フィリピン政経フォーカス (2月24日-3月4日)

Source: Pulse Asia Reserch Inc. 2025. February 2025 Nationwide Survey on 2025 Senatorial Election.

― 中間選挙とパーティリストの仕組み
 5月の中間選挙を2ヶ月後に控え、選挙活動も大詰めを迎えつつある。中間選挙では、上院議会定数の半数12議席が入れ替わる上院選挙、下院議会全316議席の改選(うち、選挙区253議席、パーティリスト制度63議席)、地方選挙(州知事、副知事、州議会議員、市長、副市長、市議会議員)が実施される。
 上院選挙では、投票者は最大12人までの名前を投票用紙に記載できる。全国区での選挙であり、最多得票の上位12人が当選する。
 パーティリスト制度とは、1987年憲法および共和国法第7941号(Party-List System Act)に基づき、以下の目的で導入された。
1. マイノリティの政治参加を促進(農民、労働者、先住民、女性、若者、高齢者、LGBTQ+ など)
2. 大政党への対抗勢力を作る
3. 草の根の政治団体や社会運動の代表を確保する
 下院議会の20%の議席がパーティリスト枠として割り当てられており、パーティリストは、少数派または特定セクターの利益を代表する必要がある。2%の得票率を超えた政党が自動的に1議席獲得し、最も多く票を集めた政党から順に最大3議席まで追加配分が行われる。全体の議席数(63議席)が埋まるまで2%未満の政党にも議席が配分されることとなる。

― 上院世論調査
 メディアから最も注目度の高い上院選挙に関して、2月の世論調査報告が公開された。結果は、冒頭の表の通り。政権側は、12人の支持候補者を指名することができる。赤く塗られた候補者が政権支持候補者である。現在、8人が当選圏内にいる。

Source: Pulse Asia Reserch Inc. 2025. February 2025 Nationwide Survey on 2025 Senatorial Election.

 緑で塗られた候補者が、ドゥテルテ派の候補者である。ボン・ゴー、デラロサ両上院議員ともに徐々に支持率を伸ばしてきている。他方、おそらく大統領の姉ということで政権の支持を受けているが、実はドゥテルテ派議員と目されているアイミー上院議員は、昨年の当選圏内から大きく順位を落としてきている。

― 圧倒的優位に立つ?ドゥテルテ派のパーティリスト政党
 パーティリストでは、4Ps、ドゥテルテ・ユース、FPJパンダイ・バヤニハンが他を大きく引き離してそれぞれ3議席を獲得しそうだ。続いて、ACT-CIS、シニアーシチズン、アセンソ・ピノイが大きな支持率を獲得している。
 この中で、4Ps、ドゥテルテ・ユースは、ともにドゥテルテ色が非常に強いパーティリストであると言われており、また、ACT-CISもドゥテルテ政権時の強硬な治安維持と共通する行動原理を有している。ACT-CISは、現在はトゥルフォ・ファミリーの政治的な基盤となっていると言われているが、これら3組織とドゥテルテ派との繋がりを憂慮する人たちも少なくない。

〈Source〉
8 admin-backed Senate bets in Top 12 of latest SWS survey, Philippines News Agency, February 26, 2025.
Sen. Bong Go rises to second spot in latest SWS survey, Inquirer, February 27, 2025.
SWS: Filipinos to support pro-labor candidates, Inquirer, March 3, 2025.
SWS poll taken mid-Feb shows top party list choices, Inquirer, February 27, 2025.

 マニラ市政府は、2022年に中国共産党と関係があるとされる団体から10台のオートバイの寄付を受け取ったことを確認した。 マニラ市情報局長のシェリル・チャンは、寄付は2022年に行われ、その後、これらの団体や個人とは一切の接触がないと述べている。また、寄付は適切な手続きを経て受け入れられたと強調した。
 国家捜査局(NBI)は、これらの寄付がフィリピンへの浸透戦略の一環である可能性があると指摘している。
 2024年には、タルラック州バンバン町のアリス・グォが、中国人でありながらフィリピン人を装って町長職に就いていた疑惑が浮上した。彼女は中国系オンライン賭博場(POGO)との不正な関係や人身売買に関与していたとして逮捕勾留され、今なお捜査は続いている。

〈Source〉
Manila gov’t confirms donation of motorbikes from alleged Chinese spies, denies further encounters with donor, ABS-CBN, March 3, 2025.
Palace to probe alleged Chinese spies’ donations, ABS-CBN, March 3, 2025.

― マルコスの呼びかけ
 マルコス大統領は、選挙期間中の「フェイクニュース」や「トロール(ネット荒らし)」による虚偽情報の拡散に対し、国民に注意を呼びかける動画を公開した。 動画の中でマルコス大統領は、「新しいフィリピン人は正しい情報と間違った情報を見分ける賢さを持っている」と述べ、フェイクニュースや誹謗中傷が広がる中でも、真実が勝ると信じていると強調した。
 この動画は、イサベラ州カバガン市のサンタ・マリア橋が崩落した際、オンライン上でマルコス政権下の腐敗が原因とする批判が広がったことを受けて公開された。大統領はこの事件に関し、「関係者の責任を追及する」と述べている。
 また、大統領府の広報担当者であるクレア・カストロ次官は、トロール集団を罰する法律の制定を呼びかけている。さらに、情報通信技術省の関係者も、選挙結果に影響を及ぼす可能性のあるサイバー攻撃に対する警戒を強めている。

― 橋の崩落
 2月27日に崩落したサンタ・マリア橋は、建設に10年以上を要し、12億ペソの費用が投じられて2月に開通したばかりだった。この事故は、橋の設計や建設における構造的欠陥、低品質な資材の使用、不適切な監督、さらには汚職の可能性が指摘されている。
 上院少数党リーダーのココ・ピメンテル氏は、3月3日に上院決議第1319号を提出し、これらの問題の調査を求めた。彼は、これらの崩落事故が納税者の資金の無駄遣いであり、公共の安全を脅かすものであると強調した。
 フィリピンのバターン州選出ジェラルディン・ローマン下院議員は、オンライン上の偽情報拡散を抑制するため、コンテンツ制作者自身が参加する自己規制団体「フィリピン・デジタル評議会」の設立を提案した。 この非政府組織は、デジタルコンテンツの倫理基準を策定し、偽情報に関する苦情の窓口となることを目指す。​
 評議会には、コンテンツ制作者のほか、デジタル広告や広報企業、情報通信技術省(DICT)、国家捜査局(NBI)、ソーシャルメディアプラットフォームの代表者が参加する予定。​ローマン議員は、表現の自由を尊重しつつ、政府による検閲を避けるため、このような自己規制の枠組みが最適であると強調した。​
 また、ラ・ウニオン州選出のパオロ・オルテガ下院議員もこの取り組みを支持し、無規制のソーシャルメディアの危険性を警告している。​

〈Source〉
Father-faker? Solon hits ex-President Duterte for fake news, Inquirer, February 24, 2025.
Lawmaker backs self-regulation to combat online fake news, GMA, March 3, 2025.
Marcos releases video warning against trolls, Inquirer, March 3, 2025.

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