フィリピン政経フォーカス
(10月19日~10月25日)

【写真】10月21日に青年団体によって開催されたパレスチナ人との団結を訴える集会のポスター/Facebook of League of Filipino Students – UP Diliman, October 21, 2023.

南シナ海での衝突/フィリピンにおけるイスラエルとパレスチナ/止まらぬ米価高騰への対応策

南シナ海での衝突

― 2度の衝突とすれ違う主張
 10月22日、中国と領有権係争中の南シナ海において、中国海警局の1隻の船がフィリピンの補給船に衝突し、そのすぐ後、輸送船を警備していたフィリピン沿岸警備隊の巡視船と中国船が衝突した。フィリピン政府は衝突時の映像を公開し、23日には中国の作戦がフィリピン船乗組員を危険にさらしたとし、「危険な妨害行為」に対する「最も強い」非難を表明した。
 フィリピンの声明に対して23日、中国は、「違法な建築資材」を運ぶフィリピン船を阻止したのは中国にとって「合法的」な行為であるとし、フィリピンが「故意にトラブルを挑発している」ことによって衝突が生じたと述べた。中国政府はまた、南シナ海の平和と安定を損ねているのはフィリピンであると主張している。

― 米国の牽制
 23日(フィリピン時間)、米国ホワイトハウスは発表した声明の中で、22日の衝突および8月5日に起こった中国船からフィリピン船舶への放水行為を「危険」で「国際法に反する」と非難した。同時に「フィリピンの公的な船舶、航空機、軍が攻撃を受けた場合には米比間の相互防衛条約が適用される」として中国を牽制した。

― 2つの共同パトロール提案
 シンクタンクのストラベースADR研究所は、23日、中国の「強圧的な」行動に対して、「志を同じくする」国々と共同でパトロールを実施することを提案した。同研究所ディンド・マンヒト所長は、声明において、米国、オーストラリア、日本、カナダ、韓国、EUを含んだ国々と西フィリピン海(南シナ海)で定期的な共同パトロールを直ちに実施するようフィリピン政府に要請した。
 一方、左派バヤン・ムナ党のネリ・コルムナレス議長は、共同パトロールを、中国との緊張を高めてしまう国々とではなく、既に共同パトロールを他海域において既に行なっている東南アジアの国々、特にASEAN加盟国でASEANのルールに基づいて実施すべきであると力説した。

フィリピンにおけるイスラエルとパレスチナ

― 逃げられないOFW
 ハマスによるイスラエル攻撃やイスラエル軍のガザ地区への攻撃は、イスラエルやガザ地区で働く多くのOFWを深刻な危険に晒している。
 フィリピン政府は、既に3回にわたり希望するフィリピン人海外出稼ぎ労働者(OFW)をフィリピン本国に送り届けている。10月24日のフィリピン移民労働者省(DMW)による報告によると、総計60人が既に帰国し、120人が現地において帰国を希望している。帰国希望者の多くは雇用契約を終えた人たちであり、未だ多くが現地残留を選択している。帰国希望確認は、DMWの職員が電話で行っているが、2人の家事労働者が未だ消息不明。OFW以外にもガザ地区でパレスチナ人と結婚等をして生活している137人が帰国を希望しており、ガザ地区からエジプトに抜けられるようになり次第、帰国支援を行う予定。

― イスラエルとパレスチナ、それぞれとの連帯を示す2つのイベント
 10月21日、ケソン市に数多くの人が自動車やバイクで集まり、ウェルカム・ロトンダからメモリアル・サークルまで、イスラエルとの連帯を示すためのパレードが行われた。パレード後、メモリアル・サークルで被害者を悼む集会が執り行われ、歌や証言、スピーチが共有された。
 一方、同日、ケソン市において青年組織のメンバーが大学通りから人権委員会オフィスまでを行進し、イスラエルによるパレスチナへの攻撃を非難し、パレスチナへの団結を呼びかけた。集まった若者らは、ろうそくに火を灯してイスラエルとハマスとの紛争によって失われた命に対して哀悼の意を示した。

止まらぬ米価高騰の対応策

― 止まらないインフレーション
 米価高騰は8月の8.7%から9月には14年ぶりの高水準となる17.9%にまで上昇し、フィリピン人の家計を苦しめている。これは、マルコス大統領が9月に実施したコメの価格上限設置が、少なくとも十分な効果を果たしていないことを意味する。
 10月19日、コメ価格の高騰を受け、農業産業協会(SINAG)は、昨年8月に米穀業者が実施しようとした「人為的な米価格」による危機を防ぐためにマルコス大統領にコメ価格上限を再度導入するよう要請した。
 一方、自由農業者連盟(FFF)は、価格上限ではなく、政府が在庫、価格、買い占め、価格操作を監視し、他の米穀業者が「正直」でいられるような代替販売手段を提供することに重点を置くべきだと提案した。

― 政府の見解
 コメ価格上限導入の要請に対して農務省(DA)は、来月から価格上限を再び課す可能性を否定した。また、供給不足もしくは人為的価格操作による価格上昇への懸念に対して、コメに関する供給・取引に関する量や価格を適切に監視していることを強調し、また、インドからの十分な量の輸入が価格を押し下げる一助になること、さらに今年の収穫がこれまでにない記録的な量になりそうな見通しを公表した。
 さらにフィリピン下院議会では、農業食糧委員会マーク・エンベルガ委員長が、マルコス大統領の意向を汲んだマルティン・ロムアルデス下院議長から食糧の価格高騰をしっかりと監視し、対応するよう指示があったことを10月22日の記者会見で明らかにし、ロムアルデス議長の下で関係部局と協力して問題にあたることを言明した。

〈Source〉
DA: Rice from India to help lower prices, Manila Times, October 20, 2023.
Filipinos, Israeli supporters demonstrate solidarity in motorcade for Israel, ABS-CBN, October 22, 2023.
Filipino youth groups join pro-Palestine protest, Inquirer, October 23, 2023.
House food, agri panel chief vows to address food inflation, Inquirer, October 22, 2023.
Joint West Philippine Sea patrols urged after China’s ‘coercive’ actions, ABS-CBN, October 23, 2023.
More Pinoys seeking repatriation from Israel, Philstar, October 25, 2023.
PH to file another diplomatic protest against China, Inquirer, October 23,2 2023.
U.S. Support for our Philippine Allies in the Face of Repeated PRC Harassment in the South China Sea, October 22, 2023.
Unmilled rice output forecast to hit record high this year, Inquirer, October 23, 2023.

「私の家には 奴隷 家政婦がいた」

不平等に扱われるフィリピン人の意外な理由とは?

詳しく見る

最新情報をチェックしよう!
>ひとりの微力が大きな力になる。

ひとりの微力が大きな力になる。


一人ひとりの力は小さいかもしれないけれど、
たくさんの力が集まればきっと世界は変えられる。
あなたも世界を変える一員として
私たちに力を貸していただけないでしょうか?

Painting:Maria Sol Taule, Human Rights Lawyer and Visual Artist

寄付する(白)