進む?対中国包囲網/どうも世論は憲法改正に反対らしい/ダバオ市でドラッグ戦争宣言
進む?対中国包囲網
― 続く中国巡視船からの攻撃
3月23日、アユンギン礁(セカンドトマス礁)でフィリピンの補給船が放水砲を用いた中国海警局の巡視船による妨害と攻撃に遭い、怪我人と損傷を被った。これに対し、フィリピンの西フィリピン海タスクフォース(NTF-WPS)は、「中国がこれらの違法で無責任な行動を組織的かつ一貫して続けていることは、平和、対話、国際法の順守という中国の空虚な主張に反する」と強い非難を含んだ声明を発した。また、声明とともにフィリピンの補給船が中国船に攻撃される1時間近くにわたる動画を公開した。
フィリピンの非難に対してマニラの中国大使館は、「中国側による度重なる警告と航路規制にもかかわらず、フィリピン補給船は仁愛礁(セカンドトマス礁)の隣接海域に強引に侵入しようとした」として、フィリピンに対して、「あらゆる潜在的な結果を負う準備をせよ」と脅迫ともとれるメッセージを発した。
― 強行姿勢を見せるマルコス
3月31日、マルコス大統領は、大統領令第57号「フィリピンの海上安全保障と領海の認識の強化」を発令し、その実施を担う国家海事評議会(NMC)の創設を決定した。NMCは、中国との領海紛争に関して、より効果的、実行的な組織となることが期待されている。
中国に対して強行姿勢を示す大統領令の発令に対し、4月1日、アイミー・マルコス上院議員は、中国との摩擦を高める危険性を強調し、中国との理解を深め合うべきだと語った。また、同日、ドゥテルテ前政権の報道官ハリー・ロケは、英字新聞インクワイアラー紙のインタビューにおいて、現政権の中国に対する強硬戦術はアユンギン礁を失うだけだろうとして、マルコス大統領の中国政策を批判し、中国との「紳士協定」に基づいたドゥテルテ前大統領による「現状維持」政策の有効性について語った。
― 国際包囲網?
フィリピンは、中国との領海問題に関して、米日比の協力の更なる強化を進めている。4月11日に米国で3カ国の首脳会談が予定されており、南シナ海における3カ国共同巡回査察および、年内の共同訓練実施を合意内容に盛り込む準備が進められている。
また、3月26日には、インドのジャイシャンカール外相がマニラを訪問し、フィリピンの主権への断固たる支持を表明するとともに、フィリピンの領海に干渉している中国を強く批判した。最近、中国との間でインド洋での軍事拠点の設置をめぐり覇権争いを激化させているインドは、国際ルールを正当化の根拠とするフィリピンの立場を支持することで、中国を牽制していると見られる。これに対して中国は、同日、南シナ海の問題に第三国であるインドが介入することを非難する声明を発している。
どうも世論は憲法改正に反対らしい
― 世論調査の結果
3月27日に発表されたパルス・アジアによる世論調査によると、フィリピン人の約4分の3が憲法改正に反対している。
この調査は、3月初旬にフィリピン人成人1200人に対してアンケートを行ったものであり、74%が憲法は「今も、またいかなる時にも改正されるべきではない」と回答した。この調査結果は、地域や階層で多少の違いはあるものの、一致している。
一方、「憲法を今、改正すべき」と答えたのは8%にとどまった。
― 元気を取り戻す反対・慎重派の議員たち
パルス・アジアの世論調査公表を受け、多くの議員がコメントを発している。
フランス・カストロ下院少数党副党首は、「政府は憲法改正の推進をやめて、代わりにフィリピン人にとって差し迫った問題に時間と資源を割くべき」との声明を発した。
フアン・ミゲル・ズビリ上院議長は、この結果が「真に目を見張るもの」であり、「上院は憲法改正に関して国民の気持ちを真に見極めるため、また、もし改正が必要な場合にはどのような改正を行うべきかを真に見極めるために、今後もルソン島、ミンダナオ島のビサヤ諸島で公聴会を実施する」と声明を通して述べた。
ジョエル・ビラヌエバ上院議員もパルス・アジアの調査結果に注目し、拙速な憲法改正の必要性がないことを強調した。
― 調査結果を否定する憲法改正推進派
一方、ケソン州選出のデビッド・スアレス下院副議長は3月30日、パルス・アジアの調査結果に反対を表明し、結果に影響を与えた可能性のある偏った誘導的な質問方法に対する懸念を述べた。スアレス下院議員は、調査の質問は憲法改正のさまざまな側面を曖昧にしているようで、回答者に混乱を引き起こしている可能性があると指摘した。
サンボアンガ市選出のマヌエル・ホセ・ダリぺ下院議員も同様に、声明で「議会で進行中のプロセスに関係ない質問をなぜ盛り込むのか?これは闇のプロパガンダなのか?」と調査方法を強く否定して、結果を拒否する主張を展開した。ダリぺ下院議員によれば、憲法改正そのものを問う今回の世論調査の質問は、経済条項の改正のみを取り扱う現在の憲法改正とは関係ない質問で、回答者に「混乱と誤解を招く」とし、正確な世論を把握するためには直接、住民投票を行うべきだと主張した。
ダバオ市でドラッグ戦争宣言
パーティリスト・カバタアン党のレニー・ルイーズ・コーは、3月27日、ドラッグ戦争の再開は、ドゥテルテ・ファミリーによる33年におよぶ「殺せ、殺せ、殺せ政策」がドラッグ問題を解決しなかったことの証左であると述べた。彼は、「大統領官邸は役に立たないドラッグ戦争を終わらせ、ダバオでの無差別殺害に行動を起こすべき」と付け加えた。
調査に乗り出した国家人権委員会は、「委員会は、ダバオ市におけるドラッグ撲滅キャンペーンに関連した超法規的殺害とされる憂慮すべき事件を激しく非難する。これらの行為は、基本的人権、特に生命と適正手続きに対する権利の重大な侵害であり、正義と法の支配の原則を真っ向から無視するものだからである」と声明で述べた。
〈Source〉
3 in 4 Filipinos oppose charter change: Pulse Asia survey, ABS-CBN, March 27, 2024.
7 dead in police ops after Baste Duterte declared drug war in Davao City — PNP, GMA News Online, March 27, 2024.
China and India’s Intense Contest for Influence, The Diplomat, March 14, 2024.
China warns PH: Prepare to ‘bear consequences’ of sea actions, Inquirer, March 25, 2024.
Davao City killings already rampant even before Baste Duterte declared war on drugs, Rappler, March 25, 2024.
House leader questions Pulse Asia survey on Charter amendments, Inquirer, March 30, 2024.
Imee says EO creating maritime council ‘leads to dangerous path’, ABS-CBN, April 1, 2024.
India Joins Chorus of Support for Philippines’ Maritime Sovereignty, Maritime Executive, March 26, 2024.
India minister to Marcos: ‘We can be on your ship’, Inquirer, March 28, 2024.
KARAPATAN ON BASTE DUTERTE’S “DRUG WAR”, KARAPATAN, March 23.
Marcos Jr. reorganizes maritime security agencies ‘to confront serious challenges’, ABS-CBN, march 31, 2024.
PH condemns China’s ‘irresponsible’ actions in West Philippine Sea, Inquirer, March 23, 2024.
Reported deaths alarm CHR after drug war revived in Davao City, Inquirer, March 28, 2024.
Roque: PH may lose Ayungin if it continues to impose hardline stance, Inquirer, April 1, 2024.
Villanueva: Pulse Asia survey shows no need to fast-track Cha-cha, Inquirer, March 28, 2024.