フィリピン政経フォーカス
(12月10日-12月20日)

【写真】岸田首相と握手を交わすマルコス大統領/via Japan-Philippines Summit Meeting, Ministry of Foreign Affairs of Japan, December 17, 2023.

― 軍事協定

 マルコス大統領は、日本・東南アジア連合(ASEAN)友好協力50周年記念サミットに参加するために来日し、4日間の滞在の後、12月18日に帰国した。

 8日、マルコス大統領は、計画されている日比部隊間協力円滑化協定(RAA)に関する議論を直ちに妥結することで岸田首相と合意したと述べた。 

 現在議論されているRAAは、フィリピン軍が訓練や共同演習のために日本を訪問する際、あるいは、その逆の場合の際に手続きを円滑化する。この結果として、両国の海洋協力が大幅に促進されることが期待されている。 

 マルティン・ロムアルデス下院議長は、声明において、RAAに関して以下のように述べた。

「フィリピンと日本の協力、そして他の志を同じくする国々との同盟は、この地域が直面している増大する課題に対処する上で極めて重要である。」

「現在の地政学的情勢の複雑さ、特に南シナ海における中国の攻撃的な行動には、強力で協力的な解決策が必要であることは明らかだ。」

― 投資約束

 12月18日の東京でのインタビューにおいて、マルコス大統領は、今回の日本滞在で、半導体、医療、インフラ、農業などの分野への投資約束として日本企業9社から総計140億ペソを確保したと述べた。

 「昨年2023年2月に署名された(日本企業からの投資)意向書と本日署名された意向書が、合計で7716億ペソ、つまり約140億米ドルに上る日本の投資家からの約束となりましたが、このことにより約4万人の雇用を生み出すことが見込まれていると知って、私は嬉しく思います」と大統領は述べた。

― 脱炭素リーダー会議

 マルコス大統領は、他のアジア指導者たちに加わり、気候変動と闘うために脱炭素もしくは温室効果ガス排出削減に向けて取り組むことを約束した。

 18日、日本、オーストラリアを含めた11カ国のASEAN諸国は、アジア・ゼロ・エミッション・コミュニティ(AZEC)リーダー会議において共同声明に署名した。

 大統領広報室によると、マルコス大統領は、AZECリーダー会議においてフィリピンの再生可能エネルギー産業と振興技術への投資をAZECパートナーに対して歓迎する旨の発言をした。

― マルコスから突き放された?サラの機密費問題

 2024年予算に関するインタビューにおいてサラ副大統領の機密費の問題について聞かれたマルコス大統領は、機密費問題は「(私に関しては)解決済みの問題だ」と述べた。

 マルコス大統領は、副大統領の過去の機密費に関する不正利用の疑惑については触れず、来年予算に関し、具体的に副大統領の機密費について自身は議論に関与しておらず、副大統領の主導によって自ら機密費を諦めた点を強調した。

― SMNI番組停止措置

 サラ副大統領は12月13日、全国メディアSMNIがロムアルデス下院議長の汚職を示唆する偽情報発信によって下院での侮辱罪に問われたことを受け、当該番組司会者であるロレイン・バドイとジェフリー・セリスとの連帯を表明した。

 サラ副大統領は、父であるロドリゴ・ドゥテルテ前大統領の政権、特に共産主義勢力との紛争を終わらせる国家タスクフォース(NTF-CLCAC)の下でのバドイとセリスの貢献を認め、2人を「正しいことを擁護する象徴」として称賛した。

 一方、フィリピン政府検閲官は、12月19日、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領が司会を務める番組を含め、SMNIの2つの番組における殺害予告や冒涜的表現、特定関係者を標的とした虚偽報道の疑惑について「徹底的な見直しと調査」を行なったと発表した。調査の結果、それらの番組は2週間の放送停止処分になった。

 停止されたのは、ドゥテルテ前大統領の司会による「Gikan sa Masa, Para sa Masa(大衆から大衆のために)」と先述のバドイとセリスの司会による「Laban Kasama ang Bayan(国民とともに戦う)」の2つの番組である。

― 共産党との和平交渉再開は「悪魔との合意」

 12月15日、下院において提案されている投資誘引のための1987年憲法改正について質問を受けたマルコス大統領は、その必要性に関して調査が現在行われていることを明らかにした。

「我々は分析を始めたばかりだ。我々は、フィリピンに投資家を呼び込もうとしているが、その邪魔になっている経済条項(重要産業に対して40%の外資上限規制がかかっている点)について議論を続けている。憲法の改正が必要なのか、それとも他の方法でできるのか」。

― 憲法改正方法をめぐる上下院の対立

 12日、マルコス大統領の従兄弟であるロムアルデス下院議長は、この経済条項について来年検討すべきであると述べている。彼はまた、憲法改正のために下院と上院が一緒に投票する方法を提案し、この提案を国民投票にかけて決定すべきだと発言している。

 ロムアルデス提案の上下院の合同投票が実現すると、比較して圧倒的多数を占める下院の影響力が強くなるため、上院からの反発も強い。

 マルコス大統領の姉であるアイミー・マルコス上院議員は、今は経済条項を話すタイミングではないとして、より優先順位の高い事案に政治家が集中すべきであると語る。

 また、ロビン・パディリア上院議員は、13日、上院議員数を現在の24人から54人へと2倍に増やし、大統領副大統領の再選を1度だけ認める制度改革案を提案した。パディリア上院議員は、この改革の後に経済条項等の憲法改正を推し進めるべきであると主張している。

〈Source〉

2 SMNI shows suspended, Duterte’s ‘Gikan’ included, Inquirer, December 20, 2023.
Bongbong Marcos to bring home P14-B investment pledges from Japan
, Inquirer, December 18, 2023.

Charter change to double Senate seats, lift term limits proposed, Inquirer, December 14, 2023.
How Marcos’ Japan trip went, from defense pact talks to investment pledges, Rappler, December 19, 2023.
Japan-Philippines Summit Meeting, Ministry of Foreign Affairs of Japan, December 17, 2023.
Marcos says deletion of confidential funds for OVP, DepEd is a settled issue, Manila Bulletin, December 19, 2023.
Marcos says PH, Japan agree to quickly conclude RAA talks, PNA, December 18, 2023.
Marcos studying if Charter change needed to attract investments, ABS-CBN, December 15, 2023.
VP Duterte praises SMNI hosts Badoy, Celiz for ‘defending our rights’, Inquirer, December 13, 2023.

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