によれば、このRORE任務はフィリピン沿岸警備隊(PCG)との密接な連携のもとで行われ、いかなる不測の事態もなく終了した。
 同日、中国海警局(CCG)の劉徳軍報道官は、フィリピン側の許可申請に基づき、中国側の同意を得たうえで、フィリピンが民間船を派遣し、南沙諸島の仁愛礁(Ren’ai Jiao)に「不法に座礁させた」軍用艦への補給を行ったと述べた。CCGは、この補給活動の全過程においてフィリピン船に対する確認と監視を実施したとしている。
 劉報道官はまた、「フィリピンは自らの約束を守り、この問題を過度に騒ぎ立てることをやめ、中国と共に海上情勢の管理に取り組むべきだ」と述べた。

― 中国運搬船の転覆
 4月15日午後5時20分頃、西ミンドロ州リサール沖で、中国の砂運搬船「Hong Hai 16」が転覆した。​この船には25人の乗組員(フィリピン人13人、中国人12人)が乗っており、14人(フィリピン人6人、中国人8人)が救助されたが、中国人1人が死亡し、7人のフィリピン人と3人の中国人が行方不明となっている。​
 フィリピン沿岸警備隊(PCG)は、特殊作戦部隊を含む捜索救助活動を展開しており、船体は部分的に沈没しているものの、直立した状態でエンジンルームに乗組員が閉じ込められている可能性があると報告している。​また、油流出の可能性に備え、地方災害リスク削減管理局と連携して油防止ブームの配備も検討されている。​

〈Source〉
China Coast Guard monitors delivery of supplies to illegally ‘grounded’ Philippine warship at Ren’ai Jiao: spokesperson,April 9, 2025.
Incident-free resupply mission conducted anew in Ayungin Shoal, Philippines News Agency, April 9, 2025.
PCG launches search for 10 missing crew of Chinese ship, Inquirer, April 16, 2025.
PNP To Filipino-Chinese Traders: Stay Calm, philstar, April 12, 2025.

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