フィリピン政経フォーカス

【写真】北京で習近平と会談するドゥテルテ前大統領/via. Xi Jinping Meets with Former Philippine President Rodrigo Duterte, Ministry of Foreign Affairs of the People’s Republic of China, July 17, 2023.

ドゥテルテ前大統領の電撃訪中!/フィリピン政府の上訴を却下するICC/国民に医療サービスと食糧を!マルコス肝煎り改革の今

栗田英幸(愛媛大学)

トピック1:ドゥテルテ前大統領の電撃訪中!

― ドゥテルテの親中「外交」を評価する習近平
 中国国営メディアによると、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は7月17日、北京を訪れた。習主席は釣魚台国賓館で前フィリピン大統領を歓迎した。
 報道によれば、ドゥテルテはサルバドール・メディアルデア前行政長官と、習近平は王毅国家顧問、外務省の馬朝旭委員、孫維東外務次官、華春瑩外務次官補と一緒にいたという。
 中国外務省は別のツイートで、習近平は「ドゥテルテ氏が大統領在任中に中国との関係を改善するために行った戦略的選択を高く評価する」と述べた。また、北京はドゥテルテの「両国の友好交流への重要な貢献」を認めたという。「中国はフィリピンとの関係を重視しており、フィリピンと協力して二国間関係の着実かつ持続的な成長を促進する用意がある」と中国外務省は付け加えた。

― マルコス大統領の意向とは異なる会談か?
 誰がドゥテルテを招待したのか、またドゥテルテがフィリピンを代表したのか、その立場についての情報はまだない。フィリピン外務省は、ドゥテルテの中国訪問に関する公式情報を持っていないことを明らかにした。
 マルコス大統領は、その翌日、その会談で西フィリピン海(=南シナ海)に関する問題が話題に上がったことに期待を表明し、中国との新しいコミュニケーションラインを歓迎した。
 記者団とのインタビューでマルコスは、次のように語った。
「ドゥテルテが(近いうちに)中国を訪問することを(私は)知っていた。中国の指導者は彼の友人だ。私たちが現在直面している問題が進歩することを願っています」。

トピック2:フィリピン政府の上訴を却下するICC

― ICCはフィリピン政府の上訴を棄却
 7月18日、国際刑事裁判所(ICC)は、ICC調査再開の決定に対するフィリピン政府の異議を棄却したことを明らかにした。この決定により、ICCはカリム・カーンICC検事による調査再開を認めることとなった。
 人権と尊厳を守る運動(iDEFEND)は、ICCの決定に対して、「私たちは、国際司法の歯車を回転させようとする生存者と被害者家族の(ICC調査再開のために活動を続けてきた)勇気を称賛します」と声明で述べた。「結局のところ、彼ら・彼女らの闘いは、何世代にもわたってその影響が続くであろうこのような(ドラッグ)戦争が、二度と私たちに押し付けられないことを祈っているすべての人たちに利益をもたらすのである」。

― ICCはフィリピンを侵略するのか?
 ICCによる棄却判決の前日、へスス・クリスピン・レムリア司法長官は、ICCがドゥテルテ政権下のドラッグ戦争に関する調査を再開する場合、ICCの発行する(かもしれない)逮捕状をフィリピン政府が執行することはないと述べ、記者団に次のように語った。
 「彼ら(ICC)は、ここですることは何もない。何をするんだ? 我々を侵略するのか? また(フィリピンが)植民地(であった頃)のように侵略してくるのか?」

トピック3:国民に医療サービスと食糧を!マルコス肝煎り改革の今

― メディカル・センター完成イメージ公開!
 マルコスが大統領選挙で公約した、フィリピンの農村や貧困層への医療アクセスの拡張を目的としたメディカル・センタープロジェクトが、具体化してきた。
 7月17日、マルコス大統領は、公開された「クラーク・マルチ・スペシャリティ・メディカル・センター」施設のデザインを視察した。当該施設は、パンパンガ州クラーク経済特区にメディカル・センタープロジェクトの中核を担う施設として設計されており、マニラ首都圏以外の医療機関との連携の下で、多様な科にわたる専門的な医療サービスを首都圏以外に広く提供することを目的としている。
 この日、マルコス大統領は、国民への医療サービス提供におけるメディカル・センターの役割を強調すると同時に、それと繋がる地域の保健所や村の診療所などを増設すると意欲を語った。

― カディワ・ストアの全国展開
 7月17日、マルコス大統領は、公約したコメの価格を20ペソ/kgにまで抑える計画が十分な成果に至っていないことについて触れた後、新たな「大統領のカディワ(KNP: Kadiwa ng Pangulo)」プログラムの発足を公表した。
 覚書には、政府関連諸機関と地方政府との間でKNPを強力に推進するための農業省を中心とした協力関係が明記され、この覚書の下で全国各都市にカディワ・ストアが設立されることとなる。
 マルコス大統領は、カディワ・ストアによって生産者と消費者が直接結びつけられることになるため、生産者と消費者の双方の利益が最大化されると説明した。また、KNPを効果的に運営するためには、価格を十分に抑えるために生産者が生産力を向上させることが必要不可欠であると述べた。

〈Source〉
After ICC junks PH gov’t appeal, kin of drug war victims feel ‘closer to justice’, Rappler, July 18, 2023.
Bongbong Marcos seeks to construct more barangay health centers, Inquirer, July 17, 2023.
Ex-pres. Duterte meets with Chinese Pres. Xi Jinping in Beijing, CNN Philippines, July 17, 2023.
Former President Duterte meets with China’s Xi Jinping, Inquirer, Jul;y 17, 2023.
PBBM sets up ‘Kadiwa ng Pangulo’ centers in all cities, municipalities, PCO, July 17, 2023.
Remulla: PH will not implement arrest warrants from ICC linked to drug war probe, CNN Philippines, July 17, 2023.
Xi’s surprise meeting with Duterte the latest bid to improve ties with Manila, South China Morning Post, July 18, 2023.

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