【要約】ミンダナオにおける国内難民
ダッシュボード報告書

【写真】ミンダナオ内の難民に関する統計資料/via UNHCR, April 22, 2022. https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/Mindanao-Displacement-Dashboard-MAR2022.pdf

 4月22日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が、ミンダナオにおける国内難民の一覧表(ダッシュボード)を公開した。ここで、その要約を紹介する。このダッシュボードは毎月更新されており、今回の2022年3月版で既に90号を数える。

― ミンダナオの難民化の構図

 UNHCRのダッシュボードで言及される難民化の要因は、大きく次のものに分けられる。地震や台風、豪雨・強風に伴う災害、国軍と反政府武装勢力との摩擦、有力氏族(クラン)同士の抗争だ。
 上記の国軍と反政府武装組織との摩擦に関しては、反政府武装組織との直接的な衝突、反政府武装組織に対する政府軍による大規模な攻撃、反政府武装組織に対する政府軍の抑圧的な包囲作戦があり、また、反政府武装組織としては、共産党軍事部門新人民軍(NPA)、自治を受け入れたモロ・イスラム解放戦線(MILF)から2010年に分離してイスラムの完全独立を目指すバンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)、BIFFより前の1991年にMILFから分かれ幾つもの派に分離している過激武装組織アブサヤフ・グループ(ASG)、その他にもASGとは別にイラクやシリアで発生したイスラム過激派組織ISIS(もしくはISILやISと呼ばれることもある)の影響を受けた小規模な過激派グループなどがある。

― 災害や紛争で自宅を追われた人は、3月だけで5万2588人

 UNHCRのダッシュボードで言及される難民化の要因は、大きく次の3つに分けられる。

◆グループA
 難民期間が1ヶ月未満の難民である。今年3月末現在の段階で185世帯919人が居住地から避難を余儀なくされているが、これは一年前の1万4659世帯7万1464人より大幅に減少している。今年3月の1ヶ月の期間で難民を生じさせる出来事は11件あり、うち4件が国軍の軍事作戦によってもたらされたものであった。この1ヶ月の期間で自宅を追われた人は5万2588人であり、そのうち5万1669人が既に帰還した。
 グループAに含まれる難民の大半が、3月初旬にミンダナオ各地で被った豪雨と強風によるものである。既に居住地に戻った者も含めて、3月の難民は1万589世帯。そのうち、内戦による難民は、3月26日北スリガオ州で生じた国軍とNPAとの戦闘による42世帯125人、3月1日南ラナオ州でのISISに影響を受けた過激派武装組織に対する国軍による軍事作戦1929世帯、9645人、3月18日ミサミス・オリエンタル州での国軍とNPAと見られる武装組織との戦闘88世帯440人であった。国軍とは関係なく、3月8日には、バシランにおいて有力氏族(クラン)同士の戦闘の危険を感じて7世帯約30人が居住地から避難した。
 ちなみに、2021年のグループAの難民数を大幅に押し上げているのは、2021年3月18日にマギンダナオ州で生じた国軍とバンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)との戦闘に伴うものである。

◆グループB
 30日以上180日未満の期間、帰還できていない難民は、グループBに分類されている。3月末現在での267世帯、1302人は、やはり1年前の783世帯3812人よりもかなり少ない。対象となる全4件の出来事のうち、バシラン島の3件がクラン同士の抗争であり、残り1件が台風ライによる被害での難民である。

◆グループC
 グループCに分類されるのは、180日以上もの長い間、居住地に帰還できていない難民である。3月末現在でグループCに含まれるのは、2万1221世帯、10万4275人。一年前の4万9614世帯、22万5691人の半分に減少しているが、その減少のほとんどが2019年12月の地震によって難民化した南ダバオ州住民の帰還(当時10万6822人が被災センターに避難していた)による。
 グループCに該当する人びとを難民化した出来事は12件ある。そのうち災害は4件、残り6件が国軍の軍事作戦に関係するもの、2件がバシランのクラン間の抗争によるものであった。
 最も長く帰還できていないのは、8年以上前の2013年9月に行われたザンボアンガでの軍事作戦によって生じた避難民である。未だに720世帯3600人が、「復興のためのザンボアンガ市ロードマップ(Z3R)」プログラムで計画されている住宅建設の完成を待っている状態にある。
 2017年に行われたマラウィ市周辺での軍事作戦では、1万7067世帯、8万5335人の難民を生じさせたが、未だに4646世帯、2万3230人がいくつもの仮移転地での生活を余儀なくされている。
 2017年、スールー州における国軍とASGとの衝突でも、未帰還者304世帯、1520人が長期避難生活を余儀なくされている。その他、2021年3月のマギンダナオでの国軍とBIFFの衝突により250世帯、1250人、同年6月の南スリガオ州における国軍によるNPAへの軍事作戦により36世帯、180人が仮移転地や親戚等の家から帰還できずにいる。前述の南スリガオの難民の中には、度重なる血生臭い軍事作戦のために帰還を躊躇しているものも少なくない。

〈Source〉
Philippines: Mindanao Displacement Dashboard, March 2022 – Issue No. 90, UNHCR, April 22, 2022.
Philippines: Mindanao Displacement Dashboard, March 2021 – Issue No. 78, UNCHR, May 24, 2021.

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